Ep:16 目的 *
僕は地下へと下りる床に乗っている。
段々と下がって行く昇降機からは微かに魔力を感じる。でも誰かが動かしている訳では無さそう。
暫く下りていると、突然視界が開けた。広い空間の端を僕が乗っている床は支えも無く下がっている。
地下空間の奥の方に、鎖の様な物が垂れさがっているのが見えた。その鎖は何かを吊っている……。
「あれは……エル!」
足に痣を移動させて下がる床から飛び降りる。
僕は僅か二歩でエルの前まで移動した。
エルの四肢には鎖が繋がっていて、空中に吊り上げられている。
エルの意識は無い……剣を抜き、魔力を流して鎖を切ろうとした瞬間、目の前を何かが横切った。
咄嗟にそれが飛んで来た方を見る。
「そこまでだ、悪魔の子よ」
「クレイ家の……!」
「間違ってはいないが、私にはリテユスと言う名前がある……そして、私こそが貴様の所有者だ!」
「所有者……?」
僕は眉間にしわを寄せて、リテユスと名乗った男に向かって呟く。
「そうだ。貴様らを買ったのは私だ。よって、貴様らの所有権は私にある!」
「買った……じゃあ! 最初からこの為に僕達を?!」
僕はエルを指差して言う。
「勿論だ。それ以外に貴様らがこの国で行える事など無い」
僕はその言葉を聞いて歯を食い縛り、鎖を切る為に剣に魔力を流して振った。
すると、エルの周りが球体の様な形に光り僕の剣が弾き返される。
「何をしたって無駄だ。そこには高度な魔力防壁を施してある。貴様には手を出せない」
リテユスは癪に障る笑みを浮かべている。
そしてこちらに向かってゆっくりと歩き出した。
「私達の目的の為に貴様の力が必要不可欠だった。だからこそ我が家の財力を使い、高値で貴様らを買ったのだ。あの町の者達は喜んで貴様らを差し出したぞ?」
確かに買い手は貴族だと言っていたし、高値で売れたからと喜んでもいた……。
「貴様らはそれほどまでに忌み嫌われているのだよ!」
「……確かに、僕達は嫌われてるかも知れない……でもあのパン屋さんや、スワードさん――ううん、ヴェルインさんは僕達を見捨てなかった!」
「確かに貴様らを見捨てない者も居るのは事実だ。だが、あの女はこの街の領主に背いた罪で死刑! ヴェルインとて、貴様がこの襲撃に使えると思ったからに過ぎぬだろう!」
リテユスは声を荒げて掌に魔力を集中させる。
そこに水の球が現れて、僕に向かって放った。
「くっ……!」
僕は剣でそれを弾いて飛び散らせる。でもリテユスは、僕に向かって水の球を連続で放って来た。流石にこれじゃ限が無い……!
一旦エルから離れてリテユスの意識を逸らす。
そして僕は痣で右腕を包み、剣を思い切り横に振った。
僕の思惑通り空気の斬撃が飛び、水の球を全て蹴散らす。
でもこれだけが目的じゃ無い……真っ直ぐに飛んで行った空気の斬撃は、エルを吊るす鎖を破壊した。
「何!?」
吊られていたエルは鎖が無くなって落下する。
瞬時に痣を右足に移して僕は跳躍し、エルの落下地点に移動してその体を受け止めた。
「な、何をした!」
リテユスは僕に向かって叫ぶ。
「魔力防壁は物理的、魔法的な攻撃を寄せ付けない」
「そ、それがどうした……?!」
「でも空気は通す。空気が通らなかったら、中のエルはとっくに死んじゃってる。だから空気の斬撃を飛ばして鎖を切ったんだよ」
「そ、そんな出鱈目がこの私に通用すると思っているのか!?」
リテユスは怒りを露わにして大声で叫んだ。




