Ep:118 樹木
今回からライトの視点復活です。
「あ…」
「え…?」
屋敷の一部を燃やし、崩壊させた僕とブルートは、目の前に立っている人物を見て唖然としていた。
「な、何でエルがここに!?」
「え?え!?すごい音がして、気が付いたら変な部屋に居て、それで出て来て…」
僕は動揺を隠せずエルに聞く。エルも同様に動揺しながら答えた。
「と、兎に角…!エルを救出するって言う俺達の目的は果たせただろ!一旦外に出て、第13大隊に引き渡すぞ!」
ブルートは言う。確かにそれが最善の行動なのは目に見えている。その時、廊下の奥から微かに絨毯の上を歩く人の足音が聞こえた。
「静かに…!誰か来た…!」
僕はエルとブルートを押し、曲がり角の死角に隠れる。そこへ、雀色のフードを被った例の女が現れた。
「何故外に出ている…?あの催眠はそう簡単には破れない筈だが…」
女は振り返り、確実に僕達の事を見る。フードに隠れて顔はよく見えない。それでも、威圧的な視線を感じる。女の手には空の注射器が何本か握られていた。
「お前は…!」
僕は呟き、歯を食いしばる。絶対に忘れない…!この女はアードラー団長を殺した張本人…!
「お前か…銀鷲の団長が遺したEmerald dragonの女は…!」
ブルートは剣を抜き、魔法で灼熱に燃やした刃を女に向ける。すると、女は言った。
「面倒だ…早急に片付ける…!」
そう言うといつの間にか女は剣を抜き、ブルートに肉薄した。ブルートは咄嗟に踵から炎を噴射し、女の剣撃を躱す。
「抜かったか…」
女はそう言うと少し飛び退き、一旦距離を取る。一呼吸おいて、今度は僕の方を向いた。そして次の瞬間肉薄して来る。
「第一段階!」
僕は首の痣で右腕全体を覆う。剣を抜き、その腕の力で女の剣撃を防ぐ。押し返し間合いを取ると、僕は女に聞いた。
「お前達は何なんだ…!?何で僕達を狙うんだ!?」
「回収する前に知られては困る…!」
そう言うと女は剣をこちらに向ける。
「まぁ、私の名くらいは教えてやろう…我が名はヘルツ。『切り札』のハートの幹部にして、No.sを統べる者の一人である」
「『切り札』?No.s?何だそれ?」
「そんな事も知らずにここに乗り込んできたのか…『切り札』は組織の名、No.sはお前達が倒してきたIstらの事だ」
ヘルツと名乗った女は、ブルートの質問に答える。
「へーほーふ~ん。全然分からん!」
そう言うとブルートはヘルツに肉薄した。炎を纏った剣をヘルツに振るい、攻撃する。僕は援護すべく、右手をショットの構えにする。
「第四段階!ショット、ウッド!」
僕は木属性の小さな弾を生成し、それを発射する。
「…!ハッ…!」
ヘルツは僕の魔法弾に一瞬で気付き、あっさりそれを弾いた。だけど、それは第三段階で想定通り。弾かれた魔法弾は床に着弾し、その瞬間、物凄い速度で伸びていく樹木となった。
「何…ッ!?」
ヘルツは驚き、自分に向かって伸びて来る枝や蔓を断ち切る。しかし、伸びて来る速度に追いつかず、その体に樹木は絡まった。
「ぐッ…!」
「サンキューライト!これで終わりだ!」
ブルートはそう言うと、炎の剣をヘルツに向かって振った。




