Ep:31 翌日
暫く部屋で、何も出来ずに待っていると、扉がノックされた。
「御召し物の準備が出来ました。宜しいでしょうか?」
さっきの執事の人の声。僕は扉を開けた。その手には僕なんかには似合わない様な豪華な服がある。
「おっと…御召し物の前に御入浴ですね。御身体が煤だらけで御座います。ささ、こちらへ」
そう言って執事の人は、手で進行方向を指す。僕は部屋の外に出て、執事の人に付いて行った。花瓶や絵画が並ぶ廊下を歩き、一つの部屋に着いた。中は、広くて豪華な窓の付いている部屋の真ん中に、見知らぬ桶に水が張ってあるものが置いてあった。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言って執事の人は部屋の外に出て行った。
「え…?ちょっと…!」
僕は慌てて部屋の外に出る。
「おや?御入浴も御存知ありませんか?では、私が御教えしましょう」
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その後、僕は『入浴』を楽しんだ。地下牢ではせいぜい水浴びだったのが、ここではあったかいお湯を使った浴槽の中に浸かって体を綺麗にする。
出た後は、布で体や頭を拭いて乾かす。
「気持ち良かった!」
僕は執事の人に言う。
「それは良かったです」
執事の人は微笑んで言う。
「さて、御召し物です。この様子だと…私が着せていきますね」
そう言って執事の人は素早くテキパキと僕に服を着させてくれる。終わった頃には、僕の恰好は見違える程に変わっていた。
お洒落で着心地の良い白いシャツと黒いベストに、紅い胸飾り。朱赤のキュロットに、淡い黄緑色のコート。黒くて長い靴下に、同じく黒い革靴を履いて完了。各服の名前は、着させて貰いながら執事の人に教えて貰った。
執事の人は、顎に手を当てて僕の事をまじまじと見る。そして、顔を上げて言った。
「御似合いで御座います!」
その顔はとても笑っていた。
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次の日の朝、僕は明るい光で目を覚ます。大きなベッドの上に座り、目を擦る。丁度その時、部屋の扉がノックされた。
「ライト様、御目覚め下さい」
「あ、はい!」
僕は扉の外に向かって返事をする。すると、扉が開き、昨日と同じ執事の人が入って来た。昨日はあの後、美味しいご飯を食べてから部屋に戻ってすぐに寝た。そんな事も無いんだけど、この何日かちゃんと寝れて無かった気がしたから、ぐっすり眠れた。
「朝食の準備が出来て居ります。御着替えをしてから行きましょう」
そう言って執事の人は、手に持った服を置いて、一番上の服に手を伸ばす。それを他所に、僕は置かれた服を手に取って、自分から着た。
「おや…?一日で着れる様に…?」
執事の人は心底不思議そうに言った。僕が靴まで履き終えると、執事の人は昨日と同じ様に僕をまじまじと見る。
「間違い一つ無く着ていらっしゃる…これはお見事です…!」
僕は両手を広げて自分の服を見た。執事の人は柔らかい拍手を僕にした。




