Ep:28 判決 *
「英雄教?」
僕は思わず口に出してしまった。
「あ、あぁ。英雄教は、古に魔王を討ち倒したとされる英雄、または勇者と呼ばれる者を崇める宗教の事だ。この国の主な宗教でもある。だが、そのペンダントが何故……」
「ヴェルインさんはこれを僕に渡す時、"この教団が僕達の力を狙っている"って言ってた……! だからエルがリテユス――伯爵に捕まったんだ!」
僕は大きな声で言う。また他の人がざわつく。
その時、黒い服に身を包んだ男の人ガベルさんが口を開いた。
「静粛に!」
その一喝で周りが一瞬にして静まり返る。
「国王陛下。この裁判は、この国の闇を見ているのかも知れません……」
「あぁ……ライトよ、そなたは何故あの街に行ったのだ……? 聞いた話によると、元は男爵家が治める小さな町に居たと聞くが……」
「僕は、あの街で奴隷に出された……リテユス伯爵が僕達を買ったから、あの街に運ばれたんだ」
「買った、だと……?」
「済まぬが皆の者、この裁判はこれにて閉廷とする! ガベルよ、判決を下せ」
「ライト、エル、お前達を無罪とする! この判決は、これより覆る事は無い!」
ガベルさんはそう言い、手に持っていた小さな木槌を二回鳴らした。
「公平な判決は下された! 解散とする!」
王様が言い、周りに居た人達が続々と立ち去って行く。僕達はその場に残された。
裁判が終わり続々と去って行く群衆の中、肩まで伸ばした茶髪の小柄な女が居た。
彼女は銀色の軽鎧を身に付けているが、それが無ければ少女と見間違える程の体格だった。彼女は城の廊下を奥へと進む。
「間抜けだな、スィルヴァ」
廊下の分岐する曲がり角の陰に、屈強な金の短髪の男が腕を組んで立って居る。
男は、スィルヴァと呼ばれた女と反対に、頭以外を金の甲冑で覆っている。
「言いたい事はそれだけか? レオン=ゴルト」
スィルヴァは、体格からは想像できない凛々しい声でレオンと呼んだ男に聞く。
「先王陛下に設立を命じられておきながら貴様ら銀鷲騎士団は有罪にする事も叶わないのか? そもそも、一夜を過ごす予定だった野営地でヘルハウンド如きに全体の半数以上の怪我人を出し遅れを生じさせた。国王陛下が寛大な御方でなければ、今日の裁判も……同じ団長として失望した」
レオンはスィルヴァを罵る。
「そちらこそこの程度で罵りに来るなど、その国王陛下と違い寛大では無いのだな。やはり黄金獅子騎士団の者が短気だと言うのは本当なのかもな」
「……覚えておけ、アードラー=スィルヴァ……!」
レオンはそう言って、黄金の鎧を鳴らしながらスィルヴァ――いや、アードラーとは別の方向へと廊下を進んで行った。




