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白銀の忌まれ血  作者: 影乃雫
第三章 騎士編
83/310

Ep:83 困惑

 王都を見下ろす時計塔の上に、雀色のコートを羽織った女が現れる。


「お帰り、ヘルツ」


濃紺の髪の男トイフェルは、その女に言った。


「あれ?ヘルツさん、フード取ったんですか?」


深緑色の髪の男クロウヴは聞く。


「あぁ、直すのを忘れていただけだ…」


そう言ってヘルツはフードを被り直す。


「そんな事より、アードラーは始末しました」


「あぁ、見ていたよ。よくやってくれた」


「恐縮です…」


ヘルツは少し頭を下げる。


「それよりも、死んだNo.s(ナンバーズ)はどうしたんすか?」


クロウヴはヘルツに問う。


「全員顔は潰しておいた。思った以上に手間取ったが…少なくとも身元が割れる心配は無い」


「へぇ…」


クロウヴは興味が無さそうに呟く。


第二段階(フェーズツー)を超えた所為で、IVth(フォース)すら凌駕する力を手に入れた…早急に第三段階(フェーズスリー)に進行させなければ…」


「また彼に頼みますか…?」


「…いや…私がやろう…それと、Xth(テンス)の準備を頼む。可能であれば一気に第四段階(フェーズフォー)まで進める」


「了解しました…」


そう言ってヘルツは姿を消す。


「さぁ、私達も動こうか…子供の回収には失敗したが、何…問題は無いね」


トイフェルはそう言うと、その細い目を少し開けて呟いた。


事実上(ディファクト)()(クロノ)()統べる者(ルーラー)…」


そして、音も無く、魔力的な痕跡を残さずして二人の男はその場を去った。


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 謎の集団からの襲撃をうけてから一週間後、まだ団長が残したEmerの意味は分かっていない。只一つ分かったのは、それが書きかけだったと言う事だけ。


Emergency(エマージェンシー)Emery(エメリー)Emerson(エマーソン)…」


ダギル大尉は考えうる可能性を呟く。ダギル大尉は、今回の活躍を買われて昇進した。僕とエル、アカネとアオイも上等兵まで昇進した。


「警告…金剛砂…人名…どれも当てはまりそうにないな…」


ダギル大尉は顎に手を当てて呟く。


「…いや…警告は辻褄が合いそうだが…?」


アオイはダギル大尉に聞く。


「俺もそう考えたんだが、死の間際に何かに注意しろと言う長文を書く筈が無い。書くんなら、もっと短く、そして分かりやすい言葉を書く筈だ…」


「…言われてみれば…」


「じゃあ、人名、エマーソンはどうですか?」


今度はアカネが聞く。


「何故あの女の名前が分かった?」


「そうですね…」


「残りは金剛砂…」


「コランダムやガーネットを粉末状にした物…あの状況下で書こうとした意味が分からない…」


「あとEmerがつく言葉…」


思いつかない…そもそも、候補に出された三つすら、僕は思いつかなかった。


「もう一週間…団長は何を伝えようとしたんだ…?」


ダギル大尉が呟く。その時、部屋の扉が叩かれる音がした。


「失礼します。残留魔力調査の結果を報告しに参りました」


------------------------------------


「何!?残留魔力が見つからなかった!?」


入って来た騎士の報告に、ダギル大尉は驚き、大声を出す。


「は、はい…三日前に妨害魔法が解けてから、細部まで調査したのですが…どこにも団員以外の魔力が発生した痕跡が見られませんでした…」


「どういう事だ…正面から入って来た報告は無い…かと言って瞬間移動魔法でも無い…奴らはどうやって侵入した…?」


ダギル大尉含め、元から部屋に居た僕達五人は、考え込み沈黙した。

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