Ep:136 学習
僕は時の止まった空間で、僕とトイフェルは対峙する。
「捕まえる、か…君はそれで良いのかい…?」
「え…?」
トイフェルは僕に弾き飛ばされて落とした剣を拾いながら言う。
「君は私が憎いんじゃないのかい?」
「それは…」
そう言われて口籠る。否定したかったけど、何故かできなかった。
「憎い…?」
僕は呟く。
「君は自分を罵り利用しようとした者達への怒りを、憎しみを知っている…さぁ、吐き出したまえ。その負の感情を…」
その言葉に、自分が自分でなくなるような気がした。
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僕は気が付くと真っ暗な空間に居た。
「また…」
僕は呟く。でも可笑しい。何故か魔王の声が聞こえない。
『君は…?』
突然聞こえたのは、魔王の声とは程遠い、透き通るような凛とした声だった。振り返ると、そこには一人の若い男が、境目の分からない地面に座っていた。
「誰…?」
『それはこっちの台詞だ…何故ここに人間が…?』
「人間…?ここは何処なの?」
『ここは私の意識の中だ。知識の神としての役目を全うする為に必要な場所だ』
「神…神ってあの神様…?」
『そうだが…何か問題があるのか…?』
「初めて会った…!」
『そうなのか?神と共に人間が暮らすのは当たり前の筈だが…』
「ところで、ここが貴方の意識の中で、知識のある場所だとしたら、何でこんなに暗いの?」
『分からない…いつしかここは暗黒に閉ざされ、私も出る事が出来なくなってしまった…こうなる少し前の出来事は覚えていないのだが、今のこの場所は、妙に気味が悪い…』
そう言って神様は周りを見回す。
「あの…!間違ってたらあれなんだけど…」
僕はそこで言葉に詰まる。
『どうした?私が答えられる事なら何でも言ってくれ』
「えっと…その…貴方が魔王なんですか…?」
『魔王…?なんだそれは…私は神ケントニスだが…魔王と一体何の事を言って――』
そこで神様、ケントニス様の言葉が止まる。
『魔王…そうだ…思い出した…!何故忘れていたんだ…邪な人間の所為で私は…!』
ケントニス様は頭を抑え、俯き言葉を捲し立てる。
『人間…私を貶めた存在…!英雄…!我を殺した存在…!』
そう言うケントニス様の髪は、金にも見える暗い茶色い長髪から、脱色し僕の様な白銀の髪になる。更に、右目の辺りから血の色にも似た痣の様な物がケントニス様の肌を覆って行く。着ていた衣服も神々しいものから禍々しいものへと変貌していった。
「神様…?」
僕は呟く。しかし、この言葉がケントニス様に届いている様子は無い。
『サぁ…殺戮の時間ダ…貴様ノ体を借リルぞ…!』
そう言ってケントニス様は僕に手を伸ばしてきた。
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「さぁ、御出座しか…魔王…!」
トイフェルは目の前のライトの痣が顔にまで伸び、その痣で爪が作られ、その目が紅く輝くのを見て言う。
「また会ったな、人間」
ライトでは無い異形が、ライトの声を使って流暢に喋る。
「我も学習した。不完全な状態では出きる事も限られる。だがこの子供の学習は早い。我もこの子供の技を使おうじゃないか」
そう言うとライト、否、魔王であり災厄の神ディザストはトイフェルに向かってショットの構えを取った。
「ショット」
ディザストが言うと、その指先から白く光る魔法弾が放たれる。トイフェルは剣で容易く弾き、その軌道を逸らした。しかし、魔法弾の後ろからディザストは肉薄し、トイフェルに右手の爪を突き立てる。
「ぐっ…!」
トイフェルは剣身の横でそれを何とか受け止めた。




