第三章⑤【羅馬三十六景】~羅馬(ローマ)の絶景!パラティーノの丘~
036_第三章⑤【羅馬三十六景】~羅馬の絶景!パラティーノの丘~
飛竜はゆっくり旋回しながら高度を上げていく。
やがて周囲を淡い光が包み始める。
「結界を抜けるぞ。」
光が一瞬だけ視界を覆う。
次の瞬間。眼下に大西洋が広がっていた。
「海ーーーーぃいい!グレン、海だぜぃ!広い広い海しか見えねぇ!」
飛竜は何事もなかったように羽ばたき続ける。
青い海の上を東へ飛び続ける。
雲を突き抜け、太陽を背に受けながら進むこと数時間。
やがて水平線の向こうに陸地が見えてきた。
「イタリアだ。」
「へぇ!ここがグレンの生まれ故郷なんだな。」
♢♢♢♢♢♢
【1852年、嘉永五年・羅馬】
「北斎ーー!着いたぞ。ゆっくりと降りて行くぞ。」
「いや、待てぃ!こんなでっけぇ竜で地上に降りて大丈夫なのか?騒ぎになっちまうだろうが。」
「この飛竜には隠蔽の首輪が取り付けてあって、地上からは発光体にしか見えてないぜ。俺たちがにも隠蔽魔法がかかっている。竜から一定距離離れると解除されるんだ。」
「へぇ!光る物体ねぇ。たまに富士上空に見かけたなぁ。なんでぃ!あれもアトランティス人の仕業かよぉ。」
飛竜はゆっくりと高度を落とし、パラティーノの丘の外れに降り立った。
「ここがーー!いたりぃあ!ローマ!わっしょーい!わっしょーい!」
北斎が小躍りしてる……。
「おい!大声を出すな!姿は消えてるが声は消えてないぞ。」
「ぐぬぬ。」
「あの家だな。少し寄りたい所がある。」
「へ?まだ、一枚も、描いて、無い。」
「もう少し我慢しような?な?北斎くん。」
「……へぃ。郷に入ってはグレンに従えでぃ!」
【パラティーノの丘・鍛冶屋】
「入るぜ。」
俺は店主にギルドカードを見せる。
「アトランティス人の客とは珍しいな。俺はガィ。ドワーフだ。ドワーフとしては背が高い。よって地上のギルド任務をしている。」
うわぁ……ゲルマンにしか見えねぇ。恐い。恐い。
さらさら。さらさら。
北斎くん。我慢出来なくなったのね。はいはい。放っておこう。描いてる間は大人しいからな。
「情報と現地の金が欲しい。」
「素材はあるか?」
「ミスリルがある。」
「ミスリルか。こちらには無い金属。使えない。魔鉄はあるか?魔鉄なら普通の鉄に混ぜる。強い武器が作れる。売れる。」
「あるぜ。」
俺はテーブルの上に大量の魔鉄を置いた。
「凄い。これなら高級宿にも泊まれる。たくさん食える。地図も渡す。情報やる。」
魔鉄は20スクードになった。1スクードが1万アトぐらいだから高級な宿にも泊まれる。
半分ほどを小銭に両替してもらい擬装アイテムボックス、鞄に入れる。
「竜預けるか?1日10バイオッキ。アトランティスの通貨換算1000アトだ。一週間、竜二頭、おまけする。1スクード20バイオッキ。」
さらさら。
「出来た。」
【ドワーフ羅馬鍛冶図】
「これは?俺?!」
ガィが絵を覗き込んでいる。
「これ、欲しい。買う。1スクードで買う。」
え?竜を預けるのがほぼ無料になる?
「おぅ!買ってくれるのか?いいぜえ!こちらもおまけつけるぜぃ!大きめ板あるかぃ?それでいい。この店の名ぁこっちの文字で書いてくれぃ。じゃ描くぜ。」
さらさらぐいっ。
さらさらぐいーーっ。
【ガィの鍛冶屋】看板。
「俺ぁはな。アトランティスの看板絵師!葛飾北斎でぃ!よろしく!」
「北斎。覚えた。こっちがグレン。覚えた。竜は隣の厩舎に留め置く。情報はギルドカードに書いておいた。いつでも見れる。」
俺たちは竜を預けてガィの店を後にした。
♢♢♢♢♢♢
【パラティーノの丘全景】
俺たちは丘の縁に立った。
北斎は一言も発することなく一心不乱に描き始めた。
さらさら。
さらさら。
俺は記憶を辿る。子供の頃何度ものぼった丘だ。見慣れた景色のはずだが……。
「これが今のローマなのか……あれはチルコ・マッシモなのか?」
羅馬都市の中にぽっかり開けた場所がある。
眼下に広がるフォロ・ロマーノだった場所。石柱が砕けている。石柱と赤茶けた壁の間を緑の木々が縫っている。
「マジかよ……。」
遠くにはコロッセオ……。
「間違いない。ここは羅馬だ。」
「グレン。描けたぜ。」
【羅馬牌羅呈野丘全景図】
「グレン!この街すげぇな!!石で出来てるのか?江戸は木と紙で出来てたぜ?石垣は見たとこあるけどよぉ。街一つが石と土で出来てるように見えるぜぃ!」
羅馬の街が夕景に包まれ始めている。
「どうする?このまま街まで歩くか?」
「そうだねぇ。俺ぁ……もう少しここにいたい。」
北斎、俺もだ。俺もだよ。
「地図に……確か。あったぞ。チルコ・マッシモの近くに一件だけ宿があるみたいだ。」
俺たちは何も語らず、羅馬の景色を見ていた。夜空に星が広がった頃、俺たちはチルコ・マッシモへ向けて歩き出した。
手は繋いでないけどな(笑)
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【羅馬三十六景】
一景 【ドワーフ羅馬鍛冶図】
二景 【羅馬牌羅呈野丘全景図】
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~あとがき~
【パラティーノの丘】
古代ローマ発祥の地とされる丘。ローマ全体が見渡せる高台になっている。
次回~チルコ・マッシモの宿~へ続く。




