Ep:51 招集
僕達は取り敢えずの事後処理を終えて、寮の部屋に戻った。特にする事も無く、外も雨が降り出したから、昨日までの授業の復習をエルと二人でしていた。
「お前ら、ようやく一息つけるってのに、よく勉強なんてしてられるな」
ブルートさんが僕達に向かって言う。
「少しでも早く普通の生活をしたいから、こういう勉強は大事なんだ」
「そんなもんかね…」
ブルートさんの言葉に、エルも頷く。
「そういや、前から聞きたかったんだがよ、お前らってここに来る前は何してたんだ?」
ブルートさんの突然の質問に思わず言葉が詰まってしまう。
「ほらよ、普通の生活がしたいって…何か不味い事でも聞いちまったのか、俺…?」
別に、ブルートさんが悪い訳じゃ無い。見た目だけで僕達を忌み子として牢屋に居れた町の人や、僕達を買って捕まえようとしたリテユスの方が何倍も悪いから…
「悪ぃ…言いたくないなら良い…」
「……ううん…話すよ。ブルートからだけ昔の事を聞く訳にもいかないから。良いよね、エル…?」
「うん…」
僕は、僕とエルが忌み子として牢屋に入れられ、奴隷に出された事や、リテユスに捕まりそうになった事、この学校に入るまで経緯をブルートさんに話した。その間、ブルートさんは必要以上に口を挿まず、真剣に聞いてくれた。
「…そんな事があったんだな…全部理解できるとも言わないが、辛かったんだな…」
ブルートさんは、普段の雰囲気に似合わず、俯いて細々と言う。
「この力の所為で、英雄教、もしくはそれに関連するところに狙われてる。今日のゴブリンも、僕達を狙ったものだった…」
僕達の部屋は、外の雑音が聞こえるほどに静かになった。その時、廊下を誰かが走る音が聞こえた。
「何だ?何か急いでるみたいだが…」
ブルートさんが言う。確かに途轍もなく慌ててる様な足音だ…その足音は僕達の部屋の前まで来て止まった。強めのノックの音がする。次の瞬間、部屋の扉が開け放たれた。
「ライト君!ブルート!大変だ!」
そこに居たのはレーラール先生だった。
「何だよいきなり…教師のくせに廊下を走りやがって」
ブルートさんは早々に悪態をつく。
「そんな事言ってられないよ!王宮から二人に呼び出しが!」
「ええ!?」
僕達三人は異口同音で声を上げて驚く。
「おい、聞き間違いじゃ無いよな…」
「聞き間違いじゃ無いよ!早く準備して!」
レーラール先生は逸る気持ちを抑える様に身振り手振りを大仰にする。
「ちょちょ、ちょっと待て!何でその通告が学校にじゃ無くてアンタに何だ!?」
ブルートさんはレーラール先生の持つ封筒を指差しながら言う。確かにその宛名は、学校名じゃ無くてレーラール先生になってる。
「あぁ、僕はこれでもヴァロノス家の男爵だからね。言って無かったっけ?」
ブルートさんは、レーラール先生がまさかの貴族だった事に驚き、あんぐりと口を開けて唖然としていた。
「兎に角!急いで王宮に出発するよ!」
レーラール先生はそう言って、扉を閉めようとする。
「あ、あの…!私は…?」
エルが小さく手を上げて言う。
「ついて来て!」
エルはその言葉に笑った。




