Ep:56 預金
「俺はフォルジュロンだ。武器が欲しけりゃ金を持ってきな」
お店の店主でありドワーフの鍛冶師のフォルジュロンさんが言う。
「そうだな…じゃあ俺はこの鉄の片手剣を二本買うか」
「毎度。合計銀貨5枚だ」
金属が擦れる音がして、ブルートさんは銀貨を5枚渡す。今買ったばかりの剣二本を背中に交差させるように紐で括り付ける。
「良し、これで良いかな」
ブルートさんは両腕で剣の柄を持って、少しだけ鞘から出して見せる。
「お前らは買わないのか?」
ブルートさんは振り返って僕とエルを順番に見て言う。
「僕達はお金が無いから…」
「そうなのか?王宮から金が来てるって聞いたけど…」
「え?」
僕とエルは同時に言う。学校の費用は支払われるっていうのは聞いてたけど、それ以外は知らない…
「レーラールに聞けば分かるんじゃないか?確か王宮からの仕送りが学校に貯まってるって話だぜ?」
「本当に!?」
エルが僕達の所に駆け寄って来て言う。
「一旦戻って聞きに行くか」
僕達はフォルジュロンさんにお礼を言って、お店を後にした。
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「あるよ」
フォルジュロンさんのお店から戻って来た僕達の質問に、レーラール先生はそう答える。
「え?」
「あるよ、言って無かったっけ?」
思わず声を漏らす僕に、レーラール先生はもう一度言う。
「き、聞いて無いです」
「そうだったっけ?まぁ良いや。今は学校の金庫にあるけど、騎士団に入団したら王都の銀行にでも預けたら?」
平然と言うレーラール先生に呆気にとられながら、僕は話を聞く。
「君達の就学費用は国が払ってくれてるけど、ほら、食堂で毎日食事してるでしょ?あれは就学費用とは別で、君達のお金として毎月の仕送り金から減算去れる予定だったんだよ。まぁ、一ヶ月もしない内に騎士団への入団が決まったから、今までの分が引かれると思うけど」
あははと笑いながらレーラール先生は言う。
「事が事だったから随分と早い出世だったね。これはこの学校の自慢にもなるかも知れないな」
「と、とにかく、ライトとエルの分の金はあるんだな?」
ブルートさんの言葉にレーラール先生は頷く。
「じゃあさっさと取って行こうぜ」
そう言ってブルートさんは職員室を出ようとする。僕とエルもそれに続いて出ようとする。
「あ、忘れる所だった」
その時、レーラール先生が何かを思い出す。
「陛下が、一週間後に返答を聞きたいそうだ。それまでに考えておいてね」
「そんな重要な事忘れんじゃねえぞ!」
「ごめんごめん。じゃ、また明日ね」
小さく手を振りながら僕達を見送るレーラール先生を見ながら、僕は苦笑して職員室を出た。




