Ep:67 対処
剣聖様の言葉に気になる部分があり、思わず呟いてしまった。
「そのパン屋って、大通りの繁華街にあった…」
「そうそう、それだよ。知っているのかい?」
僕は言葉に詰まる。
「あのパン屋の主人は、クレイ家の次男のリテユスからこいつらを助けたせいで斬首されたんです」
そう言ってダギル中尉は僕の頭に手を置く。
「そんな事まで…」
「クレイ家の事、知ってるんですか…?」
「あぁ、王都にクレイ家と繋がりが深かった大臣が居るんだが、その大臣からクレイ家が悪名高い事を聞いていたのだ」
剣聖様はそう言って眉間に皺を寄せる。
「過ぎてしまった事は仕方ない。まぁ、これも何かの縁だろう。私とは気軽に接してくれたまえ」
剣聖様はそう言ってダギル中尉に手を伸ばす。
「え?い、いえ!恐れ多い!私なぞまだ剣の腕も…」
「誰が剣の腕で格差が決まると言った?さぁ、手を取りたまえ」
「は、はい…」
ダギル中尉は戸惑いながらも剣聖様の手を握る。その様子を見ていた他の仲間達は、握手を交わした瞬間小さく歓声を上げた。
「これから宜しく頼むよ、ダギル君」
剣聖様が握手を終えると、今度は僕とエルの方を向いた。
「君達も、宜しく頼むよ」
そう言って剣聖様はエルに手を伸ばす。エルと握手を終えると、今度は僕に手を伸ばしてきた。
「宜しくお願いします」
僕はそう言いながら剣聖様の手を握った。剣聖様の細い目は、握手している手をしっかりと見ていた。
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剣聖、トイフェルは、ダギルやエル、ライトに向けて言う。
「それでは、私は一旦宿に戻るとするよ。良いかい?」
「は、はい。本来であれば聴取が必要なのですが、状況が状況ですし、剣聖様なら問題御座いません」
「助かるよ。では、何かあれば声を掛けてくれ」
そう言ってトイフェルはクレイ家の屋敷跡を後にした。暫く歩くと、突然人気の無い路地へと曲がる。少し進んで、足を止めた。
「ヘルツ」
「はッ…!」
雀色のフードを被った女が、突然トイフェルの後ろに現れる。
「何故あの屋敷にIstを送った?」
「申し訳御座いません…!私の責――」
いつの間にかヘルツの背後に音も無く移動したトイフェルは、ヘルツの首に剣の刃を突き付ける。
「私は何故と聞いている。謝罪は聞いていない」
「…!り、リテユスの兄であるヴェルイン=クレイが死に際に、あの子供に英雄教のレリーフの入ったペンダントを渡したと聞きました…!他にも証拠が残っていないかと…」
ヘルツの返答を聞き、トイフェルは剣を納める。
「そのペンダントなら私も見た。彼、ライトが身に着けていた。あの屋敷は既に焼いている。あの様子を見るに、直接的な調査は入っていない。あまり神経質になるな」
「も、申し訳御座いません…彼らがこの街に来たので、焦ってしまいました…」
「あぁ、焦る必要は無い。今の彼らの実力は、Istと互角より少し上と言った所だ。君の部下にも覚醒の進行をさせたんだろう?対処はもう少し先で良い」
「分かりました…」
ヘルツはそう言うと、そのまま一瞬で居なくなった。




