Ep:129 殺意
ドミヌスはトイフェルに切り掛かる。トイフェルは容易くそれを躱し、逆に剣を振る。ドミヌスはその剣を受け止め、間合いを開けた。
「突然現れて…君は一体何なんだ…?」
「通りすがりの酒場の主人だ」
「戯け…少なくとも一般人の剣の実力では無いだろう…?」
その言葉にドミヌスは溜め息を吐く。
「酒場の主人なのは間違い無いのだが…」
ドミヌスは額を左手で押さえ、トイフェルに向かって言った。
「俺はドミヌス=ゴルト…黄金獅子騎士団元団長だ…!」
「何…?」
トイフェルは眉間に皺を寄せて言う。
「ゴルト…という事はレオンの兄弟か…奴と比べて君は随分細身だが…?」
トイフェルは嘲笑うように言う。
「これでもそんな事が言えるか?」
そう言うとドミヌスは剣を掲げ、その剣身に魔力を流す。剣身は燃え上がり、炎の勢いが増す毎にその刃が太く長くなる。最終的に、剣身全てが炎でできた大剣へと変貌した。
「成程、魔法で筋力は補えると…?」
「そういう事だ」
その瞬間、ドミヌスは炎の大剣をトイフェルに向けて振り下ろした。
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同時刻。王立リッター騎士養成学園は悲鳴や恐怖に包まれていた。生徒の一部が謎の怪物に変貌したからである。
「キャアァッ!」
「おらぁ!!」
悲鳴を上げる生徒の視界は赤く光り、熱風が過ぎ去ると怪物、Aは灰となり姿を消す。
「大丈夫?」
腰を抜かし尻餅を突いた女生徒に、翠色の瞳の女が手を差し伸べる。
「ありがとう…あなた達は…?」
「私はレジーナ、あっちはブルートだそうよ。さぁ、早く逃げなさい」
レジーナは女生徒を引っ張り上げ、逃げるよう促した。女生徒は廊下を駆け、その場を去って行った。
「これでこの学校で二人目だ。誰がAを…?」
ブルートが呟く。すると、女生徒が走って行った方とは逆の廊下の奥から足音が聞こえて来た。
「誰…?」
段々と近付いて来る足音に、ブルートとレジーナは警戒する。
「…!お前レーラール!?」
ブルートははっきりと顔が分かるまで近付いて来た男を見て驚く。その男は、ブルートやライトとエルの担任教師のレーラールだった。
「久し振りだね、ブルート」
レーラールはブルートに微笑み言う。
「久し振りだねじゃねえよ!早く逃げないと――」
「逃げる?何でだい?」
「は――?」
次の瞬間、ブルートの視界はレジーナの背で埋め尽くされていた。
「ブルート…!彼は敵よ…!」
レジーナはレーラールを押し返し、ブルートに言う。
「は、は?何言ってんだよ…?そんな訳…」
ブルートはそう言ってレーラールの顔を見る。微笑んでいる様に見える顔のその瞳の奥は、殺意に満ちていた。




