Ep:113 放火
僕達は警戒しながら廊下を進む。
「やけに静かだな…」
ブルートは呟く。確かに、人の気配を全く感じない。
「本当にここで合ってるのか…?」
ブルートは周りを見渡しながら呟く。
「間違いは無い筈だよ…」
僕はブルートの言葉に答える。薄暗い訳じゃ無い。それでもこの屋敷は異様な雰囲気を醸し出している。
「ライト、どっちに行くんだ?」
ブルートが左右に曲がる角の前に立ち、振り返って言う。
「左にしよう」
僕は答える。ブルートは角から顔を出し、左右の状況を確認して左に曲がる。暫く進み、また同じ様な曲がり角に当たり左に曲がる。そしてまた進む。
「ずっと同じような景色だな…って言うか、何でカーテンを閉め切ってんだ…?」
ブルートはそう言うと窓に付いているカーテンを開く。魔力結晶が発光している明かりとは違う、太陽の光が窓から差し込む。
「行くか」
ブルートは外の景色を見て満足したのか、そう言うと先へと進んだ。すると、また左右への曲がり角が現れる。
「今度は右に曲がろうぜ」
「そうだね…ずっと左じゃ同じところを回る様だし」
僕とブルートは右へと曲がる。また進み、四回目の曲がり角が現れる。
「またか…」
ブルートはそう呟きながら左へ曲がる。
「なっ…!?」
「どうしたの?」
ブルートが声を上げ足を止める。それを追い、僕も左を見る。その瞬間、とんでも無い景色が目に入る。
「これって…!」
僕とブルートが駆け寄った先には、さっきブルートがカーテンを開けた窓があった。
「何でここに!?」
「絶対に可笑しい。一回は右に曲がってるから、一周して来た訳じゃ無い…!」
「俺達はもう敵の術中に嵌ってたって事か…!?」
「その可能性が高そう…!」
即座に僕とブルートは背中合わせになり、腰から剣を抜く。
「転移魔法か…!?それとも幻覚魔法か…!?」
「分からない…でも、確かめる方法ならあるよ…!」
「何だ…!?」
「もしも転移魔法なら、僕達だけじゃなくて他の物も転移させられる筈。それは物体だけじゃなくて魔法も含まれる筈だよ…!」
僕は右手でショットの構えを取る。それを左の廊下の奥へと向ける。
「ヒート…!」
小さな火の弾が素早く飛んで行く。それは廊下の半分程まで飛ぶと、突然消えた。
「こっち…!」
僕は咄嗟に振り返る。すると後ろから火の弾が飛んできて、曲がり角の中央の壁に着弾した。
「転移魔法だな!」
「うん…!でも、それが分かった所で対処法は無いよ…!」
「あぁ…術師を探さねえと…!」
僕とブルートは周りを見渡す。特に怪しい物は無い。こう言う術の特徴として、内側から掛けるのと外側から掛けるのとがある。だけど、外側から掛ける術には高度な魔力制御が求められる。
「ねぇブルート、良い事思いついたんだけど…」
「奇遇だな。俺もだぜ」
僕とブルートは同時に若気る。そして、同時に火の魔力を乱射した。
「ハアァァァッ!」
「おらおらおらおら!!」
ショットじゃない大きな火の弾と、噴き出す炎じゃない炎を発射しまくる。勿論、それは屋敷に引火した。もくもくと煙を上げ、どんどんと屋敷は崩れ落ちて行った。
「…くそ…!何て事しやがる…!」
炎に包まれた廊下の何処からかVthらしきローブの男が出て来て、そして瞬間移動でどこかへ消えた。
「これで転移魔法は解除されたか…?でもこれどうするよ?」
「任せて」
僕は辛うじて残っている床に手を着き、氷の魔力を大量に流す。それはどんどんと広がり、炎さえも包み込み凍らせた。
「おお、こりゃ凄えな…!冷気が気持ち良いぜ…」
そう言ってブルートは壊れかけの壁に寄りかかる。
「ぬおっ!」
ブルートの重みに耐えきれなかった壁は音を立てて崩れ、ブルートは後ろへと倒れた。




