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白銀の忌まれ血  作者: 影乃雫
第四章 剣聖編
128/310

Ep:128 指揮

 A(エース)の首を斬り落とした女は、ブルートの呟きに答える。


「私は、『切り札』(トランプ)に協力している訳では無いのよ…!強制的に連れて来られただけで…」


女はそう言うと、俯き首のチョーカーを触る。しかし直ぐに顔を上げ、ブルートに向かって言った。


「私はレジーナ=クレアシオン。クレアシオン家の長女にして、トイフェルの姉よ!」


「トイフェルの姉!?」


「ええ、実の姉弟ではないけれどね。このチョーカーはトイフェルの意思で私を絶命させる事が出来る魔法石が埋め込まれているの。だから、私にはトイフェルに逆らう術は無い…」


レジーナの話を聞いたブルートは、何を考えたのか剣を抜く。


「その首飾りが取れれば良いんだな?」


そう言ってブルートは剣を振り上げる。


「駄目よ!このチョーカーは壊されても作用するの!」


レジーナは必死に訴えるが、ブルートは既に剣を振り下ろしていた。レジーナは目を瞑り、自分の死を覚悟した。


「終わったぞ」


「――え…?」


ブルートの声に、レジーナは目を開ける。首を触ると、チョーカーの感触は無かった。


「どうして…?」


「魔法回路を斬ったら作用するなら、溶かして中から壊せば作用しないと思ったんだよ。ちょっと賭けだったから成功するかは五分五分だったけど…」


ブルートは平然と言う。レジーナの足元には溶断されたチョーカーと、半分に割れた翠色の魔法石があった。


「…改めて感謝するわ…執拗に追いかけて御免なさい…」


「味方だって分かって、こうやって解放されたなら心強い仲間だ。こっちこそ、疑って悪かった。俺はブルート=フランメだ」


「有り難う…」


レジーナはそう言って、差し出されたブルートの手を握った。


------------------------------------


 『切り札』(トランプ)の人員を、時間停止を使って援護していたトイフェルの元に、金色の甲冑を身に着けた騎士達が現れる。


「トイフェル=クレアシオン!国家反逆罪で貴様を連行する!」


騎士達の指揮官らしき男がトイフェルに向かって言う。


「抜剣!」


その声と共に、騎士が一斉に剣を抜く。


「ほぅ、剣聖たる私に戦いを挑むのかい?」


「否、手を上げて大人しくしろ!」


トイフェルは溜め息を吐き、手を上げる。


「分かった、大人しくしよう…」


そう言うトイフェルに、騎士達は少しずつ警戒しながら近付く。


「――何て、言う訳が無い…」


その瞬間、トイフェルに一番近かった二人の騎士の首が飛ぶ。


「なっ…!?捕えろ!」


指揮官がそう言うと、騎士達は一斉にトイフェルに切り掛かる。トイフェルは顔色一つ変えずに騎士達を相手取る。更に五人の首が飛び、何人もの負傷者が出る。トイフェルは指揮官に近付き、その首に剣を振ろうとする。


ガキンッ!


金属音と共に、トイフェルの剣の動きが止まる。


「ん…?」


トイフェルは自分の前に立ちはだかった者に視線を送る。


「金の鎧を見て付けて来て正解だったな…あと一歩で全滅するところだった」


トイフェルの眼前には、赤茶色の髪を後ろで結んだ酒場の主人であるドミヌスが居た。トイフェルはドミヌスとの間合いを開ける。


「何故だ?指揮官が一人死んだところで全滅するとは限らない…?」


「指揮官と言う者は、その場の状況を把握し部下に指揮を執る役職だ。現場を瞬時に把握する事は、容易くできる事では無い。だろう?」


ドミヌスは振り向き、指揮官に問いかける。指揮官は小さく頷いた。


「そう…俺みたいな人間には最も向かない役職だ…」


そう言うとドミヌスは、トイフェルに肉薄した。

 KAGEです。


本来は今回で第四章を完結させるつもりだったのですが、配分を間違え、かなり長くなってしまいそうです。


大変申し訳御座いません。


もう暫く第四章 剣聖編をお楽しみ下さい。

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