Ep:82 血意
落ち込む僕に、ダギル中尉は言う。
「今は敵を見つけられないかもしれない。だが、団長が残したこのメッセージには必ず意味がある筈だ。それが分かった時、俺達の歩みは大きく前進する。だから、必ずEmerの意味を解くぞ」
「はい」
「よし、じゃあこれから俺達は暫くこの本部に残って、Emerの意味を解読する。残留魔力の妨害魔法が解け次第、魔力の調査は他の奴らにやってもらう。良いな?」
僕達四人は、深く頷いた。
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銀鷲騎士団本部とは王宮を挿んで対の位置にある建物、黄金獅子騎士団本部の執務室では、黄金獅子騎士団団長レオン=ゴルトが報告を受けていた。
「そうか、アードラーが死んだか…他愛も無い」
「騎士団本部が謎の集団に襲撃され、その主犯格と思しき女に殺されたと聞いています」
レオンは執務机に肘をつき、組んだ手の前に顔を持って行く様に前のめりになる。
「設立されて間もない騎士団があそこまで大きくなった事自体が奇跡とも言える。そもそも、あの女以外に騎士団の一団長を女に任せるなどと言った事を…」
レオンは黙る。少し間を置いてレオンは再び口を開いた。
「だが、それが先王陛下の目的でもあったのかも知れない…ある意味、今までの騎士団と言う概念に囚われない騎士団を作っていた…二等兵とも対等に話し、かと言って団長の資格は十分にあった…」
だからこそ惜しい。そうレオンは続けた。報告を終えた騎士は執務室を出て行く。
「おっと、すみません」
扉を開けて出て行く騎士とは別の男の声が聞こえる。騎士が去ると、入れ替わりで男が入って来た。
「失礼します」
そう言って入って来たのは、血にも似た赤黒い髪の男、ライトとエルの同期であり友でもあるブルート=フランメだった。
「突然申し訳ございません。この度は折り入ってご相談があり参りました」
「何だ?」
「単刀直入に言います。黄金獅子騎士団を、辞めさせて下さい」
ブルートが放ったのは、団長レオンですら驚く言葉だった。
「どういう事だ?」
「ライトとエルの所属する銀鷲騎士団の団長が死んだと聞きました。友人の為に、銀鷲騎士団に籍を移したいのです」
レオンは黙る。どうでも良い様な内容であれば、怒鳴り追い返すつもりだったレオンは、こうも真面目な意見が飛んでくるとは思ってもみなかった。
「そうか…確かに真っ当な意見ではある。友の為に自分の身を顧みないという精神にも感心した」
「では…!」
「だが、移籍は認められない」
「…!何故ですか…?」
「そもそも、騎士団員が他の団に移籍するなど、聞いた事が無い。前代未聞だ」
「ですが、今までなかったのは、する必要が無かったからではないのですか!?できるできないはやってみてから言って下さい!!」
ブルートは、自分が属する騎士団の最重要人物を前にして、大声で自分の意見を言う。自分の意見をはっきりと言うブルートに、レオンはやがて口を開いた。
「――分かった。お前を銀鷲騎士団に籍を置けるよう手配する」
「有り難うございま――」
「だが、この騎士団は辞めさせない。お前には、銀鷲騎士団に一時的に出向く人員として送る。良いな?」
「有り難うございます!」
ブルートはレオンに対し、九十度に深く礼をした。




