第八十一章 梁成が語ったあの日
庭は静かだった。
安生は目の前の男を見た。
「言ったな。」
「あの三包の貨物は、自分が持っていったんじゃない。」
「そうだ。」
「だが、誰が持っていったのかは知っている?」
梁成はうなずいた。
「知っている。」
安生はすぐに名前を聞かなかった。
先に言った。
「中で話そう。」
梁成は安生を一度見た。
そして、一緒に部屋へ入った。
⸻
安生は、これまで調べたものをすべて出すことはしなかった。
一枚の紙だけを取り出した。
机の上に置く。
「六月十二日。」
「碼頭へ行ったな。」
梁成はうなずいた。
「行った。」
「午前中。」
「そうだ。」
「周長順に会った。」
「会った。」
「そのあと、茶屋へ行った。」
「そうだ。」
「誰と?」
「馬四。」
「ほかには?」
梁成は首を横に振った。
「いない。」
安生は彼を見た。
「茶屋の主人は言っている。」
「お前たちが出ていく時。」
「もう一人、年長の男がいたと。」
梁成はしばらく黙った。
「可能性はある。」
「覚えていない?」
「覚えている。」
「じゃあ、なぜいないと言った?」
梁成はうつむいた。
「その人間を、俺たちと一緒にいたと数えていいのか分からなかった。」
安生は黙っている。
「後からついてきただけだ。」
「一緒に茶を飲んだわけでもない。」
「一緒に話したわけでもない。」
「だから、数えなかった。」
安生はうなずいた。
「その人間は誰だ?」
「周長順のそばにいた人間だ。」
「名前は?」
「老高。」
「本名は?」
「知らない。」
「何をしていた?」
「周長順の使い走りだ。」
安生は名前を書き留めた。
それから聞いた。
「お前たちは、なぜ周長順を探した?」
梁成は黙った。
「馬四が言った。」
「周掌柜とは、もう話がついている。」
「何の話が?」
「貨物を持っていくことだ。」
「何の貨物?」
「南貨。」
「何包?」
「三包。」
⸻
安生は梁成を見た。
「その時、お前は。」
「その三包が誰のものか知っていた?」
梁成は首を横に振った。
「知らない。」
「聞いた?」
「聞いた。」
「誰に?」
「馬四に。」
「何と言われた?」
「周掌柜が知っている、と。」
安生は眉を寄せた。
「俺が聞いているのは。」
「貨主が誰なのかを聞いたのか、ということだ。」
「聞いた。」
「そして、周掌柜が知っていると言われた。」
「そうだ。」
「それで?」
「それ以上、聞かなかった。」
安生は梁成を見た。
「なぜ?」
梁成は苦笑した。
「あの頃。」
「俺はただの使い走りだった。」
「誰かが札を渡す。」
「誰かが持っていけと言う。」
「だから持っていく。」
「誰の貨物なのか。」
「俺の知ったことじゃなかった。」
安生は何も評価しなかった。
ただ聞いた。
「今は?」
梁成は黙った。
「今なら、もちろん思う。」
「あの時、ちゃんと聞くべきだった。」
⸻
安生は二枚目の紙を取り出した。
「お前が持ったのは、どの臨時札だ?」
梁成は紙を見た。
「分からない。」
「呉順の記録では。」
「東倉三包。」
「臨時札一。」
「西倉二包。」
「臨時札二。」
「お前が持ったのは?」
「たぶん、臨一だ。」
「なぜ『たぶん』?」
「覚えているからだ。」
「札に一と書いてあった?」
「確かか?」
「違う。」
梁成は首を横に振った。
「覚えているのは。」
「札に刻み目があったことだけだ。」
「それが本当に『一』だったかは。」
「今は言えない。」
安生はうなずいた。
それから聞いた。
「誰がお前に札を渡した?」
「倉の人間だ。」
「誰?」
「老馬。」
「馬徳順?」
「そうだ。」
安生が顔を上げた。
「馬徳順本人が渡した?」
「違う。」
「部下だ。」
「名前は?」
「忘れた。」
⸻
「あの三包の貨物。」
「どこから持ち出した?」
「東倉。」
「誰が手伝った?」
「若い男だ。」
「名前は?」
「高姓だった。」
安生は一瞬、止まった。
「老高?」
「違う。」
「若いほうだ。」
「たぶん、あいつの息子だ。」
安生はすぐに書き留めた。
そして聞いた。
「貨物を出したあと。」
「どこへ運んだ?」
梁成はすぐには答えなかった。
「南街だ。」
「誰に言われた?」
「周長順。」
「誰に届けると言われた?」
「米屋だ。」
「王家?」
「そうだ。」
安生は黙った。
王福が以前見せた帳面には。
六月十二日。
確かにこうあった。
「南布三匹、米一石と相殺。」
⸻
安生が聞いた。
「最後に米と交換したことは知っていた?」
「知っている。」
「どれくらい?」
「一石。」
「沈家の貨物だと知っていた?」
「知らない。」
「沈家という名前を初めて聞いたのはいつ?」
梁成は長いこと考えた。
「午後だ。」
「誰が言った?」
「周長順。」
「何と言った?」
「こう言った。」
「これは沈家の貨物だ。」
「もう話はついている。」
安生の筆が止まった。
「自分の耳で聞いた?」
「そうだ。」
「正確な言葉は?」
梁成は眉を寄せた。
「だいたい同じだ。」
「俺が聞いているのは、正確な言葉だ。」
梁成は長いこと黙った。
「言った。」
「沈家は知っている。」
「それから?」
「気にするな、と。」
安生は彼を見た。
「『同意した』とは言った?」
梁成は首を横に振った。
「聞いていない。」
「『うなずいた』?」
「ない。」
「『もう話が来ている』?」
「それは、たぶん言った。」
「いつ?」
「貨物を持ち出した後だ。」
⸻
安生は紙を置いた。
今。
また一つ、新しい時間の関係が出てきた。
梁成が覚えている順番は。
最初に聞いた。
周掌柜とは、もう話がついている。
それから。
三包の貨物を持ち出した。
その後。
周長順が言った。
沈家は知っている。
さらに。
もう話は来ている。
「沈家はもう同意した」という言葉を。
梁成は聞いていない。
安生は聞いた。
「では、二十三年後になって。」
「なぜ『誰が持っていったか知っている』と言った?」
梁成は安生を見た。
「あの三包の貨物。」
「俺が決めたことじゃない。」
「でも、俺は見た。」
「誰を?」
「もう一枚の札を持った人間だ。」
安生は眉を寄せた。
「西倉の二包?」
「そうだ。」
「誰が持った?」
梁成はうなずいた。
「老高だ。」
「周長順のそばにいた人間?」
「そうだ。」
「二包を持った?」
「そうだ。」
「どこへ運んだ?」
「分からない。」
「誰が持たせた?」
「周長順。」
「自分の耳で聞いた?」
「俺は見た。」
「周長順が札を渡していた。」
安生は突然、動きを止めた。
「確かか?」
「確かだ。」
「何の札?」
「もう一枚だ。」
「臨二?」
「たぶん。」
「なぜ?」
「俺が臨一だったからだ。」
安生はうなずいた。
「お前たち二人。」
「一人一枚?」
「それぞれ別の貨物を持った?」
「そうだ。」
⸻
安生は、それ以上聞かなかった。
彼は呉順の記録を、もう一度理解し直し始めた。
東倉三。
臨時札一。
西倉二。
臨時札二。
札はすべて戻った。
同じ一件ではない。
以前、この「同じ一件ではない」という言葉は。
ただ二つの貨物が別々だったことを示しているだけだった。
だが今。
梁成の証言によって。
それが少し具体的になった。
少なくとも二人の人間が。
別々の臨時手続きを通り。
別々の貨物を持ち出した。
そして周長順は。
少なくとも、そのうち一つの手配の中にいた。
⸻
安生が聞いた。
「老高は、その二包をどこへ運んだ?」
梁成は首を横に振った。
「知らない。」
「その後、また会った?」
「会った。」
「いつ?」
「午後だ。」
「どこで?」
「碼頭。」
「何と言った?」
「こう言った。」
「もう済んだ、と。」
「何が?」
「分からない。」
安生は黙った。
それから聞いた。
「沈家のことは言った?」
梁成は首を横に振った。
「言っていない。」
⸻
安生はそこに座ったまま。
長いこと黙っていた。
やがて。
最後の質問をした。
「なぜ今日、俺を訪ねてきた?」
梁成は安生を見た。
「お前が俺を調べていると聞いたからだ。」
「それが理由じゃない。」
「じゃあ何だ?」
「ただ調べられるのが怖いだけなら。」
「来なくてもよかったはずだ。」
梁成は黙った。
「聞いたんだ。」
「お前は、勝手に誰かを有罪にはしないって。」
安生が顔を上げた。
梁成は続けた。
「昔は、誰も俺たちに聞かなかった。」
「聞かれたのは。」
「誰が持っていった?」
「誰が弁償する?」
「誰が責任を取る?」
「それだけだった。」
「俺たちが、その時何を知っていたのか。」
「誰も聞かなかった。」
安生は何も言わなかった。
梁成は自分の手を見た。
「俺はずっと思っていた。」
「俺はただ貨物を持っただけだ。」
「人に持っていけと言われた。」
「だから持っていった。」
「その後、問題が起きた。」
「そこで初めて知った。」
「自分が持っていったものが。」
「自分のものじゃなかった可能性がある。」
安生が聞いた。
「だから、自分にも間違いがあったと思う?」
梁成は長いこと黙った。
「ある。」
「でも。」
「全部が俺のことじゃない。」
安生はうなずいた。
「その言葉。」
「記録しておく。」
⸻
梁成は立ち上がった。
門のところまで行った時。
安生が突然呼び止めた。
「待ってくれ。」
「もう一つある。」
梁成が振り返る。
「何だ?」
「あの日。」
「周長順がお前に、最初に貨物を持っていっていいと言った時。」
「沈家のことを言った?」
梁成は首を横に振った。
「言っていない。」
「じゃあ、最初に言ったのはいつ?」
「持ち出した後だ。」
「沈家は知っている、と?」
「そうだ。」
「それより前じゃない?」
「違う。」
安生はうなずいた。
今度は。
非常にはっきりした違いが出た。
少なくとも梁成自身の記憶では。
貨物を出す前。
周長順から。
「沈家は同意した」
とは聞いていない。
それどころか。
「沈家は知っている」
という言葉さえ聞いていない。
梁成が知っていたのは。
ただ。
「周掌柜とは話がついている」
ということだった。
そして。
「沈家は知っている」
という言葉が周長順の口から出たのは。
貨物が持ち出された後だった。
安生はその点を、別に丸で囲んだ。
⸻
梁成が去った後。
安生はすぐには沈砚を訪ねなかった。
一人で机の前に座った。
六月十二日のことを。
もう一度、最初から書き直した。
午前。
周長順が陸成安に。
「沈家のほうから、もう話が来ている。」
ただし、この言葉の正確な時間は。
まだ確認する必要がある。
その後。
梁成と馬四が現れる。
梁成が聞いた。
「周掌柜とは、もう話がついている。」
それから。
東倉三包。
梁成が受け取る。
臨一。
その後。
別の人間。
老高。
西倉二包を受け取る。
臨二。
午後。
周長順が梁成に言う。
「沈家は知っている。」
その後。
別の人間が聞いた。
「沈家はもう同意した。」
安生は、その流れを見つめた。
長いこと筆を動かさなかった。
最後に。
一行だけ書いた。
「少なくとも現時点では、貨物を出した直接の関係者の誰一人として、出庫前に沈川が明確に同意したことを証明できない。」
書き終えて。
もう一行を付け加えた。
「ただし、沈川が個人的に何かを言っていた可能性までは否定できない。」
そして。
筆を置いた。
⸻
夜。
沈砚がやって来た。
安生は梁成の話を伝えた。
沈砚は聞き終えると。
長いこと黙っていた。
最後に聞いた。
「つまり。」
「父は、貨物が持ち出されたことを知らなかった可能性もある?」
安生は首を横に振った。
「まだ、そこまでは言えない。」
「なぜ?」
「午後に。」
「『沈家は知っている』と言った人間がいる。」
「でも、俺たちはまだ分からない。」
「その『知っている』が、いつの時点の話なのか。」
「誰が周長順に伝えたのかも。」
「分からない。」
沈砚はうつむいた。
安生は彼を見た。
「今、確定できるのは。」
「貨物を出した人間の動きが。」
「以前考えていたより、はっきりしてきたことだ。」
「少なくとも彼らは。」
「明確な沈家の許可を受け取っていなかった。」
沈砚は顔を上げた。
「じゃあ、周長順は?」
安生はしばらく黙った。
「今は。」
「周長順についての問題が、もっと具体的になった。」
「何が?」
「彼が、いつ。」
「『周掌柜とは話がついている』という言葉を。」
「『沈家は同意した』という意味に変えたのか。」
窓の外。
川は変わらず南へ流れていた。
六月十二日は。
ようやく、ただの混乱した古い帳簿ではなくなりつつあった。
一つひとつの具体的な行動になっていた。
誰が札を持ったのか。
誰が貨物を持ち出したのか。
誰が何を聞いたのか。
そして誰が。
曖昧な一言を。
確定した結果のように伝えたのか。
その線は。
ついに、一人の重要な人物へたどり着いた。
周長順。




