番外編*#2(3)の舞台裏
時・7月のとある木曜日
場・カフェ→屋外→涼真の家
◆
客席。広瀬の隣にはゴジラがお座り中。舞花の話題が終わった直後。
広瀬「ん?店長、ゴジ君がそわそわしている。トイレかもしれないから涼真君を呼んできてほしいんだ」
清水「おや大変ですね。いま連れてきます」
広「ゴジ君、僕は帰るからシートから落ちないようにするんだよ?」
犬「ぱう(ありがとう。また来てね!)」
涼真「あれ?広瀬さん?ゴジラだけ?……まさか!?」
(カウンター内)
涼「(小声で)店長やられました!食い逃げです!ゴジラを利用して店長をフロアから移動させたんです!」
清「まったく気づきませんでしたね。単純だが手っ取り早い作戦。よく思い付きますね」
涼「感心しないで下さい。よくよく考えたら広瀬さんが自分でゴジラを下ろせたはずなんです」
清「ああ、それは私も悪い。私がゴジラさんを下ろしてあげればよかったんです。涼真君を呼ぶことに固執したばかりに」
涼「勤務中ですから店長が動物に触るのは……嫌がるお客様もいるかもしれません」
(ふたりの足もと)
犬「ぱうぅ…(ボクが王子様と話してる間に…)」
注)ゴジラは広瀬姓がふたり存在し、自分が見たことのない方の広瀬が食い逃げしていると思っている。信用した人物を疑わないタイプ。
涼「ゴジラは悪くないからね?」
犬「ぱうぅ(涼真パパごめんなさい)」(うるうる)
(屋外)
広「やあラッキー。ん?怒ってる?」
黒猫「見てたわ。ゴジちゃんをオトリに食い逃げなんて酷いわ!」
広「名案だっただろ?」
鴉「誉めてないス。魔法でドアのベル音を消すのもタチが悪いス」
広「ハッピーも見てたのかい?」
鴉「ゴジは気弱で怖がりだからシートから自分では下りられないス。それを王子さんに利用されたら、今ごろは落ち込んでるス」
黒猫「そうよ。涼真に迷惑かけたって泣いてるわ」
広「そうなの?下りれないのは知ってたけど、僕は黒色の動物としか話せないからゴジ君とは通訳の君たちがいないと思考がわからなくて。悪気はなかったんだ」
鴉「悪気なく食い逃げするのも問題ありっス。最悪ス」
広「僕が悪かったのは認めるけど、どことなくここぞとばかり責められてる気がするのはどうしてだろう。反省してるのに」
黒猫「言いすぎたかしら」
鴉「同感ス。オイラも反省ス」
広「というわけで涼真君の家に行ってくるよ。あの家にいるレディが癒しでね」
黒猫「涼真の家!行きたいわ!でもレディって?」
広「着物姿の子供だよ。ゴジ君のおもちゃで遊んでるんだ。彼女話せないから会話はできないけど、ニコニコして可愛いんだ」
黒猫「!?」
鴉「!?」
広「じゃ失礼。あ、ご両親のお仏壇にイチゴでも供えるかな。ん?ラッキーも来て遊ぶ?僕にしか(レディが)見えないと思うけど」
黒猫「ぃ、いい。王子様だけでどうぞ」
広「そう?では失礼!」
黒猫「あれってたぶん座敷童子よね?」
鴉「その家に幸運をもたらすいい妖怪らしいス。でも怖いス」
黒猫「私も。けど待って。いま涼真お仕事中よね?」
鴉「いつもの不法侵入ス。やっぱり懲りない人っス」
黒猫「今回は本当に傷ついたみたいだから大目に見てあげましょう?」
鴉「そうスね。涼真が幸せになればそれでいいス」
(涼真の家)
広「はいイチゴ食べて下さい。さてレディは…あれ、いないなあ。陽が高いうちは来ないのかな。おーい傷心なんだ。慰めてよー。おーい……」
注)座敷童子はゴジラ在宅時のみ出現。それを広瀬は知らない。
えんど。