Ep:25 悪夢 *
僕とエルは、銀鷲騎士団の野営地で休息を取る。
別々の天幕だし天幕の前に警備も付いている。外は死んでいった騎士達の遺体の処理で忙しなく動いているのが分かった。
やがて日が暮れ、僕は早々と眠りについた。
ここは何処だろう……? 真っ暗で何も見えない……。
『愚カナ人間メ……! 我ハ――』
声が聞こえた瞬間、僕の目の前に大量の青白い手が現れた。
その手は、僕の体を押さえつけて来る。
「――うぅ……!」
叫びたいのに叫べない……! 声が出ない……! それなのに手の力は次第に強くなってくる。
『憎イ! 憎イ憎イ憎イィッ!』
加速度的に早くなっていく言葉と同時に、手の締め付けが一段と強くなった――。
その瞬間、僕は眠りから覚める。
「うわぁぁぁっ!?」
いつの間にか大声を上げて起き上がっていた。
「何があった!?」
外に居た警備の騎士達が天幕の中に入って来る。
その手には身の丈程もある槍が握られていた。
警戒して入って来たけど、僕の様子を見て状況を理解したみたいだ……。
「悪夢でも見たのか……?」
騎士の人の問いに僕は答える。
「うん……怖かった、内容は――」
言いかけた時、僕は夢の内容を全く覚えていない事に気付いた。
凄く怖かったのは覚えているけど……。
「兎に角、何も無いんだな……?」
僕が騎士の人に頷きかけた時――。
「きゃあぁぁぁっ!?」
どこかの天幕で誰かの悲鳴が聞こえた。
声色的にはエルに似ている……。
「今度は何だ!?」
騎士達は慌てて別の天幕に移動する。
エルじゃ無いかと不安になったけど、騎士の人が向かうなら大丈夫だ……。
僕は汗で張り付いた前髪を手で避けて、もう一度眠りについた。
翌朝、僕とエルは馬車に乗せられる。
周りを見て、僕の頭に疑問が一つ浮かぶ。
騎士の数が元に近い数にまで戻っている……。
僕が周りを見回していると、ダギルさんが来て言った。
「お前は知らないようだが、我が騎士団には腕利きの回復術師も有している。彼らに掛かれば時間は掛かるが、ほとんどの騎士の傷を回復できる。だが、失った血は元に戻らない。それ故回復したとしても最初から万全という訳にはいかないが……」
ダギルさんは俯いて言った。
僕とエルは別々の馬車に乗せられる。
「知ってるか? 昨晩の二つの悲鳴、どちらも輸送中の子供の物だったらしい。同時に悪夢をみるなんてな」
そんな騎士の会話を聞きながら僕は座る。
全ての準備が整った。一日の予定が二日になったけど、無事に馬車は動き出した。




