第三章⑬【羅馬三十六景】~ミケランジェロVS葛飾北斎~
044_第三章⑬【羅馬三十六景】~ミケランジェロVS葛飾北斎~
「グレン、少し二人で話せないか?」
「どうした?北斎がそんな神妙な顔をするのは珍しいな。ちょっと待ってろ。」
俺はアルフレッドとフィリップに話を通して大聖堂内の部屋を1つ借りてもらった。連れのものが少し休みたいと言っているとね。
【小さな部屋】
「グレン、あのな。アルフレッドを三毛猫じゃなくてミケランジェロに会わせてやりてぇんだ。」
「どういうことだ?」
「アルフレッドな、ミケランジェロが大好きなんだってよ。俺の記録再生の中で実際に絵を描いてるミケランジェロを見せられかってな。」
「だめだ。世界の理に触れる。」
「どうしても無理か?」
「北斎が俺に頼みごとをしてくるなんて初めてだな。なんとしてやりたいが……ギルドカードでギルド長に連絡してみるよ。」
♢♢♢♢♢♢♢
【アトランティス冒険者ギルド長室】
「珍しい。グレンから連絡?」
『ローマにいる。地上人、二人にアトランティスの事を話したい。即返事求む』
「……これだけ?(笑)これだけで私に何を判断しろと?グレンのことだから何か思惑があるのだろうが。」
『追伸、北斎の希望。』
「ほほぅ?北斎か。」
♢♢♢♢♢♢♢
「ギルド長から返事が来たぜ。アトランティスの事を他人に口外しないと確約を取れ。それだけだ。」
「へ?」
「へ?じゃねーーよ!アトランティスの事を話さないでお前の能力が使えるか?あ?」
「あ。がってん。」
♢♢♢♢♢♢
「キダイ・ホクサイさん大丈夫?体調が悪くなったって聞いて心配してました。」
「へ?大丈夫でぃ!それよりなぁ、アルフレッド、グレンから話があるみてぇで、聞いてくれるか?フィリップさんも。」
二人は椅子に腰かけた。
「二人ともこれから話すことは口外しないと誓ってくれ。」
「??なんですか?いきなり。内容によります。」
フィリップが警戒している。そりゃそうだよな。昨日知り合ったばかりの人間に口外するなって言われたんだから。
「私はいいですよ?キダイ・ホクサイさんはいい人です!それにこの場所には神様がいらっしゃる。悪いことをしたら天罰が下ります。私はここでは嘘はつきません。ここで口外しないと誓えばその誓いを破ることはありません。」
アルフレッドが真っ直ぐな目で俺を見ている。
フィリップは……「アルフレッドお坊っちゃまご立派になられて……」って泣き出してるんだが(苦笑)
「グレンさん、話して下さい。キダイ・ホクサイさんに関係することなんでしょう?口外しないと誓います!」
フィリップもうんうんと頷いている。話すか。
「わからないこともあるかもしれないが最後まで聞いてくれ。俺と北斎はアトランティスという所から来たんだ。こことは別の世界と考えてくれていい。そこには神いて俺たちは特別な能力を持っている。」
「プラトン!!!!」
「プラトンですな!!」
「フィリップ!この前勉強したやつ!!」
「アルフレッドお坊っちゃま!その通りでございます!」
「へ?」「え?」
「お二人、アトランティスからいらしたんですね!凄いです!私たちだけの秘密ですね♪フィリップ良いね?」
ん。理解が早いな。
「もちろんですとも!もちろんですとも!もしや?スペイン広場で売られていた塔の絵はアトランティスの?素晴らしい!」
フィリップ……お前もか。
「ミケランジェロの天地創造があるシスティーナ礼拝堂へ行く途中でアトランティスからの旅人さんに会えるなんて!神のお導きです!ね♪」
俺がギルド長に掛け合ったんだが?
アルフレッドとフィリップがハイタッチしてる……いいのか?説明これだけで?いいんだな?
楽しそうだからいいか(笑)
俺たちは小部屋を出て衛兵の案内で廊下を進む。
「こちらが、大階段、スカーラ・レジア(王の階段)です。」
「なんでぇ!?この階段?不思議な感じがするねぇ。」
白い石柱に支えられたアーチ、丸天井で出来ている。石柱は下段は壁から離し、上に上がるにつれ近くする。天井も上段に行くにつれ低くする。
「キダイ・ホクサイさん!この階段はべルニーニの最高傑作だと私は思っています!」
「ぺるにー?へ?よくわかんねぇがすげぇな。俺ぁの絵の遠近法(騙し絵)を実際の階段でやってのけるって、ぺるにー?はすげぇヤツだったんだねぇ。」
階段の上には大広間。
廊下の壁にはフレスコ画、フレスコ画、フレスコ画、美術品、美術品、美術品。
キラキラとした宝飾美術品と絵の波が襲ってくるみたいだ。
派手さは無いぜ?荘厳な感じがする。とにかく全てが巨大だった。
北斎はキョロキョロ辺りを見回して、興味が沸いたら立ち止まってはアルフレッドに質問を投げ掛けている。
さらさら。さらさら。
【辺留兄兄大階段騙絵図】
【紅蓮色兎美術品溺図】
廊下には巨大な木の扉がいくつかあって、しばらく歩くと1つの扉の前で衛兵が立ち止まった。
「こちらが、システィーナ礼拝堂への扉です。私はこちらでお待ちしておりますので皆様、中へどうぞ。」
♢♢♢♢♢♢
【システィーナ礼拝堂】
俺、北斎、アルフレッド、フィリップだけでシスティーナ礼拝堂に入る。
ここで教皇選出コンクラーベが行われているんだな。
「凄いですね!!壁画はミケランジェロさんの担当ではなかったようです。天井絵の天地創造、正面の最後の審判はミケランジェロ作で。本物だ(涙)」
「たしかになぁ。壁と天井絵の気が違う。アルフレッド。ミケランジェロが絵を描いているところが見たいか?」
「はい、見てみたいです!」
「グレンやるか?」
「やろう。これから北斎が能力を使う。二人は俺たちから離れないでくれ。」
「アルフレッド、おめぇは俺ぁを掴んでろ。フィリップさんはグレンと手を繋ぐんでぃ!(笑)」
……手を……繋ぐ。登戸絵のトラウマ……。
「やるぜぃ!こうへそにぐぃーっと力を入れてっと。」
北斎が虹色のオーラに包まれ髪が逆立つ。
シューッ。暗転。
パッと明るくなった。
【システィーナ礼拝堂・1509年】
ミケランジェロが天井絵描き始めて一年後。
「ダ・ヴィンチのクソジジィ!何が人体の比率こそが世界を構成する比率だ!?信仰、思想こそが世界を構成してるんだろうが!!?」
ミケランジェロさんずーっとぶつぶつ言いながら天井絵描いてる。
「おーい!三毛猫らんじぇさーん!俺ぁ、葛飾北斎、稀代の天才絵師でぃ!」
「ん?ここには弟子以外いないはずでは?ん?弟子の姿が無い!!あ、俺が追い出したんだった……」
「わかりますぜぃ!!ダ・ヴィンチのクソジジィがクソジジィだってのは俺ぁにもわかりますぜぃ!!あのクソジジィ、俺ぁの顔見ると直ぐに対決じゃ!対決じゃ!言うんだぜぃ!」
「おおお!わかってくれるか?あのクソジジィ!いつも、ホーッホッホとか笑ってて、俺が突っかかっても軽くあしらわれるんだよ。対決も叶わないままだが。」
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【1503年・ヴェッキオ宮殿】
大広間に二人が同時に壁画製作をするとこになった。
レオナルド・ダ・ヴィンチ
「アンギアーリの戦い 」
ミケランジェロ
「カッシナの戦い」
この二人の対決は諸事情により幻に終わることになる。
ミケランジェロ28歳。
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「俺ぁはアトランティスってぇ所から来たんだけどよぉ。俺ぁ達の事は誰にも言わないでおいてくれな。おめぇが死んだらまたダ・ヴィンチのクソジジィに会えるかもしれねぇしな。」
「おお!神の国!理想国家アトランティスからの使者様でしたか!!!私は若い頃プラトンアカデミーに参加しておりましてアトランティスには関心があります。おやおやおや?あのクソジジィがアトランティスにいるだ……と?」
「はいはい。北斎!そこまで!ミケランジェロさん、俺はアトランティスのグレンといいます。この出来事は心の中に留めておいていただきたい。」
「わかった。神に誓おう。でだ!ポセイドン様に会ったことはあるか?創造神様には?世界創造はどうされたのかな?今、天地創造描いてる最中でキダイ・ホクサイさん見てもらえます?」
おーい!アルフレッドー!?フィリップさーん!?カチコチになってて全く動いてないんだが。
「……フィリップ。これ夢かな?」
「夢……かもしれませんぞ。もしくは神業かも……。神が起こした奇跡かもしれませんぞ!!」
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【プラトンアカデミー】
ルネサンス期にフィレンツェ・メディチ家の周囲に集まった人文主義者らによる私的サークルの総称。
特にプラトンの思想に強い関心を持っていた。
ミケランジェロもこれに参加していた。
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「お?俺ぁも足場に上がっていいかい?近くで見てぇ!」
「いいぜーー!キダイ!上がって来い。狭いから気を付けてなー!」
ささっ。ささささっ。
「キダイ!上ってくるの早いな(笑)」
「ミケさんよぉ!こんな狭めぇ所で描いてるのかい?」
「ああ、寝そべって天井見ながら描いてる。背中は痛いし、目にホコリや絵の具が入ってくるし大変なんだよ(涙)」
「これは?!漆喰かぁ?」
「そうだよ。漆喰が乾ききる前にこの範囲を描いてしまわないといけないから、手を止めるわけにはいかないんだ。キダイさんちょっと待っててくれ。」
「俺ぁも描くぜ!」
ミケランジェロ。
カキカキ。カキカキ。
北斎。
さらさら。さらさら。
北斎も寝そべって絵を描き始めた。
北斎作【三毛乱時絵羅寝背痛図】
「こっちも出来たよ。ちょっと休憩に下へ降りるから少し話そう。」
「がってんしょうち!」
俺、アルフレッド、フィリップは足場を見上げてその光景をみていた。
「なぁ、フィリップ、あの2人って初対面のはずだよな?」
「グレンさん……天才画家二人の会話ですぞ……。」
「ねぇ!フィリップ!私もミケランジェロに話しかけてもいいかな!?」
♢♢♢【創造神図対決?!】♢♢♢
「天井絵ねぇ。俺ぁの描き方と全然違うんだねぇ……。」
「おや?キダイさんも天井絵を描いてたんですか?」
「俺ぁは、床に板を並べてそこに描いてから仕上がった絵を天井にはめてたぜぃ!」
「……なるほど。フレスコ画だと出来ない技法ですね。」
「ミケさんよぉ!おめぇの描き方すげぇと思うぜぃ!」
「へへへ。そうですか?嬉しいです。」
「ミケさんちょいと対決してみないかぃ?(笑)」
「いいね!キダイさん。創造神の絵の対決しませんか?天地創造絵の参考にもなるかもしれないからさ。」
さらさら。さらさら。
カキカキ。カキカキ。
おお!天才画家対決か?
俺もアルフレッドもフィリップも息を呑んで二人を見つめていた。
ん?北斎!北斎の様子がおかしい!北斎の身体が透けていく。
「北斎!能力の使いすぎだ!存在が消えてしまうかもしれない!直ぐに戻るぞ!!アルフレッド!北斎に掴まれ!フィリップさんは俺に掴まれ!!」
さらさら。さらさら。さらさら。さらさら。
シュン。
俺たちは光に包まれた。
♢♢♢【1852年・システィーナ礼拝堂】♢♢♢
「皆、無事か!!?」
「はい、グレンさん……ミケランジェロさんとお話出来なかった(涙)」
さらさら。さらさら。さらさら。
【三毛乱時絵羅創造神描図】
「ミケさん!出来たぜぃ!あれ?へ?あれれれ?」
「北斎、現代に戻ってるぞ(笑)」
「えええええええ?!」
「フィリップ、アルフレッド、今日の事は口外しないでくれよ?」
『神に誓って!』
それからシスティーナ礼拝堂の最後の審判の絵をゆっくりと観賞した俺たちは夕方近くになって、バチカンを後にし、スペイン広場へと戻るのだった。
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【羅馬三十六景】
二十景 【辺留兄兄大階段騙絵図】
二十一景 【紅蓮色兎美術品溺図】
二十二景 【三毛乱時絵羅寝背痛図】
二十三景 【三毛乱時絵羅創造神描図】
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~次回【外伝・閑話】~ミケランジェロ、ダ・ヴィンチに会いに行く?~へ続く。




