第三章㉑~葛飾北斎伝説~【完結】
第三章㉑~葛飾北斎伝説~
ローマから帰ってきて1ヶ月。暇だ。暇だ。暇。
北斎は東鳳屋呉慈羅が用意した工房に住み込みで描き続けているらしい。
一人の時間もいいものだな。アルフレッドに貰った紅茶を高級ティーカップで飲みながら中央塔を見上げる。
俺か?俺は串肉屋台のおやじだ。オーク肉を焼きながら紅茶を飲む。
暇だ。客は来ているが、北斎がいないとこんなにも暇なんだな。
「おーーーーーい!ぐーーれーーーんーー!」
ドタバタドタバタ。ダダダダダ。
あのーー走り方はーーーー?ほーーくーーさーーい!!
俺は優雅にティーカップを口元に持っていく。口元は緩んでいるがな。
「ハァハァ。浮世絵と組上絵の発売日が決まったぜぃ!一週間後だってよー!中央エリアで売り出すから。ほら、あの空き店舗使うらしいぜぃ!当日は祭りだって!グレンの屋台も繁盛するだろうって!!」
「……そうか。」
「へ?久しぶりにあったのに。一言かぁ?」
「……そうか。」
優雅にティーカップを口元に。
「グレン?そのカップ空。」
「……そうか。北斎お帰り。」
「たーだいま。グレン。葛飾北斎のお帰りでぃ!」
それからの一週間俺は仕入れをしたり、仕入れをしたり、下ごしらえをしたり、下ごしらえをしたりして慌ただしく?過ごした。北斎は日帰りで工房に通っている。
♢♢♢【売り出し日】♢♢♢
「竜人町役者舞台組上絵、城壁組上絵ご購入の方はこの列に並んで下さぁい!一組2000アトでぇす!」
「トラットリア、コロッセオ組上絵はこちらー!一組同じく2000アトでぇす!」
「こちら30組ずつ限定の!中央塔組上絵!パンテオン組上絵!の列です!整理券をお持ちの方ーーー??10000アトでーす!パーツが細かいので組み上げに一年以上かかりますぅ!!」
「浮世絵シリーズも販売していまーす!組上絵お買い上げの方にはご希望の浮世絵を一枚お付けいたします!」
「組上絵は予約販売も受け付けておりまーす!予約はこちらで受け付けておりまーす!」
「わっしょーい!わっしょーい!わっしょーい!わっしょーい!」
ピーヒャラ、ドンドンドン。
ピーヒャラ、ドンドンドン。
笛の音色に太鼓の音。
中央広場には江戸の神輿が出ている。神輿には神が乗っているらしい。御霊というらしい。実際に神様が乗っているわけではなくて……。
「大国主命様?大国主命様だ!!」
神輿からひょいっと降りる大国主命。
「ふふふ。中央塔とパンテオンの整理券持ってますよ。フィギュアを買いそびれたものでね。ふふふ。今回は並びますよ?」
大国主命さんの背中から執念オーラが溢れだしている。神様を夢中にさせる北斎恐るべし!!
北斎は白シャツに緑色のズボンにサスペンダー。俺は白シャツに黒のズボン、サスペンダースタイルで行列を眺めている。
羅馬行きのために揃えた服だ。
「すげぇ行列だねぇ。」
「ああ、凄い。北斎がそれだけアトランティスに、アトランティスの住民に愛されてるってことだよ。」
「そうかぃ?へへへ。照れるねぇ。こうしちゃいられねぇ!描くぜぃ!」
さらさら。さらさら。
【アトランティスの皆図】
「ん?素直なネーミングだな。」
「たまにはいいじゃねぇか?(笑)グレン!」
北斎がアトランティスへとやってきて三年。異世界へ行き魔物を倒し、俺と知り合い、仲間になって、今では無くてはならぬ相棒になっている。(同居人でもある。北斎の部屋の片付けは一向に進まない。)
一度の冒険で2億7300万アトを稼ぎ、冒険者ギルドを震え上がらせた。浮世絵、フィギュア販売には1000人以上の列が出来た。
日本神域、ローマへも行った。
北斎はその間に何百枚、いや、何千枚の絵を描き上げたのだろうか。
チートが無かったとしてもコイツはこの世界で己の筆一つで伝説になっていたのかもしれない。
北斎の絵には命が宿っている。
北斎の絵には人が集まる。
それが葛飾北斎という男なのだと思う。
♢♢♢【祭りのあと】♢♢♢
夕暮れ時、俺たちは屋台の前にゴザを敷いて座り中央塔を見上げていた。
「グレン、祭りが終わっちまった……次は……何処へ行くかねぇ?」
「北斎が描きたい所なら何処へでも行くぜ!」
「へへへ。俺ぁは、稀代の天才絵師……。」
『葛飾北斎(でぃ!)(だな!)』
~【葛飾北斎の伝説・ここに完】~
次回~おまけ。北斎異世界美術館展示品一覧~




