Ep:77 援軍
アオイは目にも止まらぬ速度で男の背後まで移動した。
「何ッ!?」
男はダギル中尉に振ろうとしていた剣を即座にアオイの方へ向け、その剣を受ける。男はアオイの剣撃の勢いに乗せて、後ろに飛び退く。
「何があった!?」
僕がダギル中尉とアオイに追い着くと同時に、後ろから声が聞こえる。振り返ると、エルとアカネ、そして団長が居た。
「お前は…」
団長は呟く。恐らく学校周辺に現れた集団と同一だと察したんだ。団長は即座に剣を抜き、男を見据える。
「前に会った人とは違う…袖口の線が、一本から三本に増えてる」
「お前も気付いたか。俺も考えていたんだが、あながちIIIrdって言うのは嘘じゃなさそうだ」
ダギル中尉が言う。
「そうか、ならば報告にあったものよりも強いと認識した方がよさそうだ…!」
団長はそう言うと同時に姿を消す。次の瞬間、男の背後に回り込んでいた。男は即座に反応し、団長の攻撃を容易く躱す。団長は更に斬り込み、その度に男は攻撃を躱す。
「戦闘力的には中隊長…いや、大隊長クラスと言った所か…」
団長は一度距離を取り呟く。
「甘いな…こういうのは、間を開けない方が良い…」
アオイはそう言うと、湾曲した片刃の剣を構え、重心を落とす。
「宵刀流、宵闇の閃…」
その瞬間、素早く男に肉薄し、そのまま剣を振り抜く。男の首を捉えたかに思えたその一撃は、寸での所で躱される。
「宵刀流、月光の断…!」
「何…!?」
アオイは空中で剣を構え直し、再び振るう。その剣身は、青白く輝き、三日月の様な軌道を描いた。男はその攻撃を躱しきれず、その胸を浅く切り裂いた。
「ちっ…!浅いか…後は頼んだ、姉貴…」
「暁刀流…暁光の閃!」
少し離れた所に立っていたアカネがそう言い、見るとアオイと同じ様に湾曲した片刃の剣を持っていた。只、その剣身の色はアオイとは対照的に赤みを帯びていた。アカネはアオイと同様、重心を落とす様に深く構え、そのまま跳んだ。そして一瞬にして男の前まで移動し、腰に添えていた剣で男を切り上げた。
「がッ!!」
男は手を斬られ、その剣を手放す。大きく弾き飛ばされた剣が落ちるよりも早く、アカネは言った。
「団長様!」
「分かっている!」
その言葉と共に、団長は剣に魔力を流す。緑色に輝く剣身に、段々と周りの空気が吸い寄せられていく。
「風属性…」
僕は呟く。団長はやがてその風を全身に纏い、その力に乗せて男に剣を振った。男は目を瞑り、傷付いた手を交差させ防ぐ動作を取る。次の瞬間、団長は横方向に弾き飛ばされた。
「なァッ…!?」
ダギル中尉は声にならない言葉を出す。弾き飛ばされた団長のすぐ横には、くすんだ赤茶色のフードを被った人物が、団長の方へ足を伸ばしていた。
「貴様の相手は私だ。クロウヴの、後は任せたぞ」
「仰せのままに」
フードの女は目線を動かす事無く言う。返事がしたのは僕達の頭上だった。見ると、弾き飛ばされた男の剣を空中で掴み落ちて来る、四本線のIVthの姿があった…




