Ep:66 剣聖
男の人二人は、僕とエルに肉薄して来る。僕は咄嗟に剣を抜いて、両方の剣撃を防ぐ。
剣を振り、エルを庇いながら少しずつ後退ってしまう。
「やあ!」
「ぐッ…!」
僕のじゃない剣撃が、僕の横を通り過ぎる。その剣撃を防ごうとした男の人は、少し後退った。もう一人の人も距離を取る。
「エル…!」
「私も、戦う…!」
僕の少し後ろで、剣を構えたエルが呟く。剣先が少し震えている…
「騎士だろうが束になった所で所詮は子供だ」
「排除する…!」
男の人達は肉薄する。剣と剣がぶつかり合い、火花が光る。僕は剣に魔力を流す。すると、剣身が白く光り、ブルートさんの言っていた属性付加がされる。僕はその剣を振った。
「チッ…!」
僕の剣を剣で受けた男の人は、勢いに押されて飛び退く。
「何でここに居るんだ!?何で僕達を襲うんだ!?」
「知る必要は無い…!」
そう言って男の人、いや、この男は僕に肉薄して来る。何でだ…何で僕達を襲うんだ…!?
「うッ…!?」
目が…!また痛い…!何でこんな時に…!
「(いや、違う…!これは――)」
僕は顔を上げ、男の剣を見た。やっぱりだ。左目の視界は完全に失われているけど、男の動きが遅く見える…!さっきまでとはまるで違う…!
「何…!」
僕は男の剣撃を容易く躱し、首の痣を肘まで伸ばす。そして、その腹に剣の柄を叩きこんだ。
「がふッ…!?」
男は弧を描いて飛んで行く。しかし、空中で体制を立て直し、そのまま音を立てて着地した。僕は次の一手を打とうと剣を構え直し一歩踏み出す。
「待て」
僕の目の前に居る男は言う。その言葉にエルと、エルと戦っていた男の動きが止まる。
「止めろ、この子供は例の子供だ。一度退くぞ」
「だがそれは…!」
突然、男達の前に黒い影が横切り、次の瞬間男達の首が飛ぶ。
「キャッ…!」
エルが小さく悲鳴を上げる。
「やれやれ…新米騎士とは言え、子供相手に剣を抜くとは…愚かだ」
首が飛び倒れた男の死体の前に、いつの間にか濃紺の髪の人が立って居た。
「誰…」
僕は呟く。
「私はトイフェル。通りすがりの剣士だ」
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僕とエルとトイフェルと名乗った男の人は、近くを巡回していた人に報告し、応援を呼びに行って貰った。暫く待っていると、ダギル中尉が直接応援としてやって来た。他にも、ヒネーテ上等兵達も居る。
「ここを漁っているのを発見して声を掛けた所、襲われた。間違いないな?」
「はい」
「それで、これをやらかしたのは?」
「私だ」
ダギル中尉の問いに、トイフェルさんが答える。すると、ダギル中尉は顔色を変えてトイフェルさんを見た。
「あ、貴方は!?」
「知ってるんですか?」
エルがダギル中尉に聞く。
「知ってるも何も、あの剣聖様だ!」
「ええ!?」
僕とエルを含めた。ここに居る騎士達一同が、声を揃えて驚く。
「剣聖様!?剣聖って、あの王都剣聖流を作ったって言う…!?」
「それだけじゃ無い。英雄教の教祖様でもある御方だ…でも何でこんな所に…?」
「少し用があってね。休暇も兼ねて来ているんだ。この街に美味しいパン屋があると聞いたのだが、つぶれてしまっていたのが残念だが」
トイフェルさん、いや、剣聖様はやれやれという風に首を振った。




