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『安らかに生きる』 ――原題:『安生』  作者: 亀


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第八十七章 三石の米

翌朝早く。


安生は王家へ向かった。


六月十二日の帳簿を、もう一度取り出してもらう。


「王叔。」


「もう一度聞きたい。」


「周長順が借りていた三石の米。」


「いつからの借りだった?」


王福は眉を寄せた。


「一日でできた借りじゃない。」


「じゃあ、いつから?」


「かなり前だ。」


「どれくらい前?」


「五月だ。」


安生は一瞬、固まった。


「五月?」


「そうだ。」


「最初はいくら?」


「半石。」


「なぜ借りた?」


「埠頭で飯を食う人間が多かった。」


「周掌柜は時々、先に米を持っていった。」


「月末にまとめて精算することになっていた。」


安生はうなずいた。


「じゃあ六月になる前には、」


「どれくらいになっていた?」


「一石くらいだ。」


「六月十二日に三石になった?」


「そうだ。」


「なぜ急に増えた?」


王福は首を振った。


「そこまでは分からない。」


「誰が取りに来た?」


「周長順のところの人間だ。」


「いつ?」


「六月十一日だ。」


安生はすぐに聞いた。


「六月十一日?」


「そうだ。」


「いくら持っていった?」


「一石半。」


「六月十二日は?」


「半石。」


「合わせると。」


「もともと一石。」


「一石半。」


「それに半石。」


「三石だ。」


安生は黙った。


⸻


すぐに沈川の手記が頭に浮かんだ。


六月十一日。


「周来,说南货可先处理。」


六月十二日。


空白。


そして今。


王家の帳簿には、


六月十一日。


周長順の米の借りが、突然一石半増えている。


六月十二日。


さらに半石増えた。


つまり、


いわゆる「三石の米の借り」は、


六月十二日に突然生まれたものではない。


六月十一日前後から、


急に増えていた。


安生は聞いた。


「王叔。」


「六月十一日。」


「周長順は言わなかったか?」


「なぜ急に、そんなにたくさん米が必要になったのか。」


王福は首を振った。


「親父は記録していない。」


「親父は聞かなかったのか?」


「たぶん聞いたと思う。」


「周長順は何と言った?」


「埠頭で使うと言った。」


「どこで使う?」


「そこまでは分からない。」


安生はうなずいた。


⸻


王家を出たあと。


安生は周長順のところへは向かわなかった。


先に古い埠頭へ行き、


趙徳全を訪ねた。


「趙叔。」


「六月十一日。」


「埠頭では、急に米が足りなくなったのか?」


趙徳全は長いこと考えた。


「そういうことはあった。」


「なぜ?」


「南から来た船だ。」


「食料が遅れた。」


「埠頭で働く人間の飯が足りなくなって。」


「先に米屋から取ったんだ。」


安生が聞いた。


「誰が担当していた?」


「周長順だ。」


「だから米を借りた?」


「そうだ。」


「たくさん?」


「普段より多かった。」


「なぜ?」


趙徳全は首を振った。


「分からない。」


安生はさらに聞いた。


「工人に米を配るためだった?」


「可能性はある。」


「自分で見たのか?」


「見ていない。」


安生はすぐに書き留めた。


可能性。


⸻


「じゃあ六月十二日は?」


「なぜまだ借りる必要があった?」


趙徳全は言った。


「前の日に足りなかったのかもしれない。」


「あるいは、別の用事だったのかもしれない。」


「別の用事って?」


「分からない。」


安生は、それ以上聞かなかった。


今のところ、


三石の米には、


一つの合理的な説明がつく。


埠頭で米が不足していた可能性はある。


周長順が米を必要としていた可能性もある。


だから、


米を借りたこと自体は問題ではない。


本当の問題は、


なぜ南貨でその借りを埋めたのか。


⸻


午後。


安生は馬成を訪ねた。


「聞きたい。」


「周長順がお前に二包の荷を運ばせた時。」


「これは米の返済だと言ったか?」


馬成はうなずいた。


「言った。」


「誰への借りだ?」


「王家だ。」


「三石の借りだと知っていた?」


「知っていた。」


「いつ知った?」


「あの日だ。」


「誰から聞いた?」


「老高だ。」


「何と言った?」


「周掌柜が王家に三石の借りがあると言った。」


安生は聞いた。


「なぜ老高が知っていた?」


馬成は首を振った。


「周掌柜に頼まれた仕事だから、と言っていた。」


「だから知っていた。」


安生はそれ以上聞かなかった。


代わりに聞いた。


「荷を運ぶ前。」


「老高は、お前に言わなかったか?」


「誰の荷なのか。」


「言っていない。」


「沈家のものだとは?」


「言っていない。」


「南貨だとは?」


「言った。」


「何と言った?」


「その荷だ、と。」


安生は手を止めた。


「どの荷?」


「分からない。」


「聞かなかったのか?」


「聞かなかった。」


⸻


安生は思い始めていた。


この二つの荷の間には、


一つの共通した実行方法があったのかもしれない。


周長順は、


一人ひとりに荷主を説明する必要がなかった。


ただ、


「これを届けろ」


と言えばいい。


なぜそれを届けていいのか。


その理由を知っているのは、


どうやら周長順だけだった。


実際に動く人間は、


ただ言われた通りに動く。


⸻


夜。


安生は陸成安を訪ねた。


「陸叔。」


「六月十一日。」


「周長順は来たか?」


陸成安はうなずいた。


「来た。」


「何と言った?」


「荷のことを聞いた。」


「何の荷?」


「南貨だ。」


安生の胸が動いた。


「何と言った?」


「こう言った。」


「先に三包持っていけるか、と。」


安生はすぐに聞いた。


「六月十一日?」


「そうだ。」


「六月十二日じゃない?」


「違う。」


「確かか?」


「これはかなり確かだ。」


「その時、こう聞かれたからだ。」


「沈家の荷を、先に動かしていいか、と。」


安生は筆を止めた。


「お前は何と答えた?」


「俺には決められない、と言った。」


「周長順は?」


「それなら聞いてくる、と。」


「誰に?」


「沈家に。」


安生が顔を上げた。


「それから?」


「帰った。」


「次に来たのは?」


「翌日だ。」


「六月十二日?」


「そうだ。」


「何と言った?」


「沈家のほうから、もう話が来ている、と。」


安生は何も言わなかった。


「それでお前は聞いた。」


「証明になるものはあるのか、と。」


陸成安はうなずいた。


「聞いた。」


「周長順は?」


「ない、と言った。」


「それなのに、なぜ止めなかった?」


陸成安は苦笑した。


「ただ先に処理するだけだ、と言ったからだ。」


「それに。」


「もう聞いてある、とも言った。」


安生が聞いた。


「信じたのか?」


「その時は信じた。」


「あとになって?」


「あとになって、沈川が自分は許可していないと言ったと知った。」


⸻


安生は聞いた。


「なぜ、このことを父さんに言わなかった?」


陸成安は彼を見た。


「言った。」


安生は一瞬、言葉を失った。


「いつ?」


「六月十二日の午後だ。」


「何を伝えた?」


「周長順が、沈家は同意したと言っている、と?」


「いや。」


「俺が伝えたのは、」


「周長順が、沈家のほうからもう話が来ていると言っていた、ということだ。」


「父さんは何と言った?」


「知った、と。」


「それから?」


「もう荷は動いたのか、と聞いた。」


「俺は。」


「たぶん、もう動いている、と答えた。」


陸成安は少し間を置いた。


「その時のお前の父親は、ひどく険しい顔をしていた。」


安生が聞いた。


「なぜ?」


「こう言った。」


「俺は三包を動かせとは言っていない。」


安生は黙った。


⸻


その言葉が、


また出てきた。


しかも、


今回は時間がより具体的だった。


六月十二日の午後。


すでに荷が動かされたあと。


沈川は明確に言った。


「俺は三包を動かせとは言っていない。」


だが、


それでもまだ答えは出ていない。


六月十一日に彼が言ったという、


「南貨を先に処理する」


とは、


一体どういう意味だったのか。


⸻


家に戻ると、


安生は六月十一日と十二日を並べた。


六月十一日。


周長順の米の借りが一石半増えた。


周長順は陸成安に聞いた。


「沈家の荷を先に動かしていいか。」


陸成安。


「俺には決められない。」


周長順。


「それなら俺が聞いてくる。」


六月十二日の午前。


周長順が再び現れた。


「沈家のほうから、もう話が来ている。」


そして、


「先にやってくれ。」


梁成、馬成たちが動き始めた。


午後。


荷はすでに動かされていた。


周長順。


「沈家は知っている。」


沈川。


「俺は三包を動かせとは言っていない。」


安生は、この数行をじっと見つめた。


ようやく、


「誰が荷を持っていったのか」よりも重要な問題が見えてきた。


六月十一日。


周長順には、確かな需要があった。


米だ。


同時に、


沈家の南貨を動かしていいのか、


周長順は尋ねていた。


この二つの出来事は、


少なくとも時間的には、


かなり近い。


だが、


それだけではまだ証明できない。


周長順が沈家の荷を動かしたのは、


自分の米の借りを返すためだった。


そう断定するには、


まだ一つ足りない。


実際に、


その荷を何と交換したのか。


⸻


翌日。


安生は再び王福を訪ねた。


「王叔。」


「六月十二日の三反の布。」


「お父さんは周長順に一石と記録した。」


「周長順は米を受け取ったのか?」


王福はうなずいた。


「受け取った。」


「その日?」


「その日だ。」


「どれだけ?」


「一石。」


「現金ではなく?」


「米だ。」


「誰が持っていった?」


「周長順のところの人間だ。」


「誰?」


「分からない。」


「じゃあ六月十四日の二石は?」


「それも同じだ。」


「つまり。」


「六月十二日と十四日に。」


「周長順は一石、二石と、それぞれ持っていった。」


「そうだ。」


安生は聞いた。


「ほかに相殺した記録は?」


王福は首を振った。


「ない。」


「つまり三石の米は。」


「ちょうど全部返し終わった?」


「そうだ。」


安生は何も言わなかった。


⸻


帰り道。


安生はずっと考えていた。


三石の米。


これは突然現れた数字ではない。


実際に存在していた借金だった。


六月十一日から増え始め、


六月十二日から南貨で相殺され、


六月十四日に完全に清算された。


帳簿だけを見れば、


流れは非常にきれいだ。


ただ一つ欠けている。


その荷が、


一体誰のものだったのか。


もし周長順のものなら、


これは普通の相殺取引になる。


もし他人のものなら、


問題はまったく違ってくる。


そして今、


沈家を指し示すことができるのは、


依然として、


六月六日。


沈家には南貨が十二包あった。


六月十二日。


三包の南貨が動いた。


六月十五日。


記録上、また九包になった。


数字だけなら、


ちょうど、


十二から三を引けば九になる。


だが安生は、


これを結論としては書かなかった。


ただ、


「数量は一致する。」


と記した。


その下に、


「同一の荷物であることは、まだ証明できない。」


と書き足した。


⸻


夕方。


安順河が戻ってきた。


安生は紙を父に渡した。


「父さん。」


「昔、どうして周長順の米の借りを最後まで調べなかった?」


安順河は長いこと紙を見ていた。


「調べた。」


「何が分かった?」


「確かに借りていた。」


「じゃあ、なぜ続けなかった?」


安順河は黙った。


「そのあと。」


「沈川が死んだ。」


「俺も怪我をした。」


「そこから先を調べたら。」


「もう一つの米の借りだけでは済まなくなった。」


安生が聞いた。


「その時、もう疑っていたのか?」


「周長順が沈家の荷を持っていったと。」


安順河は否定しなかった。


「疑った。」


「証拠は?」


「なかった。」


「だからやめた?」


「違う。」


安順河は安生を見た。


「お前のためだ。」


安生は固まった。


「俺?」


「お前が川に落ちたあと。」


「俺はもう調べるのをやめた。」


安順河はうつむいた。


「あの時、俺は思った。」


「人はもう死んだ。」


「お前だって、死にかけた。」


「これ以上調べたら。」


「次は誰が死ぬのか、俺には分からなかった。」


安生は何も言わなかった。


父親は、


自分が正しかったとも、


間違っていたとも言わなかった。


ただ、


あの時なぜ調査を止めたのかを話した。


安生は紙をしまった。


それ以上は聞かなかった。


もう分かっていたからだ。


次に調べるべきなのは、


周長順が米をいくら借りていたかではない。


六月十一日の、


あの一石半の米。


いったい、


何が起きていたのか。

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