Ep:42 水晶
僕とエル、ブルートさんの三人は、学校の廊下を魔術教室に向かって歩いていた。
「おっ!着いたぜ。ここは馬鹿みたいに広いからな…」
ブルートさんが呆れながら言う。僕は教室の扉をノックした。
「はーい」
中から女の人の声が聞こえる。そして出て来たのは、銀縁の眼鏡を掛けて、紺藍の髪の若い先生だった。
「あら、もしかして君達がこの前飛び入学して来たって言う…?」
僕とエルは頷く。
「と、何でブルートがここに…?」
「良いだろ別に…今の所コイツらと一番親しいのは俺なんだよ」
「……嘘でしょ?」
先生は僕とエルに視線を向ける。
「ほんとだよ」
エルが僕の隣で言う。それを聞くと先生は顔を歪めた。
「まぁいっか。私はグラマーよ。君達が入学してから一度も魔術の授業が無かったから、会う機会が無かったのね…」
「グラマー先生は、何でブルートの事を知ってるの?」
「何でって、かなりの問題児だからねぇ…?」
そう言ってグラマー先生はブルートさんを見て若気る。それに気付いたブルートさんは小さく舌打ちをした。
「まぁ、取り敢えず入って」
そう言われて僕達は魔術教室の中に入る。そこは案外、普通の教室とあまり変わらなかった。違う所は黒板に何枚もの紙が貼ってあったり、幾つかの液体が入った瓶が並んでいた事。
「好きな所に座ってね。それで、今日は何の用で来たの?」
「コイツらの魔力適正を調べてやってくれ」
「了解、ちょっと待っててね~」
そう言ってグラマー先生は何かを取りに準備室に入って行く。
戻ってきて持っていたのは、大きな透明な玉だった。
「これは水晶玉って言ってね、手を触れて魔力を流すと、その人の魔力の適性が分かる魔道具なの。諸説は有るけど、これが一番最初の魔道具だって言われてるの」
「へぇ…凄いんだ…」
エルが呟く。その隣で、ブルートさんが水晶玉に触れて魔力を流す。すると、水晶玉の中に小さな赤い光が映し出された。
「こんな風にやると、水晶玉が光る。これが火属性の光だ」
「ちょっと、勝手にやらないでよ」
「悪い悪い」
「じゃあ、まずはライト君から」
僕はさっき見たとおりに水晶玉に触れて魔力を流す。すると、一瞬白く光ったと思ったら、その瞬間に水晶玉が黒ずみ、弾け飛んだ。
バリィィン!
「きゃあっ!」
グラマー先生が一番驚く。ブルートさんが大きめの破片を拾うと、それは黒く染まっている。
「黒、かこれ…?どっちかって言うと、茶色がかって見えるけど…」
「本当ね…こんな事が起こったのは初めて…」
ブルーさんとグラマー先生の会話を聞いていると、隣でエルが困惑してるのに気付いた。同じくグラマー先生もそれに気付いて言う。
「あぁ!ちょっと待ってて、代わりのを持ってくるから」
そう言ってグラマー先生は準備室からさっきより少し小さい水晶玉を持って来た。それにエルが触れて魔力を流す。
パリィン!
結果は僕の時と殆ど同じ、黒ずんで割れた。
「あわわわわ…!」
「おい!不良品なんじゃないか!?」
「そんな訳無いでしょ!これは王宮から卸してるのよ!」
その言葉にブルートさんは黙った。




