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白銀の忌まれ血  作者: 影乃雫
第三章 騎士編
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Ep:69 書簡

 僕とエルは用件を済ませ、剣聖様の部屋を後にする。宿屋を出て、騎士団支部に戻ろうと歩いていた。


「あ、そう言えば、折角出して貰ったのに、紅茶飲まなかったね」


「そう言えばそうだね」


勿体無い事をしたなと思いながら、僕達は大通りを歩いて行った。


------------------------------------


 濃紺の髪に細目の男トイフェルは、先程まで少年と少女の座っていた席を見つめて呆然と立っていた。あるのは、机の上の紅茶だけ。


「……」


ふと我に返ったように唐突に動くと、トイフェルは机の上の紅茶の入った器を持ち、台所に向かう。その水面は、どういう訳かほんの少しも動かない。


バシャッ…!


トイフェルは器を逆さにし、音を立てて紅茶が捨てられる。中身の無くなった器と何もない流し台を見つめ、トイフェルは呟いた。


「本能的に回避したか、将又運が良いだけなのか…いや、後者だ。彼の私への疑いは晴れていた…」


トイフェルは、その後暫く虚無を見つめていた。


------------------------------------


「只今戻りました」


僕は支部の建物に入り、ダギル中尉を見つけて言う。


「おお、戻ったか。剣聖様は何と仰っていた?」


僕とエルはダギル中尉に剣聖様が言っていた事を伝えた。


「まぁ、幾ら剣聖様でもそう考えるか…」


ダギル中尉は顎に手を当てて考え込む。


「あの…」


すると突然、エルが口を開いた。


「どうした?」


「あの二人、私達の事知ってたと思うんです」


「どういう事だ…!?」


「私達を見て、()()()()って言ってたんです」


「それは本当か…!?そうなると、あの屋敷で何かを探していた事にも合点がいく…」


「僕達が関わった事のある場所だからですか?」


ダギル中尉は、僕の質問に頷いて返す。


「この事は、念の為迅速に王都の本部へと報告する。団長から返事が来るのは一週間前後後になるだろうが、早いに越した事は無い」


「お願いします…!」


僕とエルは、同時に言った。


------------------------------------


 剣聖様に報告してから二週間が経った。団長からの返事は今だ来ていない。書簡を出してからの一週間、ずっと大雨が降っていた所為なのか。それとも、もっと重要な事が起こって、時間をそっちに割いていたからなのか。何にせよ、今日も昼だと言うのに薄暗く、今にも雨が降り出しそうな天気の中、僕達は業務に励んでいた。

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