Ep:55 銅金
僕はお店の中を見回す。やっぱり沢山の種類がある…一個一個確認しても、同じ物が一つも無い。ロングソードにショートソードとダガー、アックスにスピアなど一通りの白兵武器は大体揃っている。僕はその中に白みを帯びた刃の剣を見つけた。
「それはアダマンタイトの剣だな…」
僕がその剣を見ていたら、突然声を掛けられる。アダマンタイト…授業で一度だけやった事がある。ダイヤモンドよりも硬いけど、石なのか金属なのか分からない素材。そう考えながら僕は隣の剣に視線を移す。
「そっちは魔鋼鉄だ…」
魔鋼鉄…魔力の濃い土地の鉄が、周囲の魔力を吸収した物。人体から流れる魔力の伝導率が高い上に、魔力を帯びた事によって硬度が増して、武器に適した素材…
「……小僧。その目、素材に詳しいのか…?」
「え?」
突然そんな事を言われ、よく分からないまま振り返る。
「いや、僕は授業で習っただけで…」
「…授業…リッターの生徒か…」
僕は店主の人に睨まれている事に気付き、エルとブルートさんを見る。でも二人共、武器を見る事に夢中になって気付いて無い。僕達以外にお客さんは居ないし…
「とっておきを見せてやる。待ってろ…」
そう言って店主の人はカウンターのすぐ後ろにあるカーテンの奥に引っ込んでいく。
「どうした?」
ブルートさんも、流石に気付いたみたいで僕の隣に来る。僕はさっきまでの事を簡潔に伝える。
「マジか!?これがアダマンタイト!?」
ブルートさんは凄い勢いで剣に飛びつく。そして、ゆっくりと刃の横の部分を指でなぞる。
「小僧。持って来たぞ」
いつの間にかカウンターに戻って来ていた店主の人が、大事そうに抱えている白い布に包まれた細長い物を開く。すると、一振りの剣が出て来た。その刃は、何とも言い難い色に輝いていた。
「これって銅金か?」
「銅金だと…?何の事だ…?これはオリハルコンだ…」
「やっぱり銅金じゃねえか」
「まぁ良い…どうだ小僧。オリハルコンの剣は」
オリハルコン…この国の一か所からしか入手できない希少金属。その硬さはミスリルやアダマンタイトを優に超える…
「これが…」
僕は思わず呟いてしまう。
「でも、銅金…オリハルコンってドワーフの鍛冶師しか打てないんじゃ…?」
そう言ってブルートさんは店主の人を見る。
「見ての通りドワーフだ…何か問題でもあるか…?」
そう言って店主の人は手を広げる。確かに座ってる椅子はカウンターと殆ど同じ高さまであるし、背丈も僕達の三分の二くらいしか無い。
「ええ!?」
僕はブルートさんは揃って大声を上げてしまった。その瞬間、後ろから悲鳴が聞こえた。
「きゃあっ!」
驚いて振り返ると、エルが尻餅をついてこちらを見ていた。
「いきなり大声出さないでよ、もう!」
エルは栗鼠みたいに頬を膨らませて怒った。それを見て、僕とブルートさんは笑った。それを見て店主のドワーフさんは鼻で息を吐いた。




