Ep:48 親玉
僕とブルートさんは眼前に居るゴブリンロードを見据える。ゴブリンロードも僕達に気付いている。お互いに様子を見ている硬直状態だった。長らく沈黙が続く。それを破ったのは、他でも無いゴブリンロードだった。
「人間…悪魔ノ子…イヤ…魔王カ…?」
ゴブリンロードは低い声色で呟く。どういう意味かは分からない。でも、何でか僕の事を言っている様に思えた。
「洒落臭え!こっちから行くぞ!」
ブルートさんは走る為に鞘にしまっていた剣を抜き、ゴブリンロードに肉薄する。ブルートさんは僕達より大きな体に向けて斬り付ける。
「小賢シイ…!」
ゴブリンロードはそう言うと、何処からともなく木製の杖を取り出す。その杖はゴブリンロード用の寸法で、人の腕程の太さがあった。ゴブリンロードはそれをブルートさんに振るう。
「くッ…!?」
ブルートさんは、既の所でそれを躱し、後ろに飛び退く。地面の石畳が割れ、破片が飛び散る。
「ブルート!」
ブルートさんは振り返る。僕は持っていた剣を鞘ごと投げ渡した。剣を抜き、鞘を投げ捨て構える。
「全くよ、お前の方が強いだろうが!」
ブルートさんは再びゴブリンロードに肉薄した。すると、今度は杖を地面に強くぶつける。
カァン!
甲高い木の音が響く。更に、地面に垂直になっている杖の上方に、魔力が集中し始めた。
「おらおらあ!!」
ブルートさんは怒涛の勢いで二本の剣を振り抜く。しかし、ゴブリンロードには傷一つ付かなかった。
「なっ…!?おわッ!?」
それ所か、逆にブルートさんが弾き飛ばされる。その時、ゴブリンロードの周りが、球体状に淡く輝いているのが見えた。
「魔力防壁…」
僕は思わず呟いてしまう。前にリテユスがエルを捕まえていた時に使っていた壁。目には見えない魔力の力で物理的な攻撃を殆ど無効化する。
「我ノ目的ハ悪魔ノ子ノ回収…ソレ以外ハ眼中ニ無イ…!」
そう言ってゴブリンロードは僕を睨み付ける。やっぱり僕の事だったんだ…って事は――
「エルが危ない!」
「何だって!?」
エルも僕と似たような力を持ってる。その証拠に、リテユスは僕達を捕まえようとしてた…だから、もしもこれがあの英雄教の仕業なら、エルも確実に狙われる…!
「どうすれば…!」
ブルートさんはゴブリンロードへの警戒心を強め、睨みながら呟く。
「多分、こいつを倒せば…」
僕が言いかけた時、四方の上の方から色々な属性の魔法弾が飛んで来た。
「何だ!?」
僕は咄嗟に躱し、ブルートさんは剣で弾いて言う。広場の周りの家の、屋根の上を見ると、そこには普通のゴブリンと同じ程の背丈の、王冠を無くしたゴブリンロードの様なゴブリンの姿が幾つもあった。
「コイツら、昨日の授業には出て無いシャーマンだ!ロードに魔法を教わって――」
ブルートさんが言い終わる前に、ゴブリンシャーマンの魔法弾が繰り出される。更に、ゴブリンロードは杖を振り下ろしてくる。目の前にはゴブリンロード。四方の上にはゴブリンシャーマン。まさしく絶体絶命の状況だった。




