第三章⑪【羅馬三十六景】~スペイン広場の画家たち~
042_第三章⑪【羅馬三十六景】~スペイン広場の画家たち~
【貴族のグランドツアー】
イギリスや北ヨーロッパの貴族や富裕層の子息達が教育の仕上げとして行った長期旅行。
羅馬が中心地となる旅行も行われていた。
画商を周り美術品を購入することが一つの目的でもありました。
【スペイン広場】
ガヤガヤ。ざわざわ。
「さぁて描くかねぇ。」
ゴザにどかっと腰を下ろす北斎。
俺はというと、北斎がこれまで描いた絵の中から売れそうな絵を少しだけ並べていた。
【竜人街】と【中央塔】を描いた絵は羅馬で売っても異国の景色か、空想絵か、神話の絵と捉えられるかも知れないが違和感は無いだろう。
「お?変わった絵だな?お前知ってるか?」
貴族の子息だろうか?同行者に北斎絵を見せて尋ねている。
「おやおや?これは……もしやもしや!遥か東の地、ヒノモトのニッポーンガでは?私、一度だけ見たことありますぞ!!」
「おや?日本画を知っているのかぃ?嬉しいねぇ!!」
「はい、まだまだヨーロッパではほとんど見ることは出来ませんが……東方へ行った船が持ち帰ったものを一度だけ。」
この人はフィリップと言って旅に同行している家庭教師だそうだ。
「坊主、この絵が気に入ったのか?」
おいおい!北斎!たぶんその方貴族のご子息だぜ……口のききかたってもんがあるだろうが……
「はい。図書館で見た神の塔にそっくりなんです!私はイギリスからグランドツアーで来たアルフレッドと申します!」
さらさら。さらさら。
「ほい。これをやるよ。」
【あるふれっど】
「これ?私ですか?凄いです!凄いです!フィリップ!塔の絵とこの絵を買っていいかな?」
「お坊っちゃま!素晴らしいお買い物かと!これはヨーロッパではほとんど手に入れる事が出来ないでしょう。そこのお付きの方、5スクードでいいでしょうか?お安すぎますかね?」
お付きって俺かな?な?
「5だってぇええ?!」
「安すぎましたかな?」
「いえ、逆ですよ、そんなにいただいても良いのですか?」
「なーにを、おっしゃいますか!!!こんな貴重な品……。」
「いくらでも描けるぜぃ!!」
さらさら。さらさら。
【家庭教師驚愕図】
「ふぃりぷさん?がびっくりしてるところを描いてみたぜぃ!」
「私の絵……まで……。ぐすん。」
フィリップさん泣いてますか?
「画家さん!画家さんのお名前は?」
「俺か?俺ぁは!稀代の天才絵師葛飾北斎でぃ!」
「キダイのホクサイさんですね!覚えました!私たちはしばらくルシー・ホテルにいますからまたお話して下さい!」
「奇遇ですね、私たちもそこに泊まってるぜ。」
ざわざわ。ざわっ。
ざわざわ。ざわっ。
アルフレッドが去った後、北斎の周りには人だかりが出来ていた。
客だけではなくて、あちこちで描いていた画家も集まり始めている。
「なぁ?この画法知ってるか?」
「こんなに平面的で輪郭を強調してる絵は見たことがない。」
「画材も見たことがない。」
さらさら。さらさら。
【絵描集北斎囲図】
「お前さん達も絵師ならしゃべってないで描いたらどうだい?」
「キダイ・ホクサイをモデルにして絵を描くぞ!」
『おー!描くぞォオ!』
北斎の周り盛り上がってるなぁ。
俺の周りか?
俺の周りには何だかご婦人の人だかりが出来てる。
「お名前は?」
「グレン・アントニオス。」
「ご年齢は?」
「35歳……。」
「ご職業は?」
「……。」
「きゃーっ。鋭い目付き。素敵ねぇ。」
「そうね。こんな素敵な殿方なかなかいないわよ?」
「ご結婚なさってるの?」
「……独身。」
なんなんだ……。
さらさら。さらさらっ。
【紅蓮女性囲図】
「北斎……ホテルに帰ろうか?ホテルでも飯が食えるはずだ……。」
「グレン?疲れてるねぇ!?」
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【羅馬三十六景】
一景 【ドワーフ羅馬鍛冶図】
二景 【羅馬牌羅呈野丘全景図】
三景 【散駒霜宿女将図】
四景 【散駒霜戦車競争図】
五景 【府羅馬野乃図】
六景 【紅蓮元老院成図】
七景 【虎取屋議論里客図】
八景 【北斎首根掴図】
九景 【紅蓮兎葡萄酒図】
十景 【紅蓮鬼魔伊良戦図】
十一景 【暗黒紫熊図】
十二景 【冷紅茶早飲欲北斎図羅馬(アイスティーはやくのみたいほくさいろーまにて)】
十三景 【あるふれっど】
十四景 【家庭教師驚愕図】
十五景 【絵描集北斎囲図】
十六景 【紅蓮女性囲図】
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次回~サン・ピエトロ大聖堂~へ続く。




