Ep:133 男爵
かなりの数を倒して、屋根の上を走りながらAを探していると、エルの声が頭に直接響いて来る。
『ライト!ブルート!』
「どうしたの?」
僕は立ち止まり、エルの言葉を聞く。
『敵の能力の正体が分かったの!敵は時間停止を使える!』
『時間停止…!?』
ブルートの声が一瞬聞こえる。
「知ってる。それだけなら――」
『それで、時間停止にも限界があるみたい…!超高速で動けば追いつけるってアオイが!』
「追いつける!?」
僕はその言葉に驚いた。でも確かにそうかも知れない。過去に魔法で時間の流れを遅くさせた魔術師が居た。トイフェルの事実上の時を統べる者が時間を極限まで遅くさせる能力だとしたら、止まっているように見えてほんの少しずつ時間は流れているのかも。
「ありがとう!対策ができるかも!」
僕は目的をトイフェルを探す事に切り替え、記憶を頼りに少し前にトイフェルと会った場所に戻る事にした。
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「杖」
杖の形をした赤い魔法は、更にそこから火の魔法弾を二発放つ。Jであるレーラールと対峙するブルートとレジーナは、それを自分の剣で防ぐ。
「噴き出す炎!」
ブルートは踵から炎を噴き出し、一気にレーラールとの間合いを詰める。
「素早い炎!」
「聖杯」
炎の推進力も合わせ、ブルートは蹴りを放つ。しかし、レーラールの出した青い水の杯に消火される。
「剣」
緑色の光の剣が空中に現れ、物凄い速度でブルートの周りを飛び回る。
「焼却!」
ブルートは前方に炎の半円の様なものを放ち、飛び回る剣を掻き消す。ブルートは再び炎を噴き出し、レーラールに肉薄する。
「素早い炎!」
再びレーラールに向かって蹴りを放つが、今度は飛び退かれ躱される。
「大嵐」
声と共に、レーラールの周りに三本の小さな竜巻の様なものが現れ、その服を切り裂く。ブルートは咄嗟に振り返った。すると、レジーナがレーラールに掌を向けていた。そこからは微かに魔力を感じる。
「流石はQ…魔法も一級品だ…」
レーラールはレジーナを睨みながら言う。
「微塵も嬉しくないわね、貴方から言われるのは」
レジーナは嫌味を込めて返した。そうしている間に、上手くレーラールの視界から外れたブルートがその背後に現れた。
「素早い炎!」
「いつの間に…!?」
「素早い炎素早い炎素早い炎素早い炎素早い炎!!」
ブルートは、振り返るのが少し遅れたレーラールの胸に連続で蹴りを放つ。足に纏った炎は、服だけでなくその肌も焼いていく。暫く蹴り続けるとレーラールを蹴り飛ばし、拳を握り締める。
「じゃあな、レーラール」
そう言うとブルートは拳に炎を纏い大きく振り被った。そして、その踵と肘から炎を噴き出した。三か所の推進力と自分の跳躍を乗せて、体勢を崩し後退ったレーラールにその拳を叩きこむ。レーラールの顔面を殴り抜き、レーラールはレジーナの横を通り過ぎて廊下の真ん中に倒れた。




