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『安らかに生きる』 ――原題:『安生』  作者: 亀


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第七十章 第二枚札

翌朝。


安生はまた呉平の家へ向かった。


呉平は庭先で、古い腰掛けを直していた。


安生を見ると、顔を上げた。


「また来たのか?」


「ああ」


「今度は何を調べる?」


安生は言った。


「二枚目の札」


呉平の手にしていた小刀が止まった。


「二枚目の札?」


「六月十二日」


「東倉、三包。臨時札一枚」


「西倉、二包。臨時札二枚目」


「その二枚目が、あとで誰によって返されたのか知りたい」


呉平は安生を見た。


「親父の記録には名前がない」


「分かってる」


「だから聞きに来た」


呉平はしばらく考えた。


「ちょっと待ってくれ」


そう言って、家の中へ入っていった。


しばらくして、古い木箱を持って戻ってきた。


木箱は黒ずみ、角にはひびが入っている。


「親父が昔、札を入れていた箱だ」


安生は受け取った。


蓋を開ける。


中に札はなかった。


木片がいくつかと、黄ばんだ紙が数枚入っているだけだった。


呉平が言った。


「札はあとでなくなった」


「親父が死ぬ前に言ってた」


「回収されたものもある」


「壊れたものもある」


「どこへ行ったか分からないものもある」


安生が聞いた。


「じゃあ、六月十二日の臨時札は?」


「分からない」


⸻


安生は紙を一枚ずつ広げた。


そのうちの一枚に、いくつか数字が書かれていた。


日付はない。


ただ、その後ろに小さな印がある。


臨一。


臨二。


返却済み。


安生が聞いた。


「これは、お父さんが書いたものか?」


「たぶん」


「ほかに記録は?」


「ない」


「じゃあ、どうしてこれだけ残ってる?」


呉平は首を振った。


「分からない」


安生はさらに紙を見る。


裏側に、薄い文字が残っていた。


「二号、夜」


安生は顔を上げた。


「これはどういう意味だ?」


呉平も長いこと眺めた。


「二号札かもしれない」


「それとも、二枚目という意味かもしれない」


「親父はな」


「自分だけ分かればいいような書き方をすることがあった」


「ほかの人間には分からない」


安生は頷いた。


この言葉は、今のところ役に立たない。


少なくとも、まだ。


⸻


紙を裏返したときだった。


端に、小さな切れ目があるのが目に入った。


まるで、大きな紙の一部を破り取った跡のようだった。


安生が聞いた。


「これ、全部じゃないのか?」


「違う」


「もともとはどれくらいの大きさだった?」


「分からない」


「お父さんは、ほかの部分を持ってなかったのか?」


呉平は首を振った。


「全部探した」


「なかった」


安生は、それ以上聞かなかった。


また、この先が途切れていることが分かったからだ。


⸻


呉平の家を出た安生は、老梁のところへは向かわなかった。


そのまま古い倉庫へ行った。


馬成林が入口で木箱を運んでいた。


安生を見ると、


「また来たのか?」


と言った。


「六月十二日の出庫記録を見たい」


馬成林は眉を寄せた。


「前にも見ただろ」


「あのときは総勘定だった」


「臨時の出庫記録を見たい」


「そんなもの、とっくになくなった」


「本当に?」


「親父があの頃、倉を見ていた」


「その後、倉庫も何度か改修した」


「いろんなものがなくなった」


安生が聞いた。


「札の番号は残ってないか?」


馬成林は少し考えた。


「札の番号?」


「臨時札だ」


「覚えてる」


「どこにある?」


「ちょっと待て」


馬成林は倉庫の中へ入った。


しばらくして、小さな木片を持って戻ってきた。


そこには数字が一つだけ刻まれている。


二。


安生は受け取った。


「これが札か?」


「たぶん」


「どうして分かる?」


「子供の頃、親父が使ってるのを見た」


「臨時札だと言ってた」


安生は木片をよく見た。


角の一つが擦り減っている。


「沈」の字もない。


「周」の字もない。


ただ数字が一つあるだけだ。


「二号の臨時札か?」


「たぶんな」


「いつ親父が残したものか分かるか?」


「分からない」


安生は、すぐにはこれを六月十二日と結びつけなかった。


ただ聞いた。


「お父さん、六月十二日のことを何か言ってなかったか?」


馬成林はしばらく黙っていた。


「一度だけ言ってた」


「何て?」


「あの日は倉がひどく混乱していたって」


「どうして?」


「二つの荷が同時に出た、と」


安生は顔を上げた。


「同時に?」


「ほとんど同じ頃だったらしい」


「詳しくは?」


「知らない」


「誰が持っていったとかは?」


馬成林は首を振った。


「言ってない」


⸻


安生は木札を見下ろした。


数字が一つ。


名前はない。


日付もない。


荷物の記録もない。


ほかの証拠がなければ、


これだけでは何も証明できない。


安生は木札を返した。


「これは捨てないでくれ」


馬成林が笑った。


「こんな古い木切れを?」


「取っておいて、何になる?」


「いつか使えるかもしれない」


「二十年以上前のことを調べてるのに」


「こんなものまで役に立つのか?」


「時にはな」


「役に立たなそうなものほど」


「そこに本当に残っていたことを示せることがある」


馬成林は安生を見た。


それ以上、何も言わなかった。


⸻


昼になって。


安生は陸成安のところへ向かった。


「二号の臨時札」のことを話す。


陸成安は聞き終えると、


「札を見たのか?」


と聞いた。


「木の札だ」


「数字しかない?」


「ああ」


「それなら、昔の臨時札かもしれない」


「貨行でも使っていたのか?」


「使っていた」


「誰か専用のものじゃない?」


「違う」


「札は碼頭のものだ」


「誰が持っていようと」


「その人間が一時的に荷を出してもらえる」


安生は眉を寄せた。


「じゃあ、問題はそこだ」


「何が?」


「札が身分を示すものじゃないなら」


「どうして沈川は、梁成の名前だけを書いた?」


陸成安はすぐには答えなかった。


しばらくして言った。


「梁成が、沈川の知っている人間だったからかもしれない」


安生は黙っていた。


「あるいは」


陸成安が続けた。


「誰かから聞いただけかもしれない」


「だから記録した」


「どちらもあり得る」


安生は頷いた。


「やっぱり、まだ分からない」


「ああ」


⸻


帰ろうとしたとき。


陸成安が突然、安生を呼び止めた。


「待て」


「どうした?」


「一つ思い出した」


安生が振り返る。


陸成安は言った。


「六月十二日のことだ」


「一人、貨行に来た男がいた」


「梁二じゃない」


「誰だ?」


「馬という姓だった」


「馬何だ?」


「そこまでは知らない」


「何をしていた?」


「一つ聞いてきた」


「何を?」


陸成安は眉を寄せた。


「こう言った」


「南貨は、もう誰かが引き取ったのか、と」


安生の足が止まった。


「どうしてそんなことを聞いた?」


「分からない」


「いつ頃?」


「午後だ」


「六月十二日?」


「たぶんな」


「確かか?」


「その言葉は覚えている」


「ちょうどその日に帳簿を合わせていたからな」


安生はすぐに聞いた。


「その男に、もう荷は出たと答えたのか?」


陸成安は首を振った。


「いや」


「分からない、と言った」


「男は何か言った?」


「何も」


「それから?」


「帰った」


安生は彼を見る。


「どんな男だった?」


陸成安は長いこと考えた。


「若かった」


「灰色の服」


「背は高くない」


「それ以外は覚えていない」


「馬という姓だった?」


「自分でそう言った」


「馬成林じゃないのは確かか?」


「違う」


「じゃあ、碼頭の人間かどうかは?」


「分からない」


⸻


貨行を出ると、


安生の歩みは自然と遅くなった。


また一人、別の人間が出てきた。


馬という姓。


馬成林ではない。


梁成でもない。


梁二でもない。


安生は、すぐにはこの男を六月十二日の荷と結びつけなかった。


今、確かなのはただ一つだった。


六月十二日の午後。


誰かが、


「南貨は、もう誰かが引き取ったのか」


と尋ねた。


この言葉そのものが、


「梁成が荷を持っていった」という話よりも気になった。


少なくともそれは、


その日に誰かが、


南貨がすでに動かされようとしていることを知っていた、


ということを示している。


その人間が、


実際に荷を受け取った本人とは限らない。


ただ聞いただけかもしれない。


⸻


夜。


安生は家に戻ると、


その日のことをすべて書き留めた。


それから、紙に二つの欄を作った。


左側。


確認できたこと。


六月十二日には、臨時札が二枚あった。


二枚とも返却された。


東倉、三包。


西倉、二包。


沈川は梁成の名を記録している。


記録には、


「札、返却済み」


とある。


右側。


確認できないこと。


梁成が臨時札一を持ったのか。


梁成が臨時札二を持ったのか。


梁二と梁成が同一人物なのか。


二号の木札が六月十二日の臨時札なのか。


馬姓の男が誰なのか。


五包の荷が沈記のものだったのか。


三匹の布を米一石と引き換えた荷が、どこから来たのか。


安生は二つの欄を見た。


そこで初めて気づいた。


右側のほうが、ずっと長い。


以前なら、


「調べ方が足りない」


と思っていただろう。


今は違った。


これが普通なのだ。


二十三年前に残されたものが、


すべて完全な形で残っているはずがない。


安生は筆を置いた。


帳面を閉じようとした。


そのとき、ふと陸成安の言葉を思い出した。


――南貨は、もう誰かが引き取ったのか。


安生はもう一度、紙を開いた。


六月十二日の下に、


一行を書き加える。


「午後、すでに荷が引き取られたことを知っていた者がいる。」


少し考えてから、


その下にもう一行加えた。


「その情報が、どこから来たのかは不明。」


書き終えて、


ようやく帳面を閉じた。


窓の外は、もうすっかり暗い。


安生は机の上に並べた古い紙を眺めた。


ふと気づく。


自分が今追っているのは、


もう一人の人間ではない。


一つの情報だった。


六月十二日。


いったい誰が最初に知ったのか。


南貨は、もう引き取ってよい。


その話が、


どこから出てきたのか。


そこを見つければ、


「沈家はもう同意している」


という言葉が、


いったい誰の口から最初に出たのかも、


分かるかもしれない。


だから今回は、


先に人を探さない。


先に探すのは、


その言葉が最初に現れた場所だった。

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