Ep:120 酒場
「「お~い!英雄教の教祖様の声が聞こえるぞ!」」
「「ガハハ!古の魔王だ~!?」」
酒場で昼間から飲んだくれている男達が、ジョッキを高々と掲げて騒ぎ立てる。
「魔王だと…?」
赤茶色の髪を後ろで結んだ酒場の主人らしき男は作業を止め、店の外へと出る。
「これは…」
外に出た主人は扉の前に落ちている紙を拾い、そこに描いてある二人の顔を見る。すると、主人は直ぐに酒場の営業表示をClosedにし、そそくさと閉店の準備を始める。
「マスター、何してんだ?」
カウンター席で飲んでいた男が主人に声を掛ける。
「すまないが、今日は店を閉めようと思う」
「え、何でだ?」
「少し用事ができた。片付けは済ませたから、客を引き揚げさせてくれ。今日は俺の奢りで良い」
「本当か!?お~い!皆!今日はマスターの奢りだぜ!」
「「おぉ~!」」
「「よっしゃ飲め飲め!」」
男達は騒ぎ立て、酒を一気に飲み干す。主人は溜め息を吐きながらカウンター裏から何かを取り出す。
「ぐうぇ…!何でそんなもん…!」
カウンターの男は、主人が取り出した物を見て驚く。主人が取り出したのは、かなり高級そうな剣だった。主人は、それを半分程まで引き抜く。
「今あるのを飲み終わったら帰ってくれ!今日は店を閉める!」
剣身で半分程顔を隠し言う主人の顔に、男達は怖気付く。そして慌てて席を立ち帰って行った。
「剣なんて持って何すんだ…?」
カウンターの男が主人に聞く。
「顔見知りの助太刀に行こうと思ってね…元騎士団長、ドミヌス=ゴルトとして」
そう言って酒場の主人、ドミヌスは剣を鞘に納めた。
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エルの腕に出来た注射痕を応急処置で治療し終わった時、外の門の方向から大きな音と悲鳴が聞こえて来た。
「何!?」
僕とエルとブルートは急いで道を戻り、玄関から外に出る。
「何だこれは…!?」
ブルートは外の状態を見て絶句する。そこには、門の前で待機していた第13大隊騎士達の殆どが倒れていた。僕達は駆け寄り、何があったのか声を掛ける。
「何があったんですか!?」
「ぐ…剣聖が…出て来て…この有り様に…!」
「どこ行ったか分かるか!?」
「そこまでは見えなかった…!」
「そうか…」
ブルートは期待していた答えが聞けず呟く。
「でも、そう遠くまでは行ってない筈だよ…!」
「あぁ、王都中にはなるが、手分けして探すぞ!」
僕とエルとブルートは一人ずつに別れて、分かれてトイフェルを探しに走った。




