Ep:105 火事
目を覚ますと、僕は天井を見ていた。正確には、ベッドの上に仰向けに寝ていた。
「あれ…?」
体が重い。腕を上げようにも殆ど上がらない。何とか体を起こし、ベッドから降りる。ふらつきながら医療室を出て、ダギル大尉の居る部屋に向かう。部屋の前に着くと、ノックした。
「はい、どちら様…ってお前!?」
扉を開けて出て来たダギル大尉は驚いて大声を出す。
「体は大丈夫なのか!?」
「ちょっと体が重いけど、大丈夫です…」
僕は少し息を切らしながら言う。
「馬鹿野郎!大丈夫な奴がそんな事になる訳ねえだろ!?肩貸せ、さっさと医療室戻るぞ」
ダギル大尉は肩に僕の腕を乗せ、引きずる様に医療室に連れていかれた。
医療室に戻り、さっきまで僕の居たベッドの所まで連れていかれる。
「あ…!エル…!」
さっきは気付かなかったけど、僕の隣のベッドでエルが寝ていた。
「お前がトイフェルと戦った時、エルも何故か気絶したんだ」
「トイフェル…そう言えば…あの後の記憶が無い…」
「あの後?」
「屋根に上って、トイフェルに段階を上げられて…それからの記憶が…」
「ちょっと待て、段階を上げられたのか!?」
「多分…実感は無いけど…」
僕は自分の右手に視線を落とし、開いたり閉じたりしながら言う。
「そう言えば、僕の中の魔王に身体を貸せって言われた…」
「まさか…お前の身体、魔王に使われたのか…!?」
僕は小さく頷いた。覚えては無いけど、そんな気がする。
「魔王がトイフェルを撃退したのかすら分からないな…」
ダギル大尉は呟く。その時、医療室の扉が開いた。ダギル大尉の肩越しに振り向いて確認すると、アカネだった。
「大尉殿もいらっしゃったのですか。ってライト殿!体調は大丈夫なのですか!?」
「大丈夫…」
「そうですか…それより大尉殿、丁度良かったです」
「ん?何がだ?」
「さっき聞いたのですが、ライト殿とブルート殿が行ったと言っていたトイフェルの屋敷が、昨日の夜焼けました」
アカネは真剣な表情で言う。
「何だと…!?それじゃあ調査が進まないじゃないか…!」
「そんな…やっと尻尾を掴めたと思ったのに…」
僕とダギル大尉は落胆する。
「そんな事はありません。燃えなかったにしろ、あの屋敷からは何も出てこなかったでしょう」
「何でそんな事が分かるの…?」
「あの屋敷は元々トイフェルが住んで居る所でした。そんな所に、自分の計画を記した物があるでしょうか?」
アカネの正論の様な意見に、僕とダギル大尉は黙ってしまった。




