Ep:134 兄弟
トイフェルの視界は黒い煙に覆われていた。次第に煙が晴れ、視界が開ける。煙の向こうに、ドミヌスが炎の大剣を振り下ろした格好のまま立って居た。
「久々に使った所為か…加減を間違えたな…」
ドミヌスは片手で大剣を持ち上げ、抉れた石畳などの惨状を見て呟く。
「何だと?最高火力を躱された負け惜しみか…?」
トイフェルはドミヌスに言う。
「いや、火力を弱め過ぎた」
ドミヌスはトイフェルの方を向き直し、若気ながら言った。
「ほぅ…」
トイフェルは、ドミヌスの想定外の発言に思わず声を出す。
「良いだろう、相手として不足は無い。君の相手は私がしよう」
トイフェルはそう言うと、自分の背後にまるで時計の様な魔法陣を生成した。
「事実上の時を統べる者」
そう言った瞬間、魔法陣に描かれている時計の針が頂点に揃った。その瞬間、トイフェルとドミヌス以外の全ての物の時間が停止する。
「これは…」
「私の能力、時間停止さ」
「時間停止だと…?そんな事が人間に出来る訳が…」
「それができるのさ…」
その言葉を最後に、二人以外が動かない空間に沈黙が訪れる。そして次の瞬間、沈黙を破る様に二人が同時に動いた。ドミヌスはトイフェルに、片手で炎の大剣を振り、トイフェルはそれを受け流す。今度はトイフェルが剣を振り、機敏な動きでドミヌスはそれを躱す。
「見た所、君はまだ団長で居られるんじゃ無いのかい?私が王都に来るよりも前に辞めていたようだが…?」
トイフェルはそう言いながら時間停止を解除し、ドミヌスに向かって魔法弾を放つ。
「俺は人を指揮する事には向いていない。彼奴の方が余っ程…」
ドミヌスはトイフェルの質問にに答えると同時に、その顔を暗くする。しかし直ぐに元の表情に戻り、トイフェルに向かって炎の大剣を軽々と振り回す。
「火炎斬…!」
そう言って振られた炎の大剣から、炎の斬撃の様な物が飛ぶ。トイフェルは自分の前に魔法防壁を張り、その斬撃を打ち消した。時間を止めたのか、いつの間にかドミヌスの後ろにトイフェルが移動していた。トイフェルはドミヌスの背に向かって剣を振り下ろす。
「させない!」
その声と共にトイフェルの剣は受け止められ、強引に押し返される。
「戻って来たのか。手間が省けて助かるよ、ライト君…」
そう言うトイフェルの視線の先には、ライトが立って居た。
「やぁ、魔王の生まれ変わり君」
「ドミヌスさんは何でこんな所に…!?」
「君の存在は弟から聞いていた。援軍って所さ」
「弟…?」
「金髪のレオンと言ったら分かるか?」
その言葉に、ライトは少し考える。そして思い出した様に言った。
「黄金獅子騎士団長!?」
「俺は元団長だ」
「えぇ!?」
ライトはその言葉に驚き、声を上げた。




