Ep:116 葵色
クロウヴは自分の肩からダギルの剣を退かす。投げ捨てられた剣の勢いでダギルは倒れた。
「ククク…危ないっすね…!」
クロウヴは倒れたダギルに刺さっていた自分の剣を引き抜く。そしてその傷口を踏みつけた。
「クク…!ハハ…ッ!部下の前で醜態を晒したっすね…!気分はどうっすか…?」
「がふッ…!」
クロウヴは更にダギルの傷口を踏みにじる。
「貴様…!」
怒りの声と共にアオイの蹴りがクロウヴの背に命中する。クロウヴは前方に吹き飛ばされる。
「大尉殿!しっかりして下さい!」
「確りしろ!」
アカネとアオイはダギルに駆け寄り声を掛ける。アオイは自分の服を破り、それを傷口に宛てがう。葵色の布が赤黒く染まっていく。
「いっつ…」
アオイに蹴り飛ばされ廊下の壁に激突したグロウヴが立ち上がる。頭から血を流し、その部分を手で押さえている。アオイはクロウヴを睨みながら呟く。
「姉貴…姉貴は第十三大隊の騎士を呼んできてくれ…」
「じゃ、じゃあ葵は…!?」
アオイは立ち上がり、そのカタナをクロウヴに向けて言った。
「此奴をぶった切る…!」
「わ、分かった…!」
アカネはそう言うと応援を呼ぶ為にその場を去った。それを確認し、アオイは一度カタナを仕舞う。そして、その柄に手を掛け居合の構えを取り呟いた。
「宵刀流…宵闇の閃…!」
アオイはカタナの鍔を親指で弾き、その瞬間に残像を残し姿を消す。次の瞬間、クロウヴの眼前に現れ、そのカタナを大きく薙ぐ。クロウヴは屈み、首の高さのカタナを躱す。
「無駄なんすよ…」
クロウヴはそう呟くと剣の柄でアオイの腹を殴る。アオイは後方へ飛んで行く。
「ぐっ…!」
アオイは左手で腹を抑え、声を漏らす。アオイはクロウヴを再度睨んだ。
「ク…クク…クククク…ッ!その上司面してる奴…面白いっすね~…?適当に振ってただけなのに、自分から突っ込んで来てその様っすよ…?」
クロウヴは倒れているダギルを指差し嘲笑う。
「人よりちょっとばかし運が良いだけで、こんなにも実力差が埋まるとはなぁ~!」
アオイはその言葉に唇を噛む。それを見てクロウヴは煽る様に言った。
「掛かってこいよぉ~ッ!!」
その言葉にアオイはカタナを前に構え、爪先で立ち言う。
「宵刀流 秘技の弐…鏡花水月…!」
アオイは突風を起こし姿を消す。クロウヴの周りに風が吹き付ける。
「どこ行った…!?」
クロウヴは周りを見回し振り返る。その瞬間、振り返ったクロウヴの背後にアオイが現れた。それに気付いたクロウヴは咄嗟に振り返る。
「ハァッ!」
クロウヴは背後に現れたアオイを斬る。しかし、その斬撃に手応えは無かった。
「残像…!?」
クロウヴは振り返る。既にカタナは振られていた。咄嗟に剣を振ったが、カタナの軌道をほんの少し逸らす程度の効果しかなかった。
「グッ…!」
クロウヴは胸を浅く斬られる。
「俺の恨みはこんな物じゃ無いぞ…」
アオイは脅しを効かせた言葉をクロウヴに掛ける。アオイは剣を前に構え呟く。
「宵刀流 奥義 月神月読…!」
その瞬間、アオイの周りに覇気の様なものが現れ、クロウヴに吹き付ける。葵色の光を纏い、その特殊な見た目の服が形を変える。最終的には、葵色の光の輪が額に頭飾りの様に付き、同じく帯の様な物がその背に漂っていた。
「何だよソレ…」
クロウヴもあまりの変化ぶりに絶句していた。




