Ep:64 移動
フォルジュロンさんから剣を受け取って、想定外のプレゼントがあって、今は街に向かって移動中。既に日も傾いて来ていた。
「そろそろ予定の宿屋だ。降りる準備をしておけ」
ダギル中尉が、反対側に座る僕とエルに言った。
暫く馬車は走って、街道に面している町に入って止まった。降りてみると、馬車は三階建ての建物の前に停められていた。小さな看板にINNと書いてある。
中に入ると、一階は食堂になっていた。大きな机から一人席、カウンターまで色々ある。ダギル中尉が入り口の正面にあるカウンターでチェックインする。
「予約してた小部屋四部屋を頼む」
「はい、ダギル様御一行でお間違いありませんね?」
「ああ」
ダギル中尉が部屋の鍵を四つ受け取って、一つは自分の、一つはエルに、一つは僕に、最後の一つは御者の人に渡した。
「それでは私は馬を馬宿に預けて来ます」
そう言って御者の人は馬車を走らせて行った。
「明日ヴィルの街に到着する予定だ。しっかりと休めよ」
そう言ってダギル中尉は階段を上って部屋に向かった。
「僕達ももう休もうか」
「そうだね」
僕達も階段を上って、鍵に書いてある番号の部屋に入った。
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宿屋から出発してから早四半日。もうすぐ街に到着する。少しして、馬車の速度が遅くなった。もうすぐ街に着く…
「ライト、エル、先に言っておく。あの後、クレイ家は潰れた。何故かは分からないが、屋敷やクレイ家に纏わるもの全てが焼けた。俺達は放火だろうと考えているが、奇妙なのが、クレイ家の人間の消息が完全に途絶えた事だ」
「え…!?」
僕とエルは同時に声を漏らす。
「リテユスと、追放されたヴェルインはともかく、その父に当たる者、母に当たる者の居場所が見つからない。だけどな、俺達はもう探すつもりはない。クレイ家自体悪評が多く、お前達の一件もあった。はっきり言って必要無いと判断したからだ。どうせどこかで野垂れ死んでいるだろう」
そんな事になっていたなんて…僕はゆっくり進む馬車から一旦降りて、移動車の前の荷車からペンダントを取り出す。そして移動車に戻った。
「もしかして、この英雄教と関係あるのかも…」
「もしも本当に英雄教がお前達の周りで起きた事に関係があるとするなら、この国全てがお前達の敵になるかも知れない。その事だけは忘れるな」
僕とエルは同時に頷いた。
「そろそろヴィルの街の中に入ります。そのまま支部に向かいますね」
御者の人がそう言うと、馬車が一旦止まり、少ししてから進みだした。




