Ep:81 最期
アードラーは資料室の窓から落ち、その体は地面に打ち付けられる。
「(面影がある…髪の色こそ違うが、あの深紅の瞳は…)」
アードラーは朦朧とする意識の中で考える。
「伝え…なくては…彼らに…この事を…」
そう呟きながらアードラーは、女に刺され、血が溢れる腹部に手をやる。軽鎧を貫いた一撃は、アードラーに致命傷を負わせるには十分だった。だが、それが仇となるとは考えてもいないだろう。アードラーは余力を尽くして、石畳に血で文字を書いた。
「(あの人は…あちら側なのか…)」
アードラーはそのまま事切れた。
「おい!誰か倒れてるぞ!」
他の騎士の声が聞こえる。しかし、アードラーには既に聞こえない。
「団長だ!」
「何だと!?」
騎士はアードラーに駆け寄る。その手元には「emer」の文字があった。
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「Emerか…どう言う意味なんだ…?」
ダギル中尉は血で書かれた文字を見つめて腕を組む。僕達は残りの襲撃者を倒して回り、一段落ついてから団長の訃報を聞いた。あの状況を見ていたからか、あまり驚かなかった。ただ、あの団長を倒し…殺してしまう程の実力を持った敵がいる事が分かってしまった。
「あそこから落ちたのか…即死では無いが、あの状態なら死ぬな…」
アオイが資料室の窓を見上げて呟く。
「団長様を殺してしまう程の存在…それに、この文字の意味は…」
アカネは布を掛けられている団長の遺体を見て言う。
「残留魔力の調査はどうだった?」
ダギル中尉は調査を進める仲間に聞く。
「それが…何故か阻害されている様で、あまり上手く調査が進められていないんです…」
「あ、それってもしかして…」
僕は自分の魔力を収めようとする。
「あれ、ちゃんとできてる…」
前にヴェルインさんに言われた、魔力が大きすぎて他人の魔力制御を阻害している事。それを思い出して魔力を収めようとしたけど、ちゃんとできている。
「どうした、何かあったか?」
「前に、ヴィルの街でヴェルインさんと特訓してた時に、ヴェルインさんが魔法の発動をできなかった時があって、原因が僕の魔力が漏れてて、ヴェルインさんの魔力を邪魔してて…何?」
「お前、もしかしてあの時残留魔力の調査が出来なかったのって、お前の所為だったのか…!?今思えばあの時、魔法が発動できないって言う報告が多かった様な…?」
「ご、ごめんなさい!」
「いや、過ぎた事は仕方ない。それより、エル。お前は出来てるのか?」
「今試してみたけど、出来てました」
「じゃ、じゃあ!敵が近くで魔力を流してるんじゃ…!」
「いや、残留魔力調査の妨害は、一応魔法でできるんだ。今近くに敵が居る可能性は低いだろう」
「そうですか…」
僕は落胆して呟いた。




