Ep:21 恐怖 *
静かな地下水道を、屋敷に火を放った張本人――リテユスが血を垂らしながら歩く。
「はぁ……はぁ……ここまで来れば――」
リテユスの言葉が詰まる。
その視線の先に人影が見えたからだ。人影は段々とリテユスの方へと近づいて来る。
リテユスはその人物に見覚えがあった。
「あ、貴方は……!」
ゆっくりと近づいて来る人物は、やがて微かな松明の光に晒されその顔が垣間見える。
それは、濃紺の髪の凛とした男だった。
男の糸の様な目は確かにリテユスを捉えている。リテユスは、その視線に怖気付いた。
「ここまで来れば、何だい?」
男は優しい声でリテユスに聞く。
「子供を買えとは言ったけれど、勝手に目覚めさせるとは……」
「い、いえ……! あれは偶然起きた――」
「言い訳は聞きたくない」
被せる様に放たれた男の言葉は、優しくもあり、そしてとても冷徹だった。
より一層リテユスを恐怖させるには十分すぎる程に……。
「そ、そう言う訳ではございま――」
その瞬間鮮血が宙を舞う。
男はリテユスの背後に音も無く移動し、血を掃った剣を鞘に納めた。
「まぁ良いさ。彼らに魔王が宿っている事が確認できた……折角の同志だが、殺すだけに留めておくか……」
男は音も無く消え去り、水路にリテユスの首が落ちる。
リテユスの首は水路を流れて行った。
気が付くと僕は牢屋に居た。
でも、あの町の地下牢とは違う……壁に付いている格子戸から太陽の光が入ってきている。
「起きたか」
誰かの声がしてその方向を見ると、そこには全身甲冑を着た兵士が立って居た。
「ここは……?」
僕は聞く。
「ここは我が騎士団の牢獄だ。お前達にはクレイ家の屋敷に火を放った嫌疑が掛けられている」
我が騎士団……? 嫌疑……? それにお前達って……。
分からない事だらけだ……。
すると、それを悟った様に兵士の人が話を進める。
「先日、クレイ家の屋敷が火災に遭ったのは知っているな……?」
僕は頷く。
「お前が屋敷に火を放ったのでは無いかと、王都の大臣が仰っている。クレイ家は王家との繋がりが深い家系でもあった」
「僕は火なんか付けて無い!」
鉄格子を掴みながら叫ぶ。
「格子に触れるな!」
僕はその怒号に驚いて鉄格子から手を離す。
手を離したのを確認すると、兵士の人が話を続けた。
「あくまでも可能性の話だ。そしてその調査をしているのが、我らが『銀鷲騎士団』だ」
銀鷲騎士団……聞いた事が無い……。
「ねえ、エルは……? エルもここに居るの……?!」
「エル……? あの娘の事か。別の牢だが、この敷地内には居る。安心しろ」
「そうなんだ……」
良かった……でも、まだ屋敷に火を付けた疑いが残ってる……。
解決するまで会えないと思い、僕は思わず俯いた。




