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白銀の忌まれ血  作者: 影乃雫
第四章 剣聖編
117/310

Ep:117 月読

 アオイは葵色の光を纏い、カタナを前に構える。


宵刀流(よいのとうりゅう) 秘技の弐…鏡花水月…!」


その瞬間、突風と共にアオイの姿が消える。何度かクロウヴの前に現れては、残像を残し惑わせる。


「チッ…!何処だ…!?」


クロウヴは舌打をし、周りを見回す。するとアオイがその背後に現れる。クロウヴは気付き振り返るが、カタナを振ったアオイは既に残像で、クロウヴの剣は当たらない。するとクロウヴは目を瞑った。


「ん…?」


アオイは一度動きを止め、奇行に走ったクロウヴを見る。しかし、直ぐにまた姿を消した。そして微動だにしないクロウヴの背後に現れた。アオイはクロウヴの背に向けてカタナを振った。


「なっ…!?」


声を漏らすアオイの目には、振り返る事無くアオイのカタナを止めて見せたクロウヴの姿があった。クロウヴはアオイをカタナごと押し飛ばす。


「ちょっと後悔っすね…ちゃんと特訓するべきだったって…」


クロウヴは振り返り、唖然とするアオイを見て言う。


「でも、実力差は運で補えるんすよ…!例えアンタがどんなことをやって来ても、俺の運の前にはその刃はもう届かない…!」


クロウヴはアオイに剣を向ける。


「何だと…!?」


アオイは唇を噛む。一度深呼吸をし、もう一度姿を消した。


「何度やろうと無駄だってのに…」


クロウヴは呆れた様に呟き目を瞑る。アオイが起こす風の方向をある程度察知し、アオイがどこに居るのかを絞り込む。後は自分の直感を信じ、剣を振るう。その剣は悉くアオイのカタナを食い止めた。


「くっ…!ならば…」


アオイは足を止め呟くと、目を瞑り深く呼吸をする。そしてそのまま言った。


宵刀流(よいのとうりゅう) 秘技の壱…雲心月性…秘技の弐…鏡花水月、()…!」


「あ…?」


クロウヴはアオイの言葉に疑問の声を出す。次の瞬間、クロウヴの視界にアオイはいるが、その背後にもアオイが現れた。そして、特徴が無く常人には可視できない斬撃を繰り出す。


「いつの間に…!?」


クロウヴは自分の運を盾に何とかその斬撃を躱す。咄嗟に半歩下がると、クロウヴは何かにぶつかった。本来ならばその背後には何も無い筈である。


「ぐッ…!」


クロウヴはまた背後に現れていたアオイを蹴り、間合いを開ける。しかし、次の瞬間クロウヴの左腕が斬られる。


「あぐッ…!」


鮮血が噴き出す傷口を、クロウヴは剣を持った右手で押さえる。だが、また次の瞬間その踵骨腱が斬られる。クロウヴは足に力が入らなくなり、その場に座り込んだ。クロウヴの視界にまだ映っているアオイは、その背後に現れ言った。


「実力差は運で補えると言ったな…残念だったな、運は実力差で補えたようだ…!」


そう言うとアオイはクロウヴの首にカタナを振った。鮮血が噴き出し、クロウヴの首は刈り取られた。アオイは完全に姿を現す。その瞬間、葵色の光が消え、その場に座り込んでしまった。


「限界だったか…もう少し手間取っていたら死んでいた…」


アオイは呟き何とか立ち上がると、覚束ない足取りでダギルの元へと歩み寄る。


「おい…!起きろ…!奴は死んだ…何も心配する事は無い…!」


アオイはダギルに精一杯の声を掛ける。しかし、返事はおろか、微動だにしない。アオイは拳を握り締め、呟いた。


「そうか…」


膝立ちの状態のアオイは、ダギルの亡骸を見つめ、敬礼した。


「葵!」


そこへアカネが駆け付け、アオイに声を掛ける。その後ろには第13大隊の騎士が数人立って居た。アオイはアカネの声に振り返る。立ち上がり、ゆっくりとアカネの元へと歩く。アカネの元まで歩くと、アオイはアカネの胸の鎧に弱々しく拳を叩きつけた。


「…ぃ…」


「葵…」


「遅い…」


俯くアオイの言葉に、アカネは立ち尽くす。アオイは腕を下ろすと、第13大隊の騎士達の前へ歩いた。


「この人は俺の上司だ…骸は燃やして――いや…この国は土葬だったな…骸は埋めてやってくれ…」


そう言うとアオイは、アカネ達が来た道を戻って行った。

 今回はかなり長くなってしまいました。


切る所が思いつかなかったので最後まで書き切りました。


 いつの間にか暫く葵の回になってた気がします。

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