Ep:12 斬首 *
スワードはライトを探して街中を走り回る。
「(何も考えてない子供が……! 何処へ行った……)」
ライトを見つける事など容易い、スワードはそう思っていた。だが、その捜索は意外にも難航し、街のほぼ全てを探し終えた。
残るのは断頭台のある広場のみ……。
「くそっ……」
スワードの脳裏に最悪な想像が浮かぶ。
「死ぬなよ……」
ライトに情を抱いている訳では無い。単に自分の目的の為に利用できると考えていた――筈だった。
だがいつからか自分の教え子として、その成長を微笑ましく感じていたのかも知れない。
スワードは急ぎ広場に向かった。
何かが落ちる音が聞こえ、その方向を見るとライトの姿があった。
だがスワードの想像とは違う形でライトはそこに居た。スワードが想像したのは、ライトが斬首をされる姿だった。
しかし、そこに居たライトは木剣を地面に落とし、ただ呆然と立ち尽くしている姿だった。
「どういう事だ……」
スワードはライトの見据える先に視線をやる。そこには、今まさしく斬首されたであろう女の姿があった。
ライトの様な子供には刺激が強かったのだと考えた。
「ぁああ……! うああぁぁあっ!!」
広場全体にライトの叫びが響く。
ライトは木剣を拾い、断頭台の横にいる兵士に肉薄していた。
兵士は剣を抜きライトに備えるが、ライトはその木剣に魔力を流し白く光らせた。
白く輝く木剣は、兵士の剣を容易く真っ二つに折った。それでもライトは攻撃を止めない。
「がふっ!?」
兵士はライトに膝蹴りを喰らわせ吹き飛ばす。
クレイ家の私兵達は、容赦なくライトに向かって剣を抜いた。
「くっ……!」
スワードは咄嗟に兵士達の輪の中に飛び出し、炎の魔力を帯びさせた木剣で兵士達を薙ぎ払った。
「ぐわあぁっ!」
吹き飛ばされた兵士が野次馬に突っ込み悲鳴が沸く。
倒された一人の兵士がスワードの顔を見て呟いた。
「貴方、は……」
兵士は力尽き気絶する。
「この馬鹿が!」
スワードはライトの服の襟を掴み、群衆の間を縫って去って行く。
「待って! 女の人が!」
ライトの言葉を耳にしながらも、スワード逃げる様に裏路地へと走った。
僕は説教を受ける。
「お前、何がしたかったんだ……! 仮に死んだらどうする!」
でも僕は謝る気力も返事をする気力すら無かった。
スワードさんは溜め息を吐く。
「まぁ良い、お前の未熟さが十二分に分かった……はっきり言って失望した」
僕にはそれを否定する権利は無い。
だって僕は叱られて当然の事をしたからだ。でもそれ以上に、あの人が……
「一つ聞く。お前が見ていたあの女は誰だ……知っていたのか……?」
「――パン屋さんの人……」
聞こえるか分からないくらい小さな声で呟く。
一応は聞こえてたみたい……。
「パン屋……? お前を逃がしたって言うあれか……」
小さく頷く。
「そうか、あの店の店主だったのか……」
「――知ってるの……?」
「何度かパンを買った事があった。大通りの店では有名だったからな……」
そう言うスワードさんの顔は、少し悲しそうにも見えた。




