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『安らかに生きる』 ――原題:『安生』  作者: 亀


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第七章 明日、また来る

翌朝早く、安生は城南へ向かった。


一人だった。


魚屋へ着くと、周叔はすでに店じまいの支度をしていた。


安生が来るのを見ると、手を止めた。


「安生、来たか。」


「ああ。」


安生は屋台の前まで歩いた。


「周叔さん、昨日の金だけど、今日は払えそうか?」


周叔は手を拭いた。


「ちょうど、その話をしようと思ってたんだ。」


「何です?」


「今朝入ってきた魚の代金が、まだ戻ってきてないんだ。」


周叔は脇の木桶を指した。


「午後にはいくらか入ってくると思う。それなら、先に半分だけ払って、残りは明日にしてもらえないか?」


安生は周叔を見た。


「あと、いくら足りない?」


「三百文だ。」


安生はしばらく黙った。


「明日なら払える?」


「払える。」


「分かった。」


周叔の顔から、明らかに緊張が抜けた。


「助かるよ。」


安生は首を振った。


「礼はいらない。借りは借りだ。困ってるなら、先に言ってくれればいい。」


周叔は安生を見た。


「昔のお前は、そんな言い方しなかったな。」


安生が少し笑う。


「昔は、こんなことを始めてまだ長くなかったから。」


周叔も笑った。


「そうだな。」


安生は背を向けた。


そのとき、周叔が呼び止めた。


「安生。」


「ん?」


「お前の父さん、まだ腰が痛いのか?」


「ああ。」


「あいつは昔、波止場にいた頃から腰が悪かった。」


「知ってる。」


「暇があったら、あまり重いものを持たせるな。」


安生は頷いた。


「言っておく。」


数歩歩いてから、もう一度振り返った。


「周叔さん。」


「何だ?」


「明日になっても金が揃わなかったら、先に言ってください。」


周叔は頷いた。


「ああ。」


それを聞いて、安生はようやくその場を離れた。


通りの角には、陳二がしゃがんでいた。


安生が出てくると、立ち上がる。


「どうだった?」


「明日払うって。」


「また明日か?」


「ああ。」


「それで納得したのか?」


安生は陳二を見る。


「困ってるんだ。」


陳二が鼻で笑った。


「ずいぶんあいつの肩を持つな。」


「肩を持ってるんじゃない。」


「じゃあ何だ?」


「借りは借りだ。」


陳二は答えなかった。


二人は並んで歩き始めた。


しばらくして、陳二が言った。


「安生。ちょっと聞きたいんだけど。」


「何だ?」


「お前、俺が何をしても間違ってると思ってるのか?」


安生は少し足を緩めた。


「そんなこと言ってない。」


「じゃあ、なんで最近いつも俺を避ける?」


「避けてない。」


「じゃあ、昨日なんで一緒に金を取りに行かせなかった?」


安生は少し考えた。


「お前と喧嘩したくなかったから。」


陳二が目を丸くした。


「俺がいつお前と喧嘩した?」


「昨日、周叔さんと喧嘩になりかけただろ。」


「金を返さないんだから、少しくらい言って何が悪い?」


安生は怒らなかった。


「お前の言ってることは間違ってない。」


「だったら、なんで俺を責める?」


「責めてない。」


安生は足を止め、陳二を見る。


「ただ、話して済むことなら、喧嘩する必要はないと思ってる。」


陳二は安生をじっと見た。


しばらくして、ふっと笑った。


「お前、本当に変わったな。」


安生も少し笑った。


「どこが?」


「昔のお前なら、俺より先に怒ってた。」


「じゃあ、昔の俺が分別なかったんだろ。」


陳二の笑顔が、少しずつ消えた。


「それ、どういう意味だ?」


「別に。」


安生は陳二の肩を軽く叩いた。


「行こう。」


二人はまた歩き始めた。


後ろから趙順が追いついてくる。


「お前ら、なんでそんなに早いんだ?」


陳二が振り返る。


「何でもない。」


趙順は二人の顔を見る。


「喧嘩したのか?」


「してない。」


安生が答えた。


「それならいい。」


趙順が笑う。


「今日は賭場に行かないのか?」


安生の足が少し止まった。


「今日はいい。」


「どうした?」


「金がない。」


趙順が笑った。


「お前が金を気にするなんて、いつからだ?」


安生は袖に手を入れた。


中には、数十文しか残っていない。


昨日、薬を買った分だけ減っていた。


「親父の薬がいる。」


趙順は、それ以上何も言わなかった。


三人はしばらく歩いた。


ふいに陳二が尋ねる。


「安生、お前の兄ちゃん、明後日帰ってくるんだよな?」


「ああ。」


「帰ってきたら、また親父さんに叱られるんじゃないか?」


安生が陳二を睨む。


「殴られたいか?」


陳二が笑った。


「やっぱり、お前は昔の安生だな。」


安生も笑った。


その一笑いで、さっきまでの気まずさはいつの間にか消えていた。


午後。


安生は家へ戻って昼飯を食べた。


母親が庭で洗濯物を干している。


「帰ったの?」


「ああ。」


「今日はずいぶん早いね。」


「別に、何もなかった。」


母親が安生を見る。


「明日、兄ちゃんが帰ってくるよ。」


「知ってる。」


「明日、一緒に買い物に行ってくれる?」


「何を買う?」


「卵と肉。それから、ばあちゃんの食べる菓子も。」


安生は頷いた。


「分かった。」


母親が一枚の服を広げる。


「それと、もう一つ。」


「何?」


「お前の部屋、片付けておいて。」


安生は固まった。


「なんで?」


「兄ちゃんが帰ってくるでしょう。」


「東の部屋を使うんじゃなかったのか?」


「東の部屋は風が入るのよ。」


「じゃあ、俺はどうする?」


「お父さんと一緒に寝て、何日か我慢しなさい。」


安生は眉を寄せた。


「嫌だ。」


母親が笑う。


「子供の頃だって、お父さんと一緒に寝てたでしょう。」


「子供の頃は子供の頃だ。」


「じゃあ、どうするの?」


安生は黙った。


母親はしばらく息子を見た。


「安平は、めったに帰ってこないんだから。」


「分かってる。」


「だったら、少しくらい譲ってあげなさい。」


安生はため息をついた。


「分かった。」


母親が笑った。


「それでいい。」


安生は部屋へ戻って、荷物を片付け始めた。


もともと、たいした物はない。


古い服が二着。


靴が一足。


それから、小さな木箱が一つ。


安生は木箱を取り出した。


中には、擦れて古くなった銅銭が何枚か入っていた。


その下に、角の欠けた飴が一つ。


安生はしばらく、それを見つめていた。


子供の頃、安平がくれたものだった。


あの頃、家は貧しく、菓子をいくつも買う余裕などなかった。


安平は自分の分を半分だけ食べ、残りを安生に押しつけた。


安生は、とっくに忘れていたと思っていた。


それでも、まだ残っていた。


木箱を元に戻す。


そして、戸を閉めた。


そのとき、庭の外から声がした。


「安生。」


李叔さんだった。


安生が外へ出る。


「李叔さん、どうした?」


李叔は門の外に立ったまま、中へ入ろうとはしなかった。


「お父さん、いるか?」


「いるよ。」


「ちょっと呼んでくれ。」


「分かった。」


安生が父親を呼びに行く。


父親が出てくると、李叔はようやく口を開いた。


「この前、波止場のことで聞いてきた奴がいた。」


父親の顔が少し変わった。


「何を聞いた?」


「お前たちの家に、昔の借りがまだ一つ残ってないかって。」


父親が眉を寄せる。


「何の借りだ?」


「俺にも分からない。」


李叔は安生を一度見た。


「あいつ、はっきり言わなかった。」


父親はしばらく黙った。


「どんな奴だった?」


「よく見てない。」


李叔が思い出すように言う。


「若い男だった。」


「男か?」


「ああ。」


父親は、それ以上尋ねなかった。


「また来たら、俺のところへ来るように言ってくれ。」


李叔は頷いた。


「分かった。」


そして安生に向かって言う。


「じゃあ、俺は行くよ。」


安生も頷いた。


「李叔さん、気をつけて。」


李叔が数歩歩いたところで、また足を止めた。


「そうだ。」


安生が顔を上げる。


「あの男がまた、お前の父さんのことを聞いてきても、あまり余計なことを話すな。」


「なんで?」


李叔は首を振った。


「俺にも分からん。」


それだけ言って、去っていった。


安生は門の前に立っていた。


父親はすでに家の中へ戻ろうとしている。


「父さん。」


「ん?」


「さっき言ってた昔の借りって、何のこと?」


「何でもない。」


「本当に?」


父親の足が止まった。


「昔、波止場であったことだ。時間が経ちすぎて、俺もよく覚えてない。」


安生は父親を見る。


「だったら、どうして今になって聞く人がいる?」


父親は答えなかった。


ただ、一言だけ言った。


「お前は気にするな。」


安生はまだ聞こうとした。


だが、父親はすでに家の中へ入っていた。


庭に、また静けさが戻った。


その夜。


安生は東の部屋の布団に横になった。


家の中には、自分が今まで知らなかったことがある。


初めて、そんな気がした。


だが、それ以上は追及しなかった。


明日は安平が帰ってくる。


朝になったら、母親と買い物にも行かなければならない。


安生は目を閉じた。


同じ頃。


城南の小さな家では、一人の若い男が手にした紙を机の上へ広げていた。


紙は何度も揉まれた跡があった。


それでも、そこに書かれた二つの文字だけは、まだはっきりと残っている。


安生。


若い男の隣には、一人の老人が座っていた。


老人が紙を見る。


「確かに、こいつなのか?」


若い男は頷いた。


「間違いない。」


老人はしばらく黙っていた。


「なら、まだあいつには会うな。」


若い男が尋ねる。


「なぜ?」


老人は紙を取り上げた。


「先に、あいつの父親を見てみよう。」


部屋の中が静まり返った。


しばらくして、老人がもう一度口を開いた。


「こういう勘定は、今すぐつけるものじゃない。」


外から、足音が聞こえてきた。


若い男は、それ以上何も言わなかった。


紙はもう一度折り畳まれ、机の上に置かれた古い帳簿の下へ押し込まれた。


そのことを、安生は何も知らなかった。

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