Ep:13 突入 *
それからは真面目に特訓に励んだ。でも、あまり気合が入らない……。
「おい」
僕はスワードさんを見る。
「お前にはこれから重大な事をやってもらう」
「え…?」
スワードさんの眼は真剣だった。
「お前は痣の力を持っている。その痣を自在に制御できるようになれば、身体能力を大幅に強化できる筈だ。原理や性質はまだ分からないが、お前は魔力を操作するのにも時間は掛からなかった。剣だってそうだ。軽い木剣とは言え、振れる様になるまでは速かった。なら出来るんじゃないのか……?」
思わずスワードさんの言葉に狼狽える。
確かにアレを制御できれば強くなれるかもしれない……でも、また誰かを襲ってしまうかも知れない……。
「怖いのか……? またあの時みたいに自分が制御できなくなったらと考えて」
「……」
スワードさんは僕の心の内を読む様な事を言う。
でも確かに怖がってばかりじゃ何もできない。僕は顔を上げ、目を瞑る。そして、首の痣に意識を集中させた。
「ぅ…うぅ…!」
首の痣が段々と右腕に伸びて行く。同時に、何故か魔力を根こそぎ吸われている様な気分になる。
やがて、痣は僕の右腕を全て赤黒く染めた。ぎこちないけど、何とか腕は動かせる……。
「よし、まずは制御できている。そのまま俺に剣を振って見ろ」
「え……! でも……」
「問題無い。今回は魔力も使える」
僕はスワードさんに木剣を構える。でも、教わった両手での構えとは別の形で……。
今は左腕が付いて行けるのか分からなかったし、右腕の強化を最大限使える様に片手だけで木剣を持った。
「成程……考えたなっ……!」
スワードさんはそう言って跳び込んで来る。
僕は何も考えず、一度木剣を縦に振ってみた。
その瞬間、間合いを詰めている筈のスワードさんが後ろに吹き飛ばされた。更に、その後ろにあった花瓶が二つに割れる。
「な……!?」
なんと僕は剣を振った風圧だけでスワードさんを吹き飛ばし、後ろの花瓶を割ってしまった。
「風圧でこの威力だと……斬撃が飛んだ様だ……」
今度は僕から攻撃する。
もう一度痣に意識を集中させて更に伸ばす。
今度は痣で右足を包み、僕はその足で跳躍する。
「(やはり速いっ……!)」
スワードさんは咄嗟に木剣で防御する。
本来なら切れる筈の無い木剣の刃が、スワードさんの木剣に、三分の一ほど食い込んでいた。
「おいおい…」
スワードさんは呟く。
僕は連撃を繰り出し、木剣のぶつかり合う音と衝撃が薄暗い裏路地に響いた。
約束の日。
僕にとってはエルを助け出す大切な日。
「良いか、俺の目的は、この屋敷にある俺の私物を取り返す事だ」
僕は深く頷く。
今僕が持っているのは木剣ではなく真剣。この戦いは間違いなく殺し合いになる……。
「行くぞ……!」
スワードさんの声を合図に、僕達は豪華な造りの屋敷の塀を乗り越えた。




