Ep:63 強化
次の日、僕は学校の寮から持って来た荷物を馬車に乗せていた。
「エル、そっちは終わりそう?」
「もうすぐ終わりそう!」
僕は最後の荷物を馬車に乗せて、一息吐く。荷物とは言ってもそんなに量は無いから、エルと一つの馬車を半分ずつ使う。エルも最後の荷物を乗せて、額の汗を拭う。
「ふぅ…お昼過ぎに出発するんだっけ?」
エルが僕に聞いて来る。
「そうだね。途中で宿に泊まって行くみたい」
僕はダギル中尉から聞いた事をそのままエルに伝える。エルは納得した様に頷いて宿舎の中に戻って行った。それを見送った後、僕はフォルジュロンさんのお店に向かった。
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「いらっしゃい」
「昨日頼んだ物、受け取りに来ました」
「小僧か、仕上がってるぞ」
一度奥に行ってから戻って来たフォルジュロンさんの手には、僕が昨日預けた剣があった。外見は全然変わってない。
「外見はあまりいじってない。柄の滑り止めを強くしたくらいだな。本題は剣身の方だ」
そう言ってフォルジュロンさんは鞘から剣を抜く。その剣身は複雑な白銀に染まっていた。
「剣身は魔鋼鉄とオリハルコンの合金にしてある。ただ、元の刃も溶かしてこれと混ぜてあるからな…思い入れがあるなら心配はいらん」
魔鋼鉄で魔力の伝導率を高めて、オリハルコンで剣身の強度を高め、剣の所有者の思い入れを残す。本当に金額相応、いや、金額以上の仕上がりをしてくれた。その時、入り口の扉が開く音がして、誰かが入って来た。
「親父!アダマンタイトの剣を――」
突然言葉が止まる。気になって振り返ると、そこにはブルートさんが立って居た。
「ライト!お前も来てたのか!?」
「ブルートさん!」
僕はブルートさんに駆け寄り、ブルートさんはこっちに駆け寄って来る。
「何だよ、半年後くらいに会って久しぶりって言うつもりだったのによ。それより、お前も剣を買いに来たのか?」
「ううん、昨日強化を頼んだ剣を受け取りに…」
「あれか。お前、あんな剣持ってたんだな」
「ちょっとね」
僕は剣を持ってた経緯と、フォルジュロンさんに受けた説明をブルートさんにする。途中でフォルジュロンさんに口を挿まれたけど。
「銅金、オリハルコンと魔鋼鉄の合金か…性能としては恐ろしいな…俺が今買おうとしたアダマンタイトの剣より強いだろ、それ」
そう言ってブルートさんはカウンターに置いてある剣を指差す。
「何なら魔鋼鉄とアダマンタイトの合金の剣にするか?特別にアダマンタイト単体の一割増で売ってやる」
「それだけで良いのか!?買った!」
「毎度。金貨7枚、銀貨3枚だ」
「流石にちょっと高いな…」
「贅沢言うな…材料費が高いんだ。そもそもこっちは赤字寸前だ」
フォルジュロンさんは呆れたように手を振りながら言う。
「まぁそうだな」
そう言ってブルートさんはお金を払う。
「ライト、お前は南方の街に行くんだってな。頑張れよ」
「ブルートさんこそ」
「だからさん付けは止めろって」
「アハハ」
他愛のない話をして、僕達は笑う。
「それじゃあ、ライト、親父、俺はもう行くわ。じゃあな」
ブルートさんはそう言って、踵を返す。
「そうだ、ちょっと待て」
「ん?何だ?」
フォルジュロンさんに呼び止められて、ブルートさんは振り返る。フォルジュロンさんは奥に行って、何かを取って来た。
「ほらよ」
そう言ってブルートさんに投げ渡す。
「これって…魔鋼鉄の籠手じゃねえか!?」
「小僧、お前にもだ」
フォルジュロンさんに渡されたのは、左右二個ずつの籠手だった。
「あの娘にも渡してやれ。騎士になったお前達への餞別だ」
そう言うなり、フォルジュロンさんは腕を組んで俯いた。




