Ep:23 襲撃 *
明朝、僕は辺りの騒がしさで目を覚ました。
「総員! 攻撃開始!」
誰かの号令。
僕は起き上がり天幕の外を覗いて見る。そこでは、沢山の兵士達が右へ左へ駆け回っていた。
「何があったの……?」
外に警備を張っていた兵士の一人が、僕の声に気付いて天幕の入り口を開く。
「この中から出るんじゃないぞ……!」
その瞬間――。
「わあぁぁ!!」
兵士達の叫び声が響き渡った。
「不味いぞ……! もう一人の天幕が!」
気付いた時には既に飛び出していた。僕は警備の兵士の剣を抜き取って走った。
「(エルの天幕が……!)」
僕はエルの天幕を探して走る。
すると一つだけボロボロの天幕を見つけた。その布は、何かに引き裂かれていた。
「ガァルルッ!」
何かの呻き声が聞こえた。
一人の兵士が黒い毛をした大きな動物に飛び掛かられていた。
僕はその動物の体に剣を振る。
「キャンッ!」
動物は甲高い声を上げて弾き飛ばされる。そして動かなくなった。
「凄い……不意打ちとは言えヘルハウンドを一撃で……!」
襲われそうになっていた兵士は聞いた事の無い名前を出す。
「エルはどこ?!」
僕は兵士の人に聞いた。
「あ、安全な場所に避難している筈だ!」
「これは何?!」
僕はさっきの動物を指差して言う。
「これはヘルハウンドという魔獣だ! 大群が襲って来たんだ!」
「エルの所に案内して!」
「わ、分かった!」
兵士の人について行く。周りでは、沢山のヘルハウンドが兵士達を襲っていた。
「ここだ!」
兵士の人が指差したのは、陣地の中央にある大きな天幕だった。中に入ると、屈強な兵士とエルが居る。
「エル!」
僕はエルに向かって走った。
けど、その前に大きな兵士が立ちはだかる。
「剣を置け……!」
「兵士さん、退いて!」
「兵士では無い! 我々は騎士だ!」
僕はその大声に驚いてその顔を見る。
その目は鋭く僕の事を睨んでいた。僕は後ろに下がって剣を置く。
「それで良い……」
「ダギル中尉! 彼は私の事を守って下さいました!」
僕の後ろからさっきの兵士――騎士の人が言う。
「何……? それは本当か?」
ダギルと呼ばれた人は、僕を向いて聞いて来る。僕は恐る恐る頷いた。
「そうか、先の無礼は詫びよう。被疑者だが我が部下を守ってくれた事、感謝する」
ダギルさんはそう言って頭を下げた。
「今我々はヘルハウンドの大群に襲われている。それではお前達の輸送に支障が出る。殲滅が済むまで暫く待ってもらいたい」
「はい……」
特に反発する理由も無いし僕が戦う理由も無い。
だから僕は、天幕の中で事が落ち着くのを待った。




