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『安らかに生きる』 ――原題:『安生』  作者: 亀


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第九十五章 俺が記すべきことではない

翌日。


安生が最初に向かったのは、許蘭の家だった。


許文成が亡くなってから、もう何年も経っている。


残されたものの多くは、すでに散り散りになっていた。


それでも許蘭は、古い帳簿を何冊か残していた。


「どうしてまだ取ってある?」


安生が尋ねる。


許蘭は帳簿を机の上に置いた。


「父が、捨てるなって。」


「何と言っていた?」


「いつか、誰かがこれを見るかもしれないって。」


「いつ、そう言った?」


「亡くなる前。」


安生はそれ以上聞かなかった。


そのまま帳簿を開いた。


ほどなくして。


六月十二日の頁を見つけた。


その頁には。


荷の記録がない。


金の記録もない。


その日の普通の雑記さえない。


あるのは、頁の隅に残った小さな墨の跡だけだった。


安生は顔を上げた。


「この頁、破られたことはないか?」


許蘭は首を振った。


「ない。」


「確かか?」


「父が自分で綴じたものだから。」


「六月十二日に記録がない理由について、何か言っていた?」


許蘭は少し考えた。


「一度だけ。」


「何と言った?」


「その日の帳面は、自分の管轄じゃないって。」


安生の手が止まった。


「『自分の管轄じゃない』?」


「うん。」


「『俺が記すべきことじゃない』ではない?」


「その二つ、似たような意味じゃない?」


安生は首を振った。


「違う。」


⸻


安生は、あの古い紙を取り出した。


机の上に置く。


「これは?」


許蘭が一目見る。


「見たことがある。」


「父親の字か?」


「似ている。」


「断定できる?」


「そこまでは。」


安生は頷いた。


「じゃあ、お父さんはこの言葉を言ったことがある?」


許蘭は首を振った。


「ない。」


「六月十二日に、誰かから記録するなと言われたことは?」


「それも聞いていない。」


「じゃあ、今の時点で確定できることは?」


許蘭は長いこと考えた。


「私が確実に言えるのは。」


「六月十二日、父は普段どおりのやり方では帳面をつけていなかった。」


安生はその言葉を書き留めた。


⸻


許蘭の家を出る。


安生はすぐには碼頭へ向かわなかった。


先に旧帳場へ行った。


そこはもう主人が変わっている。


それでも隅には、古い木の机が一つ残っていた。


陸成安もそこにいた。


「来たか。」


「許文成のことを聞きたい。」


陸成安は頷いた。


「そいつなら、俺に聞くのがいい。」


「知っているのか?」


「知っている。」


「普段は何を担当していた?」


「荷の帳面だ。」


「すべての荷を記録する?」


「普通ならな。」


「普通って?」


陸成安は少し考えた。


「荷が倉に入れば、記録する。」


「荷が倉から出れば、記録する。」


「臨牌を貸し出したときも、時々記録する。」


「ただ、一つ例外がある。」


「何?」


「正式な荷の帳面じゃないものだ。」


「例えば?」


「店の主人が自分で処理する少額の借り荷。」


「飯場で使う米。」


「一時的な荷の移動。」


「そういうものは、正式な帳面を通さないこともある。」


安生は眉を寄せた。


「六月十二日は?」


陸成安は首を振った。


「分からない。」


「そのとき、ここにいた?」


「午前中はいた。」


「許文成は?」


「いた。」


「何をしていた?」


「たぶん、いつもどおり荷の帳面だ。」


「たぶん?」


「その日は、かなり混乱していたからな。」


⸻


安生が尋ねた。


「許文成が筆を持っているところを見た?」


陸成安は長いこと考えた。


「見ていない。」


「帳場の机に座っていた?」


「午前中は、いなかった。」


「じゃあ、どこにいた?」


「東倉の近くだ。」


「何をしていた?」


「誰かが荷を見に行かせたんだと思う。」


「誰が?」


陸成安は首を振った。


「覚えていない。」


安生はそれ以上追及しなかった。


代わりに聞いた。


「その後は?」


「昼を過ぎてから。」


「帳場には戻ってきた。」


「いつ?」


「分からない。」


「何か持っていた?」


「何も。」


「何か言っていた?」


陸成安は黙った。


「一言だけ、言った。」


「何?」


「今日は、この件は俺の管轄じゃない、と。」


安生が顔を上げた。


「確かか?」


「この言葉は覚えている。」


「『俺の管轄じゃない』?」


「ああ。」


「『俺が記すべきことじゃない』では?」


「違う。」


安生は紙に書いた。


六月十二日――許文成は『今日はこの件は俺の管轄じゃない』と言った。


その下に、もう一行。


古い紙にある『六月十二日、俺が記すべきことではない』と同じ言葉かどうかは、確認できない。


⸻


安生はふいに尋ねた。


「六月十二日、許文成は周長順に会った?」


「会った。」


「何度?」


「分からない。」


「言い争いは?」


「ない。」


「誰かが喧嘩していた?」


「ない。」


「誰かが、帳面をつけるなと言っていた?」


陸成安は首を振った。


「俺は聞いていない。」


安生は少し間を置いた。


「誰かが記録するなと言ったと思うか?」


陸成安は安生を見た。


「またそれか。」


「何が?」


「お前はいつも、俺に推測させようとする。」


安生は少し笑った。


「じゃあ、推測しない。」


「事実だけ記録する。」


陸成安は頷いた。


「それなら一つだけだ。」


「六月十二日、許文成は普段どおりには記録していない。」


「理由については。」


「誰にも証明できない。」


⸻


午後。


安生はまた老梁を訪ねた。


「許文成はあの日、どこにいた?」


老梁は古い道具を整理していた。


「午前か?」


「ああ。」


「東倉の近くだ。」


「何をしていた?」


「荷を見ていた。」


「誰に行かされた?」


老梁は少し考えた。


「たぶん、周掌柜だ。」


安生はすぐには書かなかった。


「確かか?」


「だいたいな。」


「『だいたい』って?」


「周掌柜が許文成と話しているのを見た。」


「内容は聞いた?」


「聞いていない。」


「なら、周掌柜が行かせたとは書けない。」


老梁は一瞬、呆れた顔をした。


「お前、今じゃそこまで分けるのか?」


「分ける。」


老梁は笑った。


「昔のお前じゃ考えられないな。」


安生は何も言わなかった。


⸻


「じゃあ、本当に見たのは何だ?」


老梁は少し考えた。


「許文成が東倉へ行った。」


「周掌柜もそこにいた。」


「二人で少し話した。」


「そのあと、許文成が荷を見た。」


「それから戻っていった。」


「その後は?」


「午後、帳場で見た。」


「記録していた?」


「していない。」


「なぜ?」


「分からない。」


⸻


安生は旧帳場へ戻った。


今日得たものを、すべて並べた。


一方には許蘭の話。


もう一方には陸成安の話。


そして、その隣には老梁の話。


三人の証言。


誰一人として、証明できない。


誰かが許文成に記録するなと命じたことを。


だが、三人の話は一つの事実を示していた。


六月十二日。


許文成は確かに、普段どおりの記録を残していない。


そして。


彼は東倉の荷に触れていた。


⸻


安生は、あの日付をもう一度思い出した。


六月十二日。


西倉三号から二包が出た。


王家が二包の南貨を受け取った。


馬成が臨牌を持っていた。


老高が荷を処理した。


許文成は完全な帳面を残していない。


これらはすべて。


同じ日に起きている。


それでも。


それぞれを直接つなぐ証拠は、まだない。


安生は急いで線を引かなかった。


紙の上に四つの円を描いた。


東倉。


西倉。


王家。


帳場。


そして。


四つの円の間には。


一本の線も引かなかった。


⸻


夕方。


安平が戻ってきた。


机の上の紙を見る。


「まだ見つからないのか?」


「いくつか分かった。」


「何が?」


「許文成があの日、確かに荷に関わっていた。」


「それで?」


「それだけだ。」


安平は少し笑った。


「それでも見つかったと言うのか?」


安生は兄を見る。


「昔の俺なら、見つかったとは思わなかった。」


「今は?」


「今は。」


「どこに証拠がないのかが分かることも。」


「一つの結果だと思う。」


安平は腰を下ろした。


「じゃあ、次は何を調べる?」


安生は机の上の古い紙を見る。


「許文成が、なぜ『俺の管轄じゃない』と言ったのか。」


「誰を探す?」


「まず、当時の帳面を管理していた人。」


「それだけか?」


安生は少し黙った。


「それから、六月十二日の午前中。」


「最後に、あの正式な荷の帳面を持っていたのが誰だったのか。」


⸻


夜。


安生はもう一度、許文成が残した古い帳簿を開いた。


今度は六月十二日だけを見なかった。


六月十日から、その先まで追った。


六月十日。


東倉七号に荷が入っている。


六月十一日。


たった二文字。


換位。


六月十二日。


空白。


六月十三日。


再び記録が始まっている。


安生は六月十一日をじっと見つめた。


その「換位」の横に。


墨で消されたような数字が一つあることに気づいた。


かなり薄い。


まるで、誰かが後から一度書き直したようにも見える。


安生は灯りを手に取った。


近づけて見る。


「三」ではない。


「二」でもない。


むしろ。


一度消された「七」のように見える。


安生はすぐには結論を出さなかった。


ただ、こう書いた。


六月十一日、「換位」の横に、消された数字らしきものがある。


その後に、もう一行。


原帳に別の写しが残っていないか確認が必要。


筆を置いてから。


安生はようやく気づいた。


今度、本当に探すべきものは。


誰が何と言ったかではない。


六月十二日以前に。


いったい何冊の帳面が存在していたのか。


もし正式な帳面が、この一冊しかなかったのなら。


六月十二日の空白は。


単に記録されなかっただけかもしれない。


だが、もし別の帳面が存在するのなら。


当時、少なくとももう一つの記録があったことになる。


安生は、あの二つの曖昧な文字を見つめた。


それ以上は推測しなかった。


ただ灯りを吹き消した。


明日。


まず帳面を探す。

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