第三章⑳~羅馬(ローマ)から帰ってきて~
051_第三章⑳~羅馬から帰ってきて~
【冒険者ギルド三階・グレンの部屋】
「落ち着くねぇ。俺ぁの万年床出してくれよぉ。」
「お前の部屋は隣だろうが!」
「ええ?俺とグレンの仲だろっ?いいじゃねぇか?いいじゃねぇか?いいじゃねぇか?」
……たまには1人になりたいんだが。
ドタバタドタドタがやがや。
廊下から足音と話し声がする。
『北斎ーー!グレン!お帰り!』
ライガと源内と東鳳屋呉慈羅だ。
「源内の地獄耳か?さっき帰ったばかりだぞ?」
源内は瓦版という商売も手広くやっていてアトランティス中に情報網を持っているらしい。
「ん?俺だが?俺たち竜人は竜の管理をしているから竜貸出し所からの情報は直ぐに入るんだよ。」
呉慈羅が情報元かよ。……だから、俺は……たまには1人に……。
「お前らーーー!俺の部屋から出て行けーーー!」
「お?源内さん、久しぶりだねぇ!俺ぁローマで面白いモノを作ってきたぜぃ!グレン、あれをアイテムボックスから出してくれぃ!」
北斎、聞いちゃいないよ。全く。
「北斎作った面白いモノ?俺も興味があるなぁ。」
「俺もだ。」
呉慈羅、ライガ、お前らも出て行け……。仕方ないな……。
「北斎の部屋へ行くぞ。隣は俺の部屋より広い。2倍はある。風呂もある。何故か北斎は帰りたがらないがな。」
「へ?俺ぁの部屋か?いいけどよぉ。なんのおもてなしも出来ませんぜ?」
♢♢♢【北斎の部屋】♢♢♢
「ここは……魔境か?異世界か?」
ライガ!剣を構えるんじゃない!
そこに、広がっていたのは腰の高さまで積み上がった描きかけの絵の山。ネズミかなんだかわからない生き物の蠢く気配。
壁一面に殴り描きされた竜や鳳凰の絵。
浴槽には絵の具がなみなみと。
『北斎ーーーーー!なんなんだーーーー!ここは!!?』
「へ?俺ぁの部屋だが?へ?何か?」
「皆、俺の部屋に戻ろう。ここよりはマシだ。」
♢♢♢【グレンの部屋】♢♢♢
大男五人が丸テーブルを囲んでいる。肩が触れあうぐらいの近さだけどな!!
俺はローマのお土産のワインとチーズを皆に振る舞った。北斎にはトラットリアのフォカッチャもある。
「で、北斎、俺に見せたいものって何でぃ?」
俺は羅馬三十六景をアイテムボックスから取り出す。
「グレンーー、それじゃねぇけどまぁいいや、源内さん、呉慈羅、見てくれぃ!これを何枚か浮世絵にしてぇんだよ。」
「ゆっくり見ててくれぃ!俺ぁは風呂に入りてぇ、グレン、シャワールームに小さめの湯船出してお湯はってくんねぇか?」
「シャワーで我慢しろ。お前は自分の部屋の風呂をなんとかしなさい!」
「……。へぃ。シャワーしてきやす。」
北斎が「ふふふふん♪ふふふふん♪」ってシャワーを浴びてる間に俺たちは羅馬三十六景を見ている。
「凄いな。何枚か選んで浮世絵にしようじゃないか!!源内さん、大丈夫だよね?」
と、東鳳屋呉慈羅。
「ごうじさん、ええ、大丈夫ですよ。摺師も彫師も新しい下絵を待ってますぜ!」
五景 【府羅馬野乃図】
十景 【紅蓮鬼魔伊良戦図】
十一景 【暗黒紫熊図】
十七景 【燦比叡登呂大聖堂正面図】
二十景 【辺留兄兄大階段騙絵図】
三十四景 【オ素丁亜全景図】
この六景の浮世絵販売が決定した。
平賀源内が一つの絵に目を止めた。6枚組の絵だ。
「ん?三十景が……? 【くミあけ波テ御図六枚組】?こりゃもしかして?組上絵か?!間違いねぇ!組上絵だ!!!こりゃ売れる。間違いねぇ!売れる。」
源内さん?そろばん出して何してるんだ?
「六枚組か……。2000アト、いや3000アトか。」
北斎が素っ裸でシャワールームから出てきた。
「北斎!!これ!組上絵じゃねぇかー!?」
北斎、先ず服を着なさい。俺は北斎に部屋着を渡す。ほら、着なさい。髪は……。風の魔道具を。ブワーン。ブォーーーン。
「ソレ、ハ、グミアゲ、ブワーン。ぐれんかぜがづよぐでしゃべれ、ねぇ。」
「組上絵?源内、北斎の髪が乾くまで説明してくれないか?」
呉慈羅が商売に食いついてきた!
ライガはキマイラ戦とダークベア戦の絵に夢中で聞いてない。
「組上絵ってのは、江戸での流行りモノでねぇ、この絵を切り抜いて組み上げて、立体絵を作るんだよ。」
「立体絵だと?フィギュアとは違う立体物か!!これは売れるな。ふふふふ。源内、大儲けだな。ふふふふ。」
「ひひひひ。売れますぜ。東鳳屋も悪よのぉ。ひひひひ。」
おい!源内!そろばんを弾く手が止まってないっ!ぞ!
「これをアトランティスの建物絵で作れたら、竜人街の景色で作れたら、竜人街の文化を広めることがもっと出来るかもしれない。」
髪を乾かし終わった北斎が俺のベッドの上にちょこんと正座している。可愛い?じゃなーいか!
「北斎、俺のベッドに座るなよ。」
「へ?いいじゃねぇか?そっち狭めぇんだよ。」
東鳳屋呉慈羅が組上絵を見ながら北斎に声をかけた。
「竜人街の芝居小屋の組上絵も描けるか?」
「おお!芝居小屋か!?生前描いたことあるぜぇ!からくりにするかねぇ。役者を動かして遊べるぜ!」
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【組上絵・案】
羅馬
・トラットリア
・コロッセオ
・パンテオン
アトランティス
・竜人街芝居小屋
・城壁
・中央塔
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源内が腕組をして何かを考えている。
「北斎、下絵は描けるかい?組上絵用の下絵だ。」
「あたぼうよ!描けるぜ!パンテオンと塔は10枚組になりそうだねぇ。後は6枚組かねぇ。」
「そうだよなぁ。色下絵は……6枚組のやつぁ15枚はいるねぇ。10枚組だと30枚か……。版木もそれくらいは必要だねぇ……。彫師と摺師を増やすしかねぇなぁ。」
??江戸っ子二人の会話。俺には意味がわからないが、たくさんの絵と版木が必要なんだな??
「俺ぁが下絵を描くから、色下絵はダ・ヴィンチのじじぃに任せてみないか?ローマの色はダ・ヴィンチじじぃの方が出せるだろうよ。」
東鳳屋呉慈羅が1つの提案をする。
「彫師と摺師は俺に任せてくれ!手配しておく。竜人街と中央エリアの間に工房も手配しておくよ。ダ・ヴィンチさんの家からもそんなに遠くはない。そこに皆で集まって仕事をしようじゃないか。」
「いいねぇ!風呂も用意しといてくれぃ!俺ぁ、風呂の無い仕事場では仕事しねぇからなぁ!」
北斎……先ずは自分の部屋の風呂を掃除しましょうね。
俺たちは、羅馬帰りの余韻に浸ること無く、アトランティス全土を巻き込んだ一大プロジェクトが始まることになったのだ。
次回、最終回~北斎伝説~へ続く。




