Ep:30 屋敷 *
僕達は大きな屋敷の前に着いた。馬車から覗く屋敷は、クレイ家の屋敷なんか比じゃない程の大豪邸。
「うわぁ……!」
僕とエルは思わず声を漏らす。
大きな鉄柵の門を支える門柱の上には、大きな鷲の石像があった。
「ここが銀鷲騎士団の本部、及び騎士達の寮だ」
「大きい……」
「まぁな。それでも、王宮と比べれば三分の一程度の広さなんだがな」
門が音を立てて開き、鉄柵の奥の建物がしっかりと見える様になる。
「入るぞ」
四人乗りの馬車がその敷地内に入って行く。
王都?の道も綺麗に舗装された石畳だったけど、それが建物の前まで続いている。
石畳の道の真ん中には左右に噴水があり、その周りを避ける様に道が続き生け垣が囲っている。
地下牢に居た時には全く想像しなかった屋敷が、今は目の前にある。
「降りろ」
ダギルさんが馬車の扉を開けて言う。
馬車の窓と言う限られた範囲から見ていた建物は、視界を全部埋め尽くす程の大きさを誇っていた。
僕達が屋敷の扉の前に立つと同時に重厚な木の扉が開く。その奥には、黒い燕尾服を身に着けた執事と、黒いスカートに白いエプロンを身に着けた使用人が数人ずつ待って居た。
「お待ちしておりました。陛下の使いの者から事情は聞いております。どうぞ、お上がり下さい」
そう言って執事たちは大仰にお辞儀をする。
「ほら、上がれ」
ダギルさんに押されるように、僕達は建物の中に入って行く。
白を基調とした壁。床にはクレイ家の屋敷とは反対の豪華な青い絨毯が敷かれていた。
「こちらがライト様のお部屋。その隣がエル様のお部屋となっております。お召し物をご用意しますので、お部屋でお待ち下さい」
僕は言われるがままに部屋に入って行く。
「広い……!」
想像よりもうんと大きい部屋だった。
部屋の真ん中には、僕だけじゃ足りないくらいの大きな机があり、更にその奥に僕の体の三倍程のベッドがある。
部屋の全てが綺麗に整えられていた。
「ここで一週間……?」
「そうだ。ここで一週間過ごす」
僕は後ろに居たダギルさんに不安の視線を送る。
「何だ、性に合わないってか? 大丈夫だ、俺だって最初はそう感じたからな。それに、そんなに厳しい所じゃない。いつも通りしてれば良いんだよ」
そう言ってダギルさんは部屋を出て行った。僕だけが部屋に残される。
「ってか俺、まるで保護者みたいだな……」
部屋の外から、そんな声が聞こえて来た。




