Ep:132 順応
アカネはカタナを構え直し、ヘルツに視線を送る。アオイもエルの後ろから前にでて、カタナを抜いた。
「三対一か…まぁ良いだろう」
「残念だな、二対一だ…」
「エル殿は下がっていて下さい…」
アカネはエルの前に手を伸ばし、後ろに下がる様に促す。そして視線をヘルツに戻した。
「暁刀流、暁光の閃!」
アカネはそう言うとカタナを腰に添え、ヘルツに向かって跳躍する。素早くヘルツの眼前まで移動し、アカネはカタナを振り上げる。ヘルツは剣身の横の部分でカタナを受け止め、滑らせる様にして受け流す。
「宵刀流…月光の断…」
ヘルツの背後でアオイは呟き、三日月の様な軌跡にカタナを振るう。ヘルツはアカネの足を払い転ばせ、アオイにぶつけた。その衝撃でカタナの矛先がずれ、ヘルツの横を掠めていく。
「ちっ…!宵刀流…宵闇の閃…!」
アオイはヘルツの方を向き直し、その眼前に瞬時に移動する。一度鞘に納めたカタナを引き抜き、ヘルツの胴に向かって一直線に薙ぐ。カタナがヘルツに到達する寸前ヘルツは何の前触れも無く姿を消し、アオイの背後に回りその腹に向けて剣を突き立てる。
「アオイ!」
エルはアオイに向かって叫んだ。ヘルツの剣はアオイの胸を貫く、筈だった。
「何…?」
ヘルツは驚き呟く。アオイに刺さった筈の剣には感触は無く、アオイの姿も靄が掛かって様に消えて行った。
「幻…?いや、残像か…!?」
その瞬間、いつの間にかヘルツの背後に移動していたアオイはその首に向かってカタナを振った。ヘルツは寸での所で反応し、その攻撃を躱す。
「何をした…?」
「宵刀流 秘技の弐、鏡花水月…」
「馬鹿な…主の時間停止に勝る筈が…!」
「時間停止…?」
アオイはヘルツの言葉に反応する。
「焦りましたね…!その時間停止とやらについて話してもらいましょうか」
アカネはヘルツを脅す様に言う。
「話すも何も、言葉の通りだ…!」
そう言うとヘルツはまたも姿を消す。そして今度はアカネの背後に現れる。ヘルツは既に剣を振り下ろした後だった。
「暁刀流 秘技の壱、旭日昇天!」
アカネは一瞬で振り返り、カタナを振り上げ背後に居るヘルツの剣を弾き飛ばす。離しはしなかったものの、ヘルツは大きく体勢を崩した。
「どうやら時間停止とやらは完全では無い様ですね…!」
アカネはヘルツに言う。
「あぁ…時間と言う概念に干渉するのにも限界がある様だ…それに順応できる速度で動けば、多少なりとも追いつける…」
魔法による身体強化無しで超高速で動けるのは、東方で過酷な修業をした二人だからこそできる芸当だ。エルはアオイの説明を聞き、ライトとブルートへと思念を飛ばした。




