Ep:61 教官
僕とエルは叙任を終え、舞台袖に戻る。そこには、スィルヴァさんが待っていた。
「戻ったか、これでお前達の叙任は終了だ。これから本部に戻って――どうした、その汗は」
「え…?」
スィルヴァさんは僕達を見て眉間に皺を寄せる。
「大衆の前、陛下の前で緊張したのか…?いや、それは無いな…裁判の時、何も感じていなかったお前達が、今この場で緊張などする筈が無い。何があった…?」
僕とエルは、さっき起きた事を話す。順番に話して気付いたのは、僕とエルが体験したのが、殆ど同じ事だった事。
「その痣や眼に関係があるのか…?鏡写しの様なお前達の姿に」
「分からない…でも、何か凄く嫌な予感がする。王様に、この力を正義の為に振るうなら、何も言わないって言われた瞬間、真っ暗な空間に居て…」
「そうか…しかし、今は時間がない。その力の研究や検証は本部に戻ってからするとしよう。それと、これを返しておく」
そう言ってスィルヴァさんは僕に細長い物を投げ渡してくる。
「これって…!」
それは、ヴェルインさんと一緒にリテユスの屋敷に突入した時の剣だった。確かに捕まってから返してもらってなかった。
「返すのが遅れてすまなかった。お前の疑いは既に晴れていると言うのにな…」
「あ、ありがとうございます…!」
「少し落ち着いたようだな。他の新人達は既に本部の宿舎に向かっている筈だ。本部に向かうぞ」
「は、はい…!」
僕とエルは同時に言った。
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同時刻、王立リッター騎士養成学園にて。
「誰がこんな事を…完全に死んでいる…」
「早く銀鷲騎士団を呼べ!」
心臓を一突きされた遺体に、その背丈に見合う大きさの布を被せる。遺体の周囲には本や資料が散乱している。
「何でグラマー先生が…」
遺体のすぐ近くに、レンズの割れた眼鏡が落ちていた。
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僕達は銀鷲騎士団の本部に来ていた。
「今、普通の新人達は本部の講習室で騎士団の情報を頭に叩きこんでいる筈だ。お前達にも銀鷲騎士団の基本情報を教えてやる」
「はい」
「我が銀鷲騎士団は、この国全土の治安維持を目的とした騎士団だ。設立してから日は浅いが、先王陛下の御厚意でできた騎士団だ。そして、そんな我が騎士団がお前達の指導役として選んだのが――」
その時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「丁度来たな。入って良いぞ」
「失礼します」
そう言って入って来たのは屈強な男の人だった。
「お前達の指導役、ダギル中尉だ」
「久しぶりだな。いや、そうでもないか」
「ダギルさん!」
僕は思わず声に出してしまった。




