第三章⑨【羅馬三十六景】~コロッセオの異変~
040_第三章⑨【羅馬三十六景】~コロッセオの異変~
【翌朝】
「店主、とても良い部屋だった。朝食のフォカッチャも絶品だった。ありがとう。代金はいくらだ?」
「50バイオッコです。」
「一泊二食葡萄酒飲み放題で?安いな。」
「でしょう?私の実家がワイナリーでしてね、葡萄酒が安く仕入れられるんですよ。ところでお客さん。お土産にウチのワイナリーのワインいかがですか?20バイオッコです。」
「いらない。」
「そうおっしゃらずに、このワインは美味しいですよ?」
「……。宿泊代を支払いたいのだが。」
「ワインはいかがですか?」
「……宿泊代……をだな。」
「ワインは?」
「買います。」
さらさら。
【紅蓮兎葡萄酒図】
「描くな!ってなんだ?そのめちゃくちゃな題は!!?」
「へへへ。で、コロッセオ行くんだろぉ?楽しみだねぇ。俺ぁコロッセオについては少し勉強したぜぇ!」
♢♢♢♢♢♢
【コロッセオ】
「でけぇな。あっちが半分崩れてるのか?中に入っても安全なのか?」
「あぁ、補強はしてあるみたいだな。」
俺たちは門前で高くそびえるコロッセオを見上げていた。
「ん?検問か?」
あちらの門には教皇軍だろうか?教皇の旗を掲げた一団が見える。
「ここにはいないみたいだ。北斎、とっとと中に入るぞ。」
「へぃ。」
♢♢♢♢♢♢♢
【コロッセオ内部】
「えーっと。」
北斎が手帳を見ながら何かを確かめている。
「ふらうぃうえんけいとうぎじょうで各階の円柱がぜんぶちがうって!!」
「偉いぞ。北斎。ここで問題だ。このコロッセオの建材は?」
「ろめんこんくり!!!」
「ローマンコンクリートな。」
「ローマには巨人族がいたのか?いたのか?いなくてどーやってこんなでけぇの作ったんだ?」
「んー。それは俺にもわからないな。当時の建築技術と皇帝の力がそれだけ凄かったってことだな。」
「へぇ。将軍の江戸城みてぇなもんか?」
「違う。ここは娯楽施設だ。凄いだろ?2000年ぐらい前に建てられたんだぞ。」
「チルコ・マッシモといいコロッセオといいローマ人は遊び人だったんだねぇ!」
「……皇帝の意思の塊みたいな建造物なんだよ。」
「すげぇな。石積の迫持かぃ!」
さらさら。
さらさら。
北斎のスケッチが止まらないみたいだな(笑)
俺たちは補強された通路から下を見下ろした。
地下の発掘は半分ぐらいが終わっているみたいだな。さっきの教皇軍は視察と警備に来ているみたいだな。
「ん?なんだアレは?」
コロッセオの中央に紫の靄がうっすらとかかっている。
「まさか!魔素だまりか!!?北斎!お前にも見えるか?」
「あぁ!見えてるぜぃ!アレかなりやべぇ代物かもしれねぇ!!」
「このままじゃ教皇軍が危ないかもしれない。北斎、俺たちをあの魔素だまりごと記録の中に飛ばせないか?」
「できるかわかんねぇけど、やってみるぜぃ!グレン俺から離れるなよ。ぬぉおおおお!」
北斎が虹色のオーラに包まれる。髪が逆立つ。
「ぬぉおおおお!ぬぉおおおお!」
シュンッ。暗転。
少しずつ視界が開けていく。
俺たちはコロッセオのど真ん中に立っていた。
♢♢♢【1349年】♢♢♢
ドドドド。ガラガラ。
ガッシャーン。
「北斎!地震だ!!危ない。避けろーーー!」
石材の塊が降ってくる。
「グレン!大丈夫でぃ!」
さらさら。さらさら。
「ほい。丈夫な屋根、描いたぜ。」
この地面の揺れの中、よくもまぁさらさらと描けるもんだな。
人影は無い。
俺たちだけがいるみたいだ。おそらく……記録の一部に入り込んだんだろう。
俺はミスリルの剣をアイテムボックスから取り出し構える。
北斎が作り出したフィールド全体を覆う屋根の下、俺と北斎は背中合わせで立つ。
俺の目の前せり上がりがゆっくり動く。紫の靄が塊となり魔物が姿を現した。
【グレンVSキマイラ】
「鑑定」
【キマイラ・ライオン、人間(状態異常・呪)】
「マジかよ……。」
胴体はライオン、手足は人間、大きなハンマーを持って二足で立っている。顔は……グラディエーターヘルム。人なのか?
「コロス。」
キマイラがハンマーを振り下ろす。
キーン。ミスリル剣で受けてみる。身体がズズーッと後ろに下がる。
「なんてパワーだ。だが、動きが遅ぇよ。」
「コロス。俺は……死にたくは無かった。家族のため、戦った。ここに来る人間、皆、悪いヤツ。コロス。俺たちを笑った。だからコロ……ス。」
(グラディエーター……英雄と称えられてるグラディエーターもいたはずだ。猛獣狩り、ライオンや象や熊などと人間との闘いも行われていた……キマイラ……になったのか……。)
「誰も笑ってはいない!お前は家族のために戦ったんだろ!?」
「……笑った。お前も笑った。笑っている。コロス。」
「殺るしか無いのか……。」
「グォオオ!」
キマイラがハンマーを振り回して突進してくる。
「成仏してくれ。」
俺は剣を振り下ろした。キマイラは二つの魔石へと姿を変えた。
【キマイラの魔石】
【グラディエーターの誇り】
「お前の人間としての誇り、受け取ったぜ……。」
グレンがキマイラと戦っているその時、北斎は絵を描いていた。
♢♢♢♢♢♢
【北斎VSダークベアー】
「なんだよぉ。この熊ヤロウは!動くんじゃねぇ!描けねぇだろうが!」
素早い動きで爪を立てた腕を振り下ろしてくるダークベアー。
「紫色の熊なんて見たことねぇって!あ、紫あったかねぇ?」
北斎は画材をガサゴソし始めた。ノールックでダークベアーの攻撃をかわしながら……。
「ったく、鬱陶しい。ちょっと大人しくしてなって言ってるだろぅがぁ!」
さらさら。さらさら。
縄。実体化。
「お縄につきやがれ!」
ダークベアーが縄でぐるぐる巻きにされて身動きが取れなくなった。
「えーっと、この隙にっと。グレンは?お?なんか変な魔物と戦ってるみてぇだな?」
さらさら。さらさら。
さらさら。さらさら。
【紅蓮鬼魔伊良戦図】
「やっぱりグレンはかっけぇな!!よっ!元剣聖!よっ!千両剣聖!聞こえちゃいねぇよ。よっと。アブねぇ、熊ヤロウの攻撃が少しカスっちまった。縄姿で突進してきてるんじゃねぇぞ!温厚な北斎様でもそろそろ怒るでぃ!」
さらさら。さらさら。
【暗黒紫熊図】
実体化。
「あ、いけね。こっちもお縄についたまんまだった。」
縄ダークベアーと縄ダークベアー激しくぶつかり合う。
コロン。
【ダークベアーの魔石・ダークベアー肉(少量)】
北斎が実体化した熊は
「帰るベァー!」と一言言い残し縄をつけたまま絵の中へと帰って行った。
♢♢♢♢♢♢
『ふぅううう。』
北斎ーッ!ため息まで同時ってなんだよ?!
で?熊肉か?アトランティスへ帰ったら熊鍋にでもするか?
「なにやらそっちは大変だったみたいだねぇ。俺ぁは熊と遊んでたぜぃ!」
「お前なぁ……ダークベアーってSSランクの魔物だぜ?」
「しらねぇ。れんくってなんだ?」
「……。帰るぞ。」
「帰るのか?」
辺りを見回すと……コロッセオが崩れていた。
今の姿とほとんど変わらないコロッセオがそこにあった。
「これもコロッセオの記録なんだな。」
「グレン、動いたら腹が減った。帰ったらフォカッチャ食いてぇなぁ……。」
「朝食っただろうが!」
「焼きたてのフォカッチャうめぇんだって……。」
ブォン。
シューっ。
「帰ってきたねぇ。」
俺たちはコロッセオの通路から半分だけ発掘された地下を見下ろしていた。
教皇軍は皆無事みたいだな。
「北斎、次は何処へ行こうか?」
「そうだねぇ。俺ぁ、スペイン広場ってところへ行ってみてぇな。絵描きがたくさんいるって聞いたぜ。」
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【羅馬三十六景】
一景 【ドワーフ羅馬鍛冶図】
二景 【羅馬牌羅呈野丘全景図】
三景 【散駒霜宿女将図】
四景 【散駒霜戦車競争図】
五景 【府羅馬野乃図】
六景 【紅蓮元老院成図】
七景 【虎取屋議論里客図】
八景 【北斎首根掴図】
九景 【紅蓮兎葡萄酒図】
十景 【紅蓮鬼魔伊良戦図】
十一景 【暗黒紫熊図】
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次回~スペイン広場の絵描き~へ続く。




