Ep:106 魔法
まだ体が重い…ダギル大尉に会ってからもう一回医療室で一日休んだけど、殆ど回復している気がしない…
「回復魔法も掛けて貰った筈なのに…」
僕は天井に向かって呟く。隣で寝ているエルはまだ起きない。ずっと気絶したままだ。
「よっ…!」
体を起こしベッドに座る。僕はその場で右手の掌を上に向け、魔力を流した。その瞬間、炎が掌から噴き出す。
「わっ!」
天井ぎりぎりまで噴き出した炎を、慌てて消す。
「次は…」
同じ様に魔力を流す。すると、今度は空中に石の塊が現れた。
「これなら大丈夫」
僕は一人で呟きながら魔力を消す。何故だかは分からないけど、今朝起きたら直感的に第四段階の能力が分かった。
「色んな属性の魔力…」
前から使えたのは火属性と無属性。今使える魔力は、僕が知っている限りの全属性。火属性は勿論、学校で学んだ木属性、氷属性などの派生属性まで使える様になっていた。原理は分からない…その時、医療室の扉が開き、ダギル大尉が入って来た。
「ライト、気分はどうだ?」
そう言って近づいて来たダギル大尉の眼前に、僕は無意識に魔法で生成した風を、掌ごと突き出していた。
「うッ…!?」
「え…?」
僕は慌てて手を引っ込める。
「な、何なんだ…?」
ダギル大尉は驚きのあまり、怒る事も出来ていなかった。
「すいません…」
僕は怯えながら謝る。
「い、いや、良い…それよりお前、いつの間に風属性なんか使える様になってたんだ…?」
「気付いたのは今朝…何故か直感的に第四段階の力が分かったんです…」
「それってまさか…」
「今使える魔力は、僕が知っている限りの全属性…派生属性まで使える様になってた…」
ダギル大尉は唾を飲み込む。
「と、兎に角、体調はそれなりに回復したみたいだな…飯でも食って安静にしてろ」
「はい…」
そう言うとダギル大尉はご飯を置いて医療室を出て行った。
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トイフェルやファイントが身を隠す新たな屋敷の廊下。深緑の髪の男クロウヴは、意味も無く歩いていた。すると、その視線の先に旋風のXth、サイクロンが居た。
「お。お疲れっす。Kの援護、サンキューっす」
クロウヴはサイクロンに声を掛ける。それに気付き、サイクロンは深く頭を下げた。
「クロウヴ様…お褒めに預かり光栄です」
「そんな畏まるなよ…俺はたいして強くないんだから」
「そんな事はございません。貴方は我らが主に選ばれた御方です」
「あぁ、もう分かったよ…」
クロウヴは頭を掻きながら、諦めた様に呟いた。




