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第三章⑩【羅馬三十六景】~スペイン広場・羅馬(ローマ)の休日~

041_第三章⑩【羅馬三十六景】~スペイン広場・羅馬(ローマ)の休日~


【スペイン広場】


「すげぇ。人がすげぇ。」


庶民服を着た人、貴族服を着た人、商人らしき人達。衛兵。

階段下は人でごった返していた。


「北斎、描くのは後だ。先ずは宿を取るぞ。今夜は高級ホテルに泊まろうと思ってる。」


「ほてる?ほたる?ぁあ!宿か!!高級ホテル楽しみだねぇ!風呂あるかな?風呂ーー!」


「……。」


(言えない。本当の事はまだ言えない。)


俺たちはスペイン階段を駆け上がり、宿の前に立った。


「こ、これが宿か?お屋敷じゃねぇのか?門がある!門が!!」


「アトランティスで北斎に内緒でこっそり犬人から正装を買っておいて良かったぜ。庶民服だったら追い返されていたかも知れない。」


「なぁ、この服動きにくいって。この帽子なんか意味があるのかぃ?」


グレンはフロックコートに赤の糸で刺繍が施されたシルクベスト。

ダ・ヴィンチ製作の懐中時計。

北斎はフロックコートに青の刺繍のシルクベスト。

二人ともシルクハットを被り、ステッキを持っている。


「北斎、いいか?よく聞けよ。今からお前は東洋から旅行で来ている大商人だ。何を聞かれても言われても、うむ。ふむ。わかった。と答えればいい。わかるな?部屋に入るまではな?わかるよな?」


「へ、へぃ。」


【ルシー・ホテル】


入口を入ると、執事の様な服を着た従業員が駆けよってきた。


「ルシー・ホテルへようこそお越しくださいました。私はセバス、ただいまよりお客様の専用従業員でございます。お泊まりですか?」


「ええ。一泊ですが。部屋は空いてますか?」


「はい。ございます。そちらのお客様は?東洋の方でございますか?」


「うむ。」


「失礼ですが、商人の方で?」


「ふむ。」


「こちらへはご商売で?」


「わかった。」


セバスが怪訝な顔をし始めた。


「この方は私の友人でね。東洋で手広く商売をなさっている。画家としての顔もお持ちでね、ローマへスケッチ旅行にいらしてるんだよ。私はグレン・アントニオス。騎士の家系だが今は田舎でワイナリーを経営している。あまり時間が無いんだ。部屋に案内してくれるかい?」


俺はセバスに見せつける様に懐中時計で時間を確認した。高級そうな懐中時計を見て安心したのか、セバスが笑顔になっている。


「夕食はどうなさいますか?夕食付きで一泊1.5スクード、夕食無しでしたら1スクードでございます。」


「夕食はスペイン階段下にたくさんのレストランがあったのでそこに行くとしよう。北斎さんもそれでいいですね?」


「うむ。ふむ。わかった。」


「それでは、お二人で2スクードになりますが、前金でよろしいですか?」


(一部屋の料金だと思ってた。ふぅううう。安い方にしておいて良かったぜ。)


「このロビーのフカフカな絨毯すげぇ。ですね?ふむ。足が沈むぅ!です。うむ。シャンデリアぁあ!?わかった。」


「あ、セバスさん、北斎さんはイタリア語のお勉強をなさってる最中ですので言葉が少し変かも知れません(苦笑)」


「わかりました。東洋の方にはイターリィア語は少し難しいかもしれませんね。」


(ギルドカードの翻訳機能使ってるんだけどな。)


豪華絢爛なロビーを抜けて大階段を上がり、吹き抜けのロビーを見渡す回廊に部屋が並んでいた。


「こちらの部屋でございます。バルコニーから前庭越しにスペイン広場を見下ろせる最高ランクのお部屋でございます。」


「らんくぅ?SS?ですかぃ?うむ。」


「SSというのが何か存じません。」


セバスさんごめんなさい。北斎が変でごめんなさい。


「では、お湯が必要になりましたら従業員に声をかけて下さいませ。私が対応いたします。」


♢♢♢♢♢♢


【305号室】


「ぶっはぁ!しゃべりてぇ!描きてぇ!暴れてぇ!!」


「北斎、落ち着け。部屋に直ぐに来たのには訳がある。お前さ、気付いてないか?ローマに来てからレモネードと葡萄酒しか飲んでない事に……。」


「そういやそうだ!紅茶は?紅茶が飲みてぇ!!」


「大国主命様の所で飲んでから気に入って毎日飲んでたもんなぁ。アイスティーを用意してあるぜ。これをだな、ガラス水筒に入れて革のカバー着ければ……街中で飲めるぜ。しかもカバーには保冷の術式が刻んである。」


さらさら。さらさら。


【冷紅茶早飲欲北斎図羅馬(アイスティーはやくのみたいほくさいろーまにて)】


「描くな!飲め(笑)飲んだらスペイン広場散策行くぞ。」


「へぃ。ごくごく。うっめぇ!!」


♢♢♢♢♢♢


【スペイン広場】


「絵描きがたくさんいるねぇ。」


「そうだな。パトロン探してるんじゃないかな?ここには貴族のツアーがよく来ているらしいぜ。貴族の目に止まればその画家は一躍一流画家の仲間入りだ。」


「へえ。そんなもんなのかい?しかし今日は暑いねぇ。この日差しで黒の帽子って。変だなぁ。」


「あ、そういえばあっちに氷菓子の店があったぜ。高級品だけれども……。」


「食いてぇ。」


~オレンジソルベット~

10バイオッコ。


お高い。お高いが!腹を壊すよりはいいかと高級菓子店で購入した。ガラスの器に入っているが、器を返却すれば階段に座って食べることが出来るらしい。


~器代金~

5バイオッコ(返却時に返金)


「北斎!買ってきたぞ!」


俺と北斎は階段に並んで座りソルベットを食べた。


「冷てぇ!うめぇ!冷てぇ!うめぇ!食い終わったら描くわ!!」


「おお!思い切り描けよ!」


俺は北斎の横顔をちらっと見てからソルベットを食べた。


「ウマイな。」


~北斎とグレンの羅馬(ローマ)の休日でした~


────────────────


【羅馬(ローマ)三十六景】

一景 【ドワーフ羅馬鍛冶図】

二景 【羅馬(ローマ)牌羅呈野丘全景図(パラティーノのおか)】

三景 【散駒霜(チルコ・マッシモ)宿女将図】

四景 【散駒霜戦車競争図】

五景 【府羅馬野乃図(フォロロマーノのず)】

六景 【紅蓮元老院成図(グレンげんろういんなるず)】

七景 【虎取屋議論里客図(トラットリアギロりのず)】

八景 【北斎首根掴図(ほくさいくびねっこつかまれる)】

九景 【紅蓮兎葡萄酒図(ぐれんわいんをおしうりされるず)】

十景 【紅蓮鬼魔伊良戦図(ぐれんときまいらのたたかい)】

十一景 【暗黒紫熊図(むらさきいろのだーくべあ)】

十二景 【冷紅茶早飲欲北斎図羅馬(アイスティーはやくのみたいほくさいろーまにて)】


────────────────


次回~スペイン広場の画家達~へ続く。



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